「骨太の方針」原案まとまる 賃上げは?子育ては? 【詳しく】

ことしの経済財政運営などの基本方針「骨太の方針」の原案がまとまりました。

賃上げ拡大に向けた環境整備を図り、子ども・子育て政策を抜本的に強化して少子化の傾向を反転させる一方、財政運営をめぐっては、コロナ禍を脱し、経済が正常化する中で歳出構造を平時に戻していくとしています。

骨太の方針の主な内容を詳しくお伝えします。

【マクロ経済運営】

賃上げ実現と持続的な成長

まず、経済運営の基本方針が述べられています。

▽ロシアによるウクライナ侵攻が国際秩序の根幹を揺るがし、
▽デフレ経済からの脱却や
▽急速に進行する少子化とその背景にある将来不安への対応など
「時代の転換点」とも言える内外の構造的な課題に直面しているという認識を示しました。
こうした中、
▽30年ぶりの高い水準の賃上げや、
▽企業の投資意欲が高まっていることなど、
これまでの「悪循環」を断ち切る挑戦が確実に動き始めているとしています。
その動きをさらに確かなものとするため、
▽構造的な賃上げを実現して賃金と物価の好循環へつなげ、
▽人への投資や環境などの分野で的を絞った公的支出を行って民間からの投資を拡大させ、持続的な成長につなげることを目指します。

【少子化対策】

国民に実質的な追加負担を求めず

子ども・子育て政策は最も有効な未来への投資だとして、近く決定する児童手当の拡充策などを盛り込んだ「こども未来戦略方針」に沿って対策を抜本的に強化し、少子化の傾向を反転させるとしています。

そして、国民に実質的な追加の負担を求めることなく推進することを明記する方向で調整を進めています。

【新資本主義】

「リスキリング」「退職金」「最低賃金」は

岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けては、「労働市場改革」を重点分野に掲げました。

具体的には、
▽自己都合で離職した人でもリスキリングに取り組んでいれば会社の都合で辞めた場合と同じように失業給付を受け取れるよう具体的な設計を行うことや、
▽勤続20年を超えると退職金への課税が大幅に軽減される現在の税制を見直すなどして、労働移動を促すとしています。
また、賃上げの流れの拡大を図るため、中小企業が賃金を引き上げられる環境の整備に取り組むとしています。

▽赤字となっている中小企業などにも賃上げを促すため、税制も含めてさらなる施策を検討するほか、
▽ことし中に全国平均の最低賃金で時給1000円を達成することを含めて労使と政府による審議会で議論するとともに、
時給1000円を達成したあとの最低賃金の引き上げ方針についても政府内で議論を進めるとしています。

【防衛・安保】

国民保護の体制強化へ

防衛分野では、有事が起きた際に南西地域などで住民の迅速な避難を実現するため「さまざまな種類の避難施設の確保」を含め、国や地方自治体などが協力して住民を守るための取り組みを進めるなど国民保護のための体制を強化するとしています。

【経済安全保障】

先端的な重要技術の育成へ支援強化

安全保障環境が厳しさを増す中、「国益を経済面でも確保する」として、経済安全保障政策を進めることも盛り込まれています。

重要物資のサプライチェーン=供給網の強じん化に向けて、
▽重要物資の製造などを担う民間企業に対して、資本強化も含めて支援のあり方の検討をさらに進めることや、
▽先端的な重要技術の育成に向けた支援を強化し、官民で着実に研究開発をすすめること。
それに▽機微なデータの取り扱いや情報通信技術の安全性を確保するための措置も検討するとしています。

【教育 花粉症 物流】

教師 処遇の抜本的に見直し

このほか、教育の分野では、教師の処遇を抜本的に見直すため、各種の手当てなどを整理し業務の負担に応じたメリハリのある給与体系をつくるなど、具体的な制度設計の検討を進めるとしています。

30年後 花粉を半減

また、花粉症対策も社会課題の1つだとして、30年後に花粉の発生量を半減させることを目指して、発生源の対策や飛散対策に政府一体となって取り組むとしています。

デジタル化による効率化

さらに、物流業界でトラックドライバーの労働規制の強化に伴って深刻な人手不足が懸念されている「2024年問題」に備え、デジタル化によって物流の効率化を進めるとともに荷主や消費者に対し、ドライバーの負担軽減につながるような規制などの措置を導入するなど抜本的な対策を実施するとしています。

【財政目標】

コロナ禍の歳出構造「平時」に

政府の財政健全運営ついては、経済が正常化していく中で、コロナ禍で膨らんだ歳出の構造を「平時」に戻し、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組むとしています。

その上で「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」として、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するという従来の目標を維持する方針を示しました。

その上で、経済・財政一体改革の進捗について「2024年度に点検・検証を実施する」と明記し、来年度中に中期的な財政フレームの策定を進める方針を示しました。

【来年度の予算編成】

歳出改革も 重要課題には必要な措置

最後に来年度の予算編成について、「経済・財政一体改革を着実に推進する」として歳出改革に取り組む考えを示しています。

一方、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という表現も盛り込み、少子化対策や防衛力の抜本的な強化など重要な政策課題には必要な予算措置を講じるとしています。


政府は、与党とも調整した上で、今月中旬に「骨太の方針」を閣議決定することにしています。

岸田首相「前向きな動き 力強く拡大」

岸田総理大臣は「経済運営の中心に『新しい資本主義』を位置づけ、成長と分配の好循環を実現するべく全力で取り組んできた。こうした政策展開も相まって、わが国に30年ぶりの高い水準となる賃上げや、高い投資意欲など、前向きな動きが確実に生まれてきている。今こそ、こうした動きを力強く拡大すべく、取り組みをさらに加速させていく」と述べました。