マッチングアプリ 出会った先で…ぼったくり！？

デジタルでだまされない

「遅れたおわびにお店を探しますね」

マッチングアプリで知り合った女性と待ち合わせをしていた男性。

女性に連れて行かれたのは、東京・歌舞伎町の「ぼったくりバー」でした。

出会いのツールを悪用した犯罪。
だまされないために私たちができることは。

（デジタルでだまされない取材班 / 若林勇希）

出会いは「マッチングアプリ」

30代の男性は、2022年11月、女性と新宿で会う約束をしていました。

女性との出会いは、マッチングアプリ。

コロナ禍で出会いの場が少なかった中で、将来を考えられる相手を見つけたいと思っていた男性。比較的、真剣度の高い人が集まっているのではないかと考え、有料のアプリを使い始めたということです。

女性はアパレル関係の仕事をしているといい、プロフィールに登録された画像からは清そな印象を受けたといいます。
アプリで何度かやり取りを重ね、男性が昼の時間帯にお茶を飲もうと提案したところ、女性は「喫茶店だと緊張してしまうので軽くお酒でもいいですか」と伝えてきたため、夜8時に新宿で待ち合わせることになりました。

仕事を理由に1時間ほど遅れて到着した女性。男性は「アプリの写真よりも少し化粧が濃いめで、顔の印象が違った」と感じたものの、そのまま飲みに行く話を進めました。

女性は「遅れたおわびにお店を探しますね」と言って、職場の先輩に勧められたという店に行こうと提案。
歌舞伎町の中をどんどん進んでいき、たどり着いたのは、雑居ビルの中にあるバーでした。
店内はBGMの音が大きくて、居心地が悪いと感じましたが、男性は「こんな店もたまにはあるか…」と自分を納得させ、女性と席につきました。女性が「単品でお酒を頼むと高くなるかもね」と言うので、5000円の飲み放題を注文したということです。

頼んだ酒 飲み放題の対象じゃない

お酒を飲みながら女性と話をしていると、店員から突然、トランプを手渡された男性。すると、女性が「ゲームをして負けたほうがお酒を一気飲みしよう」と提案してきました。

男性は少し驚きましたが、飲み放題を頼んでいることもあり、「まあ、いいよ」と答えました。
女性はリキュールのショットグラスを36杯注文しました。

ゲームに負けたら3、4杯を一気飲みするというルールで何度も繰り返し、結局2人で140杯余りを頼みました。

店に入ってから1時間ほどたったころ、店員が「お会計のほうを確認しておきますか」と言うのでお願いすると、渡された明細にはおよそ40万円と書かれていました。

どうしてこんなに高いのかと店員に聞くと、女性が頼んだリキュールは飲み放題の対象外だというのです。男性はこの時点で、隣にいる女性も店側の人間なんだと気づきました。

女性はその後 連絡取れず

結局、男性は近くのATMで金を引き出し、追加の請求もあわせて60万円近くを渡すことになってしまいました。

女性は「親から金を借りてくる」と言ってその場から立ち去り、その後は一切連絡が取れていないということです。

男性は、被害に遭った直後はショックで夜も眠れない状況だったといい、弁護士に相談しました。
そして、当時を振り返り、「このようなぼったくりが相次いでいると事前に知っていたら、店に向かう途中の時点で気づけたかもしれません。こうした被害に巻き込まれないために、さまざまな情報にアンテナを張っておくことが大事だと痛感しました」と話していました。

ツールを悪用 相談急増

マッチングアプリは、ここ数年、出会いのツールとして若い世代を中心に利用者が増えています。

その一方で、アプリを悪用するケースもあって、警視庁によりますと歌舞伎町などではアプリを介した「ぼったくり」の被害相談がここ数年で急増。ことし1月からの3か月間で1億円余り（概算・速報値）にのぼっているということです。

警視庁は犯行グループの摘発にも乗り出していて、警戒を強めています。

弁護士「アプリを悪用されるケースも考えて」

被害に遭わないためにはどうしたらよいのでしょうか。

歌舞伎町でのぼったくり被害の相談に応じてきた青島克行弁護士に、ポイントを聞きました。
青島克行 弁護士
「自分は出会いのためにアプリを利用していても相手がそうではないケースを想定しておく必要があります。ぼったくり被害だけでなく、悪質商法などに巻き込まれるケースもあります。実際にあった手口などの知識を身に付けておくことも大切です。その上で、少しでも不審に思ったら、その場を離れましょう。もし、高額な請求をされた場合は、自分ひとりで解決するのは難しいので、すぐに110番通報をするなど、第三者の目が入る状況を作ってほしいです。そもそも『ぼったくり』は違法な行為なので金を払う必要は無く、店を離れて誰かと相談することも大事です」
青島弁護士は、「歌舞伎町などの繁華街で会う場合には、どの店に行くかは自分で決めたほうが安全」とも話していました。

気軽に人とつながれるのがマッチングアプリの良さですが、悪用されるケースがあることも頭に入れておかなければいけないと思いました。