変わる、花火大会のカタチ 「分散型」って何?

気温が高くなり間近に迫った本格的な夏。

この夏は、コロナ禍で制限を受けてきた夏祭りや花火大会が、従来通りの形に戻ってきそうです。

「今年こそは…!」と期待も高まる中、中には新たなスタイルで開催するところも登場しています。

キーワードは「分散型」です。

天神祭が、帰ってくる

6日、大阪の夏の風物詩と言われる「天神祭」が4年ぶりに本来の形で行われると発表がありました。
天神祭は大阪の一大イベント。

市内を流れる大川をみこしや観客を乗せたおよそ100隻の船が行き交う「船渡御(ふなとぎょ)」。そして、数千発の奉納花火が打ち上げられていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020年以降、この船渡御や花火は中止に。
昨年、色とりどりの衣装を身にまとった行列がまちを練り歩く「陸渡御(りくとぎょ)」は3年ぶりに開催されましたが、ことし、ようやく本来の形に戻ります。

復活相次ぐ各地の祭り

この夏、関西では各地でコロナ禍前の夏祭りや花火大会が戻ってきそうです。
▽祇園祭(京都)7月1日~31日
ことしから観光客の山鉾への立ち入りが可能に

▽なら燈花会(奈良)8月5日~14日
去年は時間を短縮し規模も縮小していたがことしはコロナ禍前と同規模で開催予定

▽びわ湖大花火大会(滋賀)8月8日
4年ぶりにコロナ禍前と同じ形で開催
(混雑解消のため無料観覧席を減らし予約必要な有料観覧席増やす)

▽猪名川花火大会(兵庫・大阪)8月19日
5年ぶりにコロナ禍前と同じ形で開催

花火は無くても生きていけるけど

ようやく帰ってくる大阪の天神祭。

祭りで使われる花火の製造と打ち上げを行う創業73年の大阪の花火メーカー・葛城煙火では、準備を進めています。
取締役を務める喜田真史さんがガラガラと開けた扉の奥には…
すでにたくさんの花火玉が。

この会社では花火の打ち上げ復活を見据え、去年10月ごろから奈良県内の工場で準備してきたということで、最大で直径50メートルに開く花火など、すでに100種類以上の花火を作り終えていて、今は、打ち上げの計画作りに取り組んでいます。
会社によると、コロナ禍では各地の祭りや花火大会が中止になり、打ち上げ花火の製造が完全にストップ。

キャンプなどの際に楽しめる個人用の花火を開発するなどしてきましたが、花火の製造量は、感染拡大前の約20%まで落ち込んだということです。

ことしは、各地で花火大会が再開される見通しで受注量は感染拡大前と同じか、それを上回る勢いで伸びているそうです。
花火を再現する喜田さん
葛城煙火の喜田真史さん
「4年ぶりなので、華やかさと、邪気払いで音を多めに入れようかなと。花火は無くても生きていけるけど、やっぱりあると楽しい!4年ぶりに大阪に夏を届けられるのはうれしいです」

船を集められるか不安

同じく復活する「船渡御」で使う船にも新型コロナが影を落としています。

船は、橋桁が低い橋の下を通るため、高さは1.5メートル、幅は8メートルのサイズに収まる必要があり、従来は、関西各地から集められた作業船を祭り向けに装飾して使ってきました。
ところが、コロナ禍で作業船を所有する会社が維持費を削減するために船を解体するケースもあって、ことしは、従来借りていた会社からだけでは目標の数が集まらないということです。

そこで、四国など遠方から借りたり、新しく造船したりすることを検討しています。

船の手配を担当する広瀬産業海運の担当者
「船を集められるか不安はあるが4年ぶりの開催なので、なんとか間に合わせたい」

「分散開催」がトレンド?

コロナ禍を乗り越えてなんとか本来の形に戻そうとするお祭りの現場。

一方、取材を進める中で、増えていると感じたのが日程や会場を複数設ける「分散型」と呼ばれるタイプのお祭りや花火大会です。
▽SHIRAHAMA2023花火ラリー(和歌山・白良浜)
7月16日、23日、30日、 8月20日、27日の5日間

▽長浜・北びわ湖大花火大会(滋賀)
9月5日~8日の4日間

▽みなとHANABI(神戸)
10月16日~20日の5日間

こうした花火大会は、もともとは1日で花火を打ち上げていましたが、コロナ禍で観客の密を避けるために、日程を分散させる対応をとってきました。
ところが、主催者に話を聞くと、この分散型は意外にも観客から好評だったということです。

去年、日程を分散して開催した神戸市の花火大会後のアンケートでは、「混雑していないのでベビーカーを押したり小さい子を連れて行きやすかった」という声が寄せられたそうです。
また、会場を分散させた兵庫県加古川市の「加古川まつり花火大会」後のアンケートでは、回答者の8割が「大変よかった」「よかった」と高評価。

「韓国で群集事故があったので分散型は良い対策だ」とか「それまでは人混みにぐったりしていたので良かった」といった歓迎する声も上がったということです。

また、花火大会を分散型で行うと、警備費を抑える効果もあるそうです。
長浜・北びわ湖大花火大会の実行委員によると、花火大会でかかる費用の実に7割程度が運営や警備のための費用ということ。

日程を分散して開催すると、大規模な混雑が発生しないため、交通規制や誘導をする警備員の人数を大幅に減らすことができ、警備費用を抑えることができるのです。

大会にかかる費用は、1日で開催していた時のおよそ半分になったということです。

それぞれのスタイルで

お祭りに関わる人たちを取材すると、本来の形での復活も、新たなスタイルでのスタートも、大勢の人に楽しんで欲しいという気持ちは同じ。

ことしの夏は、それぞれにあったスタイルで楽しんでみてはいかがでしょうか。