イニエスタ 古巣バルセロナ戦で神戸サポーターに感謝の思いを

サッカーの元スペイン代表、アンドレス・イニエスタ選手。先月、この夏で5年間在籍したJ1・ヴィッセル神戸を退団することを発表しました。

ヴィッセル神戸は、6日夜に国立競技場で、イニエスタ選手の古巣でスペイン1部リーグの強豪、バルセロナとの親善試合に臨みます。イニエスタ選手は、サポーターに感謝の思いを伝えたいと考えています。退団発表後初めて単独インタビューに応じ、決断までの葛藤と日本への思いを明かしました。

決断の思いは

退団発表から1週間後、イニエスタ選手がNHK神戸放送局で取材に応じました。

(イニエスタ選手)
「ヴィッセル神戸を離れたくなかった。このチームでずっとやりたかった。チームやファンと一緒にプレーすることを楽しみ続けたかった。この決断をせざるを得なかったのは、とてもつらいことだった」
アンドレス・イニエスタ選手はスペイン出身の39歳。

身長1メートル71センチとサッカー選手としては小柄ながらドリブルやパスワークなどで卓越した技術を持ち、状況判断にも優れた世界屈指のミッドフィルダーです。

2018年までスペイン1部リーグの強豪、バルセロナの主力として活躍し、リーグ優勝9回、ヨーロッパチャンピオンズリーグで優勝4回など多くのタイトル獲得に貢献しました。
W杯南アフリカ大会 優勝(2010年)
スペイン代表でもワールドカップに2006年のドイツ大会から4大会連続で出場し2010年、南アフリカ大会の決勝では延長戦の後半にみずからゴールを決めてチームを初優勝に導きました。

バルセロナを退団した2018年に、J1のヴィッセル神戸に電撃移籍しました。
ヴィッセル神戸に電撃加入(2018年)
スペイン時代から変わらぬ高い技術で日本のファンの心をつかみ、2020年の元日に決勝が行われた天皇杯で優勝してヴィッセルに初めてのタイトルをもたらしました。

また、ヴィッセルでアジアの頂点に立つことを目標に掲げ、天皇杯に優勝して出場権を得たACL=アジアチャンピオンズリーグでは足に違和感がありながら試合に出場しベスト4の成績を残しましたが、右太ももの大けがという大きな代償を払うことになりました。

その後、リハビリを経て復活したイニエスタ選手は、2021年にJリーグで自己最多に並ぶ6得点をあげ、チームをJ1で過去最高となる3位に押し上げました。
(イニエスタ選手)
「かなり多くのことを実現できたと感じている。このチームがより強くなるために貢献し手助けをしたいという思いで来たから」
しかし、昨シーズンは、チームが低迷による相次ぐ監督交代のすえ、イニエスタ選手に頼らない戦術をとるようになり、今シーズンは、開幕から首位を走る好調なチームの中でレギュラーから外れて出場機会が大きく減りました。

“退団を考える大きなきっかけは去年8月”

退団を考える大きなきっかけになったという試合は去年8月のアジアチャンピオンズリーグ、横浜F・マリノス戦だということです。
ACL決勝トーナメント1回戦 横浜F・マリノス戦(去年8月)
イニエスタ選手が最大の目標としてきたアジア王者に向けた大事な一戦。

状態が万全でありながら起用されませんでした。

(イニエスタ選手)
「昨シーズンの中で一番重要だったあの試合に1分たりともプレーできなかったことには、自分の立ち位置を示すメッセージがあったと思う。ひとつの分岐点となる試合だった。チームの主力としてやっていけるのか判断せざるを得ない。とてもつらい瞬間だった」応援し続けてくれるサポーターの声援に応えられない日々。
退団会見(5月25日)
39歳となった今シーズンもチームが首位を走る中ベンチを温める試合が続いたイニエスタ選手は退団へと気持ちが傾いていきました。

5月11日に39歳になったイニエスタ選手は、およそ5年在籍したヴィッセルを退団し、新たな活躍の場を求める決断をしました。

古巣・バルセロナとの試合で感謝の気持ちを

一方で愛着のある神戸への思いは強く、大きな葛藤があった中での決断でした。
(イニエスタ選手)
「日本に来た当初から歓迎してもらえて、街なかでも、どこのスタジアムに行っても自分の国のような温かさがあった。来日したことに対するサポーターの感謝や愛情を日々感じることができた。日本の文化にすごく親しみを持っているし居心地の良さを感じている、なにものにも代えがたい経験だった」
日本に滞在するのは残り1か月。
イニエスタ選手は、残された時間でサポーターに感謝の思いを伝えたいと考えています。

その1つの機会が6日夜の古巣・バルセロナとの親善試合。世界トップクラスの選手がそろう古巣との試合で日本のすべてのファンに自分のプレーを目に焼き付けてもらいたいと意気込んでいます。
(イニエスタ選手)
「(天皇杯で)初タイトルを獲得した国立競技場で試合ができるのは特別な意味があると思う。常にピッチに立てるように最大限の努力をしてきたこと、ファンのみなさんに楽しんでいただけるよう準備してきたことを感じてもらえると嬉しい」
イニエスタ選手は、インタビューの中でJリーグの可能性について、高いレベルの競争があり日々成長していてこれからも進化し続けるだけの材料がそろっていると評価していました。

今後は出場機会を求めて中東などを中心に移籍先をさがしますが、引退後は、また何らかの形でヴィッセルに戻りたいとも話していました。