「塩分1日7グラム」ってどのくらい?食事・習慣の新目標値は

おいしそうなラーメン。でも、塩分はどのくらい含まれているか、ご存じですか?

国が今月示した、健康づくりに向けた食事や生活習慣についての新たな数値目標、1日の塩分の摂取量は「7グラム未満」に設定されました。

どのくらいの値なのか、食生活で工夫すべきことは?
栄養学の専門家に詳しく聞きました。

(ちなみに、汁まで飲んだ場合のラーメンの塩分の目安は1杯6グラムということです)

「数値目標」は野菜、食塩、睡眠時間も

ラーメンの話から始まりましたが、ご紹介するのは食事や生活習慣全体の話です。

国民の健康作りに向けて、厚生労働省は「健康日本21」という基本計画を約10年ごとに見直して、食事や生活習慣などについての考え方や数値目標を定めています。このほど来年度からの新たな数値目標がまとまりました。

以下、その具体的な数値です。

まずは野菜と果物の摂取量です。
野菜や果物の摂取量は、脳卒中や心疾患での死亡率の低下に関係があるということです。

1日あたりの目標摂取量は今回、次のように設定されました。

▽野菜 現状 281グラム→ 350グラム(約70グラム増)
▽果物 現状 99グラム→ 200グラム(現状の約2倍)

そのうえで、
▽主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を「1日2回以上」、ほぼ毎日とる人の割合が「50%」になることを目指すとしています。
また、冒頭でもご紹介しましたが、高血圧につながる「食塩」の摂取量は。

▽食塩 現状 10.1グラム → 7グラム未満

7グラム未満にまで減らすことを目標としています。

▽「睡眠時間」については、「不足すると死亡率の上昇に影響することがわかってきた」としています。

そのうえで、「十分な睡眠時間」を20歳から59歳では6時間から9時間、60歳以上では6時間から8時間とし、そうした人の割合について60%以上にすることを目指すとしています。
厚生労働省は今後、各都道府県などで国民の健康の維持に向けた具体的な取り組みを進めてほしいとしています。

なぜ「数値目標」があるのか

国が食事や生活習慣の数値目標を設けているのは、「健康寿命」を伸ばすのが目的です。

「健康寿命」とは、「平均寿命」とは違って、介護などを受けずに健康的な社会生活が送ることができる期間を示すもので、国が行う国民生活基礎調査などをもとに算出されます。

「平均寿命」(2019年時点)は次のようになっています。

男性 81.41歳
女性 87.45歳

一方、「健康寿命」(2019年時点)は以下の通りです。

男性 72.68歳(平均寿命より 8.73歳短い)
女性 75.38歳(平均寿命より 12.07歳短い)

今後も高齢化が進むことが見込まれる中、厚生労働省は「健康寿命」の増加幅が「平均寿命」の増加を上回るように、つまり介護を受けずに元気で暮らせる時間を少しでも延ばすのを目標に、さまざまな指標で数値目標を設定しています。

その他の数値「食事」「歩数」「喫煙」は

上で紹介した「野菜・果物」「睡眠時間」など以外にも、次のような数値目標も設定されています。

【「バランスの良い食事」を摂っている人】
「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事」が1日2回以上の日がほぼ毎日の人の割合は。

現状 37.7% → 目標値 50%

【日常生活での歩数】
1日の歩数の平均は、64歳までは8000歩、65歳以上は6000歩と設定されています。
【喫煙率】
そして、喫煙する人の割合、「喫煙率」は。

現状 16.7% → 目標 12%

いつもの食事、どこに注意すれば?

目標値、達成できそうなものもあれば、けっこう厳しそうなものもあると思います。

食事面でどんなことに注意すればいいのか、栄養学が専門の大阪公立大学・生活科学部の由田克士教授に聞いてみました。
まず、由田教授は大前提として「1日に3食欠かさずに食べることで必要な栄養をバランスよく効率的に摂れる」と話しています。

その際、
▼「主食」(ご飯、麺、パンなど)
▼「主菜」(魚、肉、たまごなど)
▼サラダや和え物などの副菜
が含まれているかチェックすることが大切だということです。

その上で、毎回の食事に果物やヨーグルトなどを加えるとよりバランスのとれた食事になるということです。

「減塩」のコツは?

次に「塩分」についてポイントを聞きました。

▼「味噌汁などの汁物は1日1杯とする」
これで、1.5グラム程度の塩分を控えることができるそうです。

▼「ラーメン・うどんなどはスープ・だしを残す」
2~2.5グラム程度の塩分を摂らずにすむということです。

▼「小皿1杯の漬物に控える」
これで1~2グラムの減塩ができるということですが、食べる場合は、同じ分量だと比較的塩分の量が少ない「浅漬け」にするほうがいいということです。

料理の際に意識することは?

料理をする際のポイントについては、由田教授は「調味料」の使い方を指摘しました。
同じ量を使った場合、「塩よりも醤油、醤油よりも味噌、味噌よりもウスターソース」の順で塩分量が少ないため、意識して使い分けることが大切だということです。

その上で
▼少ない塩分でも味付けできる「酢の物」や
▼「焼き魚」には醤油などではなくレモンをかけて食べること、
▼それに味噌汁も野菜などを具だくさんにすることで塩分を抑えることができるとしています。

学会などがお墨付きを与えている「減塩商品」を使用しても良いということです。

また、由田教授によりますと、私たちが毎日食べる主な食品の塩分の目安は、以下のとおりだということです。
▼あじの開きの小さいもの 1枚1.2グラム
▼味噌汁1杯1.5グラム
▼カレーライス1人前 3.3グラム
▼握り寿司(醤油含む)1人前 5グラム
冒頭でも出てきた
▼ラーメンは、1杯でスープまで含めると6グラムにもなるといいます。

「調整が難しい外食」気を付けることは

さらに、外食時の注意点です。

外食をする際は
▼各都道府県が減塩の食事やバランスの良い食事を提供している飲食店に対して、認証する取り組みを行なっていることからそうした制度を活用して店を選んだり、
▼減塩などを考慮した弁当や惣菜を活用すると良いということです。
由田教授は「日本人の食事は栄養バランスは良いと言われるが、塩分量が多いことが欠点となっている。個人の努力も必要だが、食塩の含有量が低い食品の開発など社会全体で取り組んでいく必要がある」と指摘しています。

一方で、持病などで食事について医学的な管理を受けている人は医師の指導に従ってほしいとしています。

「野菜350グラム」「果物200グラム」はどう達成?

このほか、国の新たな数値目標のうち、野菜の1日あたりの摂取量を現状より約70グラム多い350グラムとすることについては、「野菜70グラムは目安としては小鉢一杯分ほどになります。生でも過熱してもいいですが、1日350グラムですので朝、昼、晩に分けるほか、野菜炒めのように主菜にするのも一度に多くとれるのでおすすめです」と話しています。

果物の目標摂取量の200グラムについては、「おおまかには1日2個分ぐらい果物を食べるイメージです。仕事の関係で昼に果物を食べにくい方は、間食にしたり、朝や夜に多めに召し上がってもいいと思います」と話しています。
最後にバランスの良い食事を続けるポイントについて聞いたところ、「基本的に食べていけないものはなく、忙しい時などに例えば麺類しか食べられなかったときなどは、その後の数日間の食事でバランスをとるように考えていってほしいです」と話していました。

街の人たちは

街で幅広い年代の人たちに話を聞いてみると、それぞれにふだんの食事で気をつけていることがあるようです。

【病院に行かずに過ごせるように】
80歳の女性は「塩分を取ったら血圧が上がるので、塩分は取らずにお酢をかけて食べるようにしています。病院に行かずに元気で過ごせるようにみかんやリンゴ、バナナなどをヨーグルトと一緒に毎日食べるのを心がけています」と話していました。

【家庭では減塩の醤油を】
60代の男性は「若いときは塩分をとらないとやっていられなかったが、だんだん年をとり体を動かさなくなると、塩分を取り血圧が上がると体がきつくなってしまうかと心配だ。家庭では減塩の醤油を使うように心がけていて、定食のスープもしょっぱすぎると思うくらい体が変わってきました」と話していました。

【朝ごはんに必ずサラダかお味噌汁】
42歳の女性は「添加物が多いレトルト食品などは避けるようにしています。朝ごはんは必ずサラダかお味噌汁を食べますが、たくさん野菜を入れるようにしています。ただ、塩分は気にしていますが、料理の味を見ながらどうしても足してしまうことはある」と話していました。

【自炊ではバランスを意識して】
21歳の男性は「1人暮らしなので、自炊では太らないように食事のバランスを意識していて、野菜をとるようにしたり、塩分をとるのを控えるよう意識している。ただ外食ではなかなか塩分を調整するのは難しいし、楽しみの1つとしてしょうがないと思うので、ラーメンのスープはおいしく、飲んでしまいます」と話していました。

専門家は

「健康日本21」に策定から携わっている公衆衛生学が専門で東北大学大学院の辻一郎名誉教授は今回の見直しについて、次のように話しています。
「2040年にはいわゆる団塊ジュニアの世代が全員65歳以上となるなど今後、高齢化がさらに進む中で1人1人がより健康になっていくということが大事ですし、社会経済的な活力を維持し向上させていくためにも健康づくりの役割は大きくなると思います。国民の皆様には危機感を持ってもらい、今回の目標を見てもらった上で自分の生活を自己点検して、健康に暮らすにはどうすればいいか考えてほしい」

一方で、経済的な理由などで個人個人の健康に格差が広がりつつあるとして。

「国や地方自治体のほか産業界やさまざまな団体など、総合的な努力のもとで一人一人が健康になれるような社会環境をつくっていくことが必要となる」