社会

”子どもの自殺 過去最多” こども家庭庁が対策強化で素案

厚生労働省によりますと、去年1年間にみずから命を絶った小中学校や高校の児童、生徒は514人と統計がある昭和55年以降で初めて500人を超え、過去最多となっています。
これを受けて、こども家庭庁は、各都道府県に専門家による対応チームを設置するなど対策の強化に向けた素案をまとめました。
子どもの自殺対策について、厚生労働省や文部科学省、それに警察庁などは強化に向けた検討を進めていて、2日、こども家庭庁で開かれた会議で、具体策の素案を示しました。

それによりますと、幅広い職種の専門家でつくる若者向けの自殺危機対応チームを全国の都道府県に設置し、リスクが高い若者への対応について市町村に助言するなど支援にあたるとしています。

また、学校で児童・生徒に1人1台配られるパソコンなどを使って自殺の兆候を把握したり、支援につなげたりするシステムの全国での実施を目指すことや、警察や自治体などがまとめる統計や資料を分析する調査や研究を行うとしています。
会議の中で、小倉こども政策担当大臣は「子どもの置かれている状況の深刻さや対策の緊急性を関係省庁で共有できた。ただちに政策を実行に移し、政府一丸となって取り組みたい」と述べました。

政府は、示した素案を踏まえて、今月中にも策定される「骨太の方針」に対応策を盛り込むことにしています。

子どもの自殺対策について 遺族たちも要望

自殺で子どもを失い、不適切な指導があったとして再発防止を求めてきた遺族たちは、5月29日、「国の子どもの自殺の調査では毎年6割程度が原因不明とされ、実態把握が十分にされていない」として、こども家庭庁などに、多面的に情報収集して原因を究明することや、迅速性や中立性、客観性、それに透明性が保たれた第三者調査の体制を整備し、再発防止につなげていくことなどを要望しました。
要望した遺族たちの会見(5月29日)
要望した1人、「はるかさん」(29)は、10年前、当時、高校1年生だった弟の悠太さん(16)が自ら命を絶ちました。

亡くなる前日の部活の顧問による不適切な指導などが原因だと裁判に訴え、確定した2審の判決では、顧問が自殺を予測することは困難で責任はないと判断したものの、十分な事実確認をせず厳しく叱責したことは不適切だったと認定しました。
仲のよかった弟をどうすれば救うことができたのか。

はるかさんは、この10年間、これ以上、同じようなことが起きて欲しくないと対策を求める声を上げ続けてきました。

しかし、みずから命を絶つ子どもは年々増加。
はるかさんは、「子どもの自殺者が過去最多という数字は目にしますが、社会や大人、国に変化を感じられず、子どもたちが死ぬほど何に苦しんだのか向き合ってくれる気持ちがあるのだろうかともどかしさを感じていました。弟が亡くなってから10年がたち、自分も10歳年を取ると、弟が生きた16年間がどれだけ短い人生だったか感じます。こんなに短い人生で死なないといけないほど追い詰められるということが当たり前であってほしくありません」と涙をこらえて語りました。

その上で、子どもの自殺対策を担う国に対しては、「みずから命をたった子どもたちが残したことばや表情、周りにいた友達や家族、先生、ひとりひとりの声を大事に聞き取ればどうしたら救えたのか見えてくるのではないかと思います。再発防止につながるような丁寧な検証を行い、子どもの自殺を1人でも減らせる方法が見えてくるのであれば、ひとつひとつ実行してもらいたいです」と話していました。

支援団体「問題意識を共有し実効性ある対策を」

自殺防止対策に取り組んでいるNPO法人「ライフリンク」は、電話に加えてSNSも活用して生きづらさを抱える人たちの相談を受けています。

SNSの活用は若い世代に対応するためで、実際、SNSの相談の3割が10代からで、内容は学校での友人関係や部活動、進路、家族との関係などさまざまです。
代表の清水康之さんは、「子どもたちが生きていく場所は家庭か学校といった形で限られやすく、そもそも追い詰められやすいという背景がある。こうした状況の中で、いじめなどなにかひとつの強い圧力で自殺に追い詰められる場合もあれば、家庭の問題や学校の問題が複合的に関係する場合もあり、それぞれの子どもが自殺に追い込まれるプロセスを丁寧に解明していく必要がある」としています。

その上で、これまで子どもの自殺対策は、情報を一元化する部署がなく、実態解明が不十分でどう対応していくのか明確な戦略が立てられていなかったと指摘します。

今後はこども家庭庁を中心に、厚生労働省や文部科学省、それに警察庁といった関係省庁が連携して対応することになります。

清水さんは、「対策を取るためには、問題意識を共有し何をしていくのかビジョンを共有する必要があるので、ようやくスタート地点に立とうとしていると思う。これまで出来なかったことを実行に移さなければ対策案はただの紙切れになってしまう。政府がリーダーシップをとって、関係省庁や、現場を担う行政、学校、それに民間の団体を巻き込んで実効性のある対策を進められるかが問われている」と話していました。

【相談窓口はこちら】

厚生労働省ではホームページでSNSや電話などの相談窓口を紹介しています。

SNSやチャットでの相談窓口です。
▽NPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」が行う「生きづらびっと」LINE@yorisoi-chat
▽NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」が行う「こころのほっとチャット」LINE@kokorohotchat
▽NPO法人「あなたのいばしょ」チャットhttps://talkme.jp
▽NPO法人「BONDプロジェクト」LINE@bondproject
▽NPO法人「チャイルドライン支援センター」が行う「チャイルドライン」https://childline.or.jp/index.html

主な電話での相談窓口です。
▽NPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」が行う「#いのちSOS」0120-061-338
▽一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」が行う「よりそいホットライン」0120-279-338※岩手・宮城・福島からは0120-279-226
▽一般社団法人「日本いのちの電話連盟」が行う「いのちの電話」0120-783-556
▽都道府県が実施している電話相談などに接続される「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556

このほか以下の子ども向けの相談窓口も紹介しています。
▽NPO法人「チャイルドライン支援センター」が行う「チャイルドライン」0120-99-7777
▽文部科学省が行う「24時間子供SOSダイヤル」0120-0‐78310
▽法務省が行う「子どもの人権110番」0120-007-110

これらを紹介しているURLは、「https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/」で、「まもろうよこころ」でも検索できます。

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