旧優生保護法 強制不妊訴訟 仙台高裁 1審に続き訴え退ける

旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴えている裁判の先駆けとなった宮城県の原告の裁判で、2審の仙台高等裁判所は、時間の経過によって賠償を求める権利は失われているとして、1審に続き訴えを退けました。

旧優生保護法に基づいて不妊手術を強制された、知的障害がある宮城県の60代の女性が、子どもを産み育てる権利を奪われたなどと訴えて、5年前、国に賠償を求める裁判を仙台地方裁判所に初めて起こし、その後、70代の女性も原告に加わりました。

1審は2019年、旧優生保護法は憲法に違反するとしながらも、不妊手術から20年が過ぎての提訴に、「賠償請求できる権利は消滅している」として訴えを退けていました。

1日の2審の判決で、仙台高等裁判所の石栗正子裁判長は、この法律は憲法に違反するとした一方で、「国が障害者に対する差別や偏見を助長していたことなどから、原告が賠償を請求するのは困難だったと言えるが、それぞれ手術を認識した段階で提訴することが不可能だったとまではいえない」などとして、時間の経過を理由に訴えを退けました。

旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴える裁判は、今回の原告の提訴をきっかけに全国に広がり、去年、大阪高等裁判所が初めて国に賠償を命じて以降、訴えを認める判決が7件出ていますが、高等裁判所で原告の訴えを認めなかったのは、今回が初めてです。

原告「違法に行われた問題なのに 腹が立つ」

判決が言い渡されたあと、取材に応じた宮城県内に住む原告の飯塚淳子さんは、終止うつむいていて、「残念です。判決を聞いて元気がなくなりました」と語ったうえで、「何で裁判所はきちんとやってくれないのか、違法に行われた問題なのに、なぜこんなことをやっているのか、腹が立ちます」と話していました。

原告の義理の姉「今までの4年間を返してほしい」

原告の60代の女性の代理で裁判に参加した義理の姉は判決後に取材に応じ「裁判長がしっかり向き合ってくれれば、こんな判決にはならなかったと思います。今までの4年間を返してほしい」と話していました。

弁護団長「最後まで戦い続けるしかない」

判決が言い渡されたあと、取材に応じた弁護団長の新里宏二弁護士は「判決には、はっきり言って驚いた。各地の裁判所が賠償請求できる期間の問題を突破した中で、初めて提訴を行った仙台では、事実を見てくれたのかと感じている。原告がずっと前から提訴することが可能だったという裁判所の発想は、どこを見て審理したのかと思うし、絶望の裁判所だ。ただ、最後まで戦い続けるしかない」と話していました。

集まった支援者たちは

判決が言い渡されたあと、裁判所の前では、原告側の弁護士が「不当判決」と書かれた紙を険しい顔で掲げました。

集まった支援者からは、驚きや落胆の声が上がり、ひざから崩れ落ちる人もいました。

子ども家庭庁「国の損害賠償責任 否定されたものと認識」

旧優生保護法の所管が厚生労働省から移管された子ども家庭庁は、仙台高等裁判所の判決について「国の損害賠償責任が否定されたものと認識している。旧優生保護法に基づく優生手術などを受けた方に対しては、一時金の支給等に関する法律が公布・施行されており、今後とも着実な一時金の支給に取り組んでいく」とコメントしています。

官房長官「今後の対応 国会議論の結果踏まえ検討」

松野官房長官は午後の記者会見で「優生手術などを受けた方への着実な一時金の支給に取り組んでいる。今後の対応のあり方は国会での議論の結果を踏まえて対応を検討していきたい」と述べました。

その上で「多くの方が心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、平成31年4月に総理大臣と厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心からのおわびを表明しており、政府のこうした立場は今も変わらない」と述べました。