北朝鮮 失敗した“軍事偵察衛星打ち上げの様子”の写真公開

北朝鮮は、5月31日に失敗に終わった初めてとなる軍事偵察衛星の打ち上げの様子を捉えたとする写真を公開しました。

北朝鮮は5月31日、北西部トンチャンリ(東倉里)にある「ソヘ(西海)衛星発射場」から初めてとなる軍事偵察衛星「マルリギョン(万里鏡)1号」を新型ロケット「チョルリマ(千里馬)1型」で打ち上げ、2段目のエンジンの異常で推力を失い、朝鮮半島西側の黄海に墜落したと発表しました。

一夜明けた6月1日、北朝鮮は国営の朝鮮中央通信を通じて打ち上げの様子を捉えたとする写真を初めて公開しました。

写真では、先端部分が丸みを帯び、白を基調としたロケットと称する事実上の弾道ミサイルが、炎を吹き出しながら上昇する様子が写っています。

また、液体燃料の特徴である、炎が直線状に伸びていることも確認できます。

一方、発射は、過去の打ち上げで使われてきた固定式の発射台ではなく、海沿いに整備された、新たな発射台が使われたことが確認できます。

アメリカの研究グループは5月、「ソヘ発射場」の海沿いに新たな発射台の整備が進められていることが確認されたと指摘していました。

北朝鮮が、失敗に終わった発射の写真を公開するのは異例です。

“ICBM技術の応用 疑いの余地なし”

北朝鮮が写真で公開した、軍事偵察衛星の打ち上げに使ったとされる事実上の弾道ミサイルについて、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは「衛星を載せる先端部分の直径は2.5メートルから3メートルほどと推測されることからすると、全長は25メートル級で、3段式とみられる。いままで北朝鮮が打ち上げていた非常に細長いペンシル型のものと比べると相当がっしりとしたタイプだ。今までと全く違う新型で直径も太く、重さ300キロから500キロ級の人工衛星を高度400キロぐらいに打ち上げようとしたと推察できる」と分析しています。

写真では1段目のエンジンのノズルが2つか4つか判定できないとした上で「ICBM=大陸間弾道ミサイルの『火星15型』はノズルが2つで『火星17型』は4つだが、ICBM技術の応用があったとことは疑いの余地がない」と指摘しています。

また、使われた燃料が液体か固体かについては「噴煙が白くなく透明なので、液体燃料で間違いない。液体燃料は燃料と酸化剤をうまく混合させてロケットの中で燃やすが、配管にかかる重力や振動の防止が必要で構造が非常に複雑になる。故障の確率は固体より液体燃料のほうが高くなる」と述べ、今回の失敗の要因とも関連している可能性があると指摘しています。

その上で、黄海で見つかった長さおよそ15メートルの物体について「2段目と3段目が一緒になって海に落ちた可能性がある。引き揚げができれば北朝鮮の科学技術や生産能力を推し量る意味で非常に重要になる」と話しています。

一方、北朝鮮が失敗した発射の写真を公開したことについて「これは国連決議違反のICBMの発射ではなく、偵察衛星の打ち上げなのだから、外国から言われる必要はない、正々堂々とやっているということを言いたいのではないか」と推測しています。

その上で、2回目の発射については「簡単なトラブルであれば短期間で修復できるが、それでも地上でテストする必要があるので、短時間でできるものではない。2回連続で失敗すれば北朝鮮の威信を失わせてしまうことになるので簡単に打ち上げることはないのではないか」と話しています。

韓国軍 “宇宙発射体”引きあげ作業の現状明らかに

韓国軍の合同参謀本部は、朝鮮半島西側の黄海で見つかった、北朝鮮が主張している「宇宙発射体」の一部と推定されるものの引きあげ作業についての現状を明らかにしました。

それによりますと、引きあげようとしているのは、長さおよそ15メートル、直径が2メートルから3メートルほどの物体で、黄海の水深およそ75メートルの海底に水平に横たわっていて、重量もかなりあるとみられるということです。

韓国海軍は、5月31日から引きあげのための潜水作業を行っていますが、水中での作業時間に制約があることなどから、さらに潜水艦を投入するということです。

韓国軍は引きあげが完了しだい、詳しい分析を進めることにしています。

松野官房長官「さらなる挑発行為に出る可能性も」

松野官房長官は午前の記者会見で、「きのうの北朝鮮による発射はさまざまな情報を総合的に分析した結果、衛星の打ち上げを試み、失敗したものだったと認識している」と述べました。

そのうえで、「北朝鮮が今後、各種ミサイルの発射を含め、さらなる挑発行為に出る可能性はあると考えており、あらゆる事態に対応できるよう適切な態勢を構築していく。北朝鮮による弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射も国連安保理決議違反であり、引き続き決議の順守を求めていく」と述べました。