アメリカザリガニとアカミミガメ きょうから販売など禁止に

外来種のアメリカザリガニとアカミミガメが、6月1日から「条件付特定外来生物」に指定され販売などが禁止されます。

アメリカザリガニと、「ミドリガメ」とも呼ばれるアカミミガメは、当初、餌用やペット用として輸入されていましたが、繁殖力が強いため全国各地に分布して固有の生態系に悪影響を与えています。

そのため、生態系を保護する「改正外来生物法」に基づき、アメリカザリガニとアカミミガメを「条件付特定外来生物」に指定する政令が6月1日から施行されました。

指定によって、輸入や販売、販売目的での飼育、それに購入ができなくなるほか、多数の人に配ることや飼っていたものを川に捨てるなど野外への放出が禁止され、違反した場合は最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

一方で、新たな購入はできませんが、現在ペットとして飼育しているものは、引き続き飼うことができるほか、川や池で捕獲したり少数の人に無償で譲り渡したりすることは可能です。

環境省によりますと、特にアカミミガメは寿命が40年程度と長いため、飼い続けることが難しいなどの相談が寄せられているということで、環境省では電話相談に応じています。
電話は0570-013ー110です。

規制によって何が変わるの?

子どものころ、家では池で取ったアカミミガメを飼っていたし、小学校の教室では川で釣ったアメリカザリガニをみんなで世話していました。
そんな身近な存在のアメリカザリガニとアカミミガメ。

環境省によりますと、アメリカザリガニを飼っているのはおよそ65万世帯、アカミミガメはおよそ110万世帯にものぼります。

しかし、固有の生態系を壊す原因にもなることから法律により規制されることになりました。

規制によって何が変わるの?こんな場合はどうしたらいいの?環境省の担当者に詳しく聞きました。

“固有の生態系を脅かす存在に”

Q.
そもそもなぜ、アメリカザリガニとアカミミガメは規制されるのでしょうか。

A.
アメリカザリガニは昭和初期に食用のウシガエルの餌として、またアカミミガメは、1950年代にペット用として海外から輸入されていました。ところが、繁殖力が非常に強い上、魚や水中の昆虫の餌となる水草を食べたりかみ切ったりして、固有の生態系を脅かす存在となってしまったのです。
環境省によりますと、こちらの写真は水草が豊かだった池にアメリカザリガニが繁殖し、6年後の同じ場所ですが、水草が消滅して水が茶色に濁ってしまった様子です。

この池では生態系の変化により日本固有種の貴重な水生昆虫「シャープゲンゴロウモドキ」が姿を消したということです。

また、アカミミガメもペットとして飼われていたものが捨てられたり逃げ出したりして池などで繁殖し、在来のカメと餌や居場所をめぐって競合し、生態系に影響を及ぼす事例が報告されています。

こうしたことから固有の生態系を守るため去年成立した「改正外来生物法」に基づき、規制することになりました。

“野外への放出が禁止に”

Q.
では規制によって、なにが変わるのでしょうか。

A.
2023年6月1日からアメリカザリガニとアカミミガメは「条件付特定外来生物」に指定されます。販売や購入、多くの人に配る頒布、販売や頒布を目的とした飼育、そして、川や池に捨てるといった野外への放出が禁止されます。

一方で、引き続きペットとして飼育することや、川や池で捕獲すること、それに、飼っているものを少数の人に無償で譲り渡すことは問題ありません。

ただ、一度捕獲するなどして家に持ち帰ったら、再び川や池に戻すことはできません。特にアカミミガメの寿命は40年程度とされています。

最後まで責任を持って飼えるのかを考えてから、持ち帰ることが必要です。

“ザリガニ釣りはこれまでどおり”

Q.
川や池でザリガニ釣りをすることはできますか。

A.
捕獲はできるので、ザリガニ釣りはこれまでどおりできます。釣ったその場で逃がす「キャッチアンドリリース」もできます。

ただし、釣った場所とは別の場所にリリースすることはその場所の生態系を壊すことにもつながりかねないのでしてはいけません。

Q.
アメリカザリガニを取って、釣りの餌にしてもいいですか。

A.
アメリカザリガニを捕獲したその場所で、釣りの「生き餌」として使うことはできますが、捕獲した場所から移動して別の場所で「生き餌」として利用することはできません。釣り針から外れて逃げてしまった場合に、その場所の生態系に影響を与えるおそれがあるためです。

また、「生き餌」として利用するために一度家に持ち帰ったものを別の場所での釣りに利用することは、「野外への放出」にあたり禁止です。

Q.
学校で飼育することはできますか。

A.
教育目的での飼育は許可や届け出などの必要はなく、できます。ただ、環境省が定める飼い方の基準を満たさなければなりません。

飼い方の基準では水槽で飼う場合はふた付きの水槽におもしを乗せることや、池で飼う場合は水面から陸までの距離を十分確保して、池から上がれないようにするなど脱走を防止する必要があるとされています。

一方、家庭で飼う場合は、そうした飼い方の基準はありませんが、故意ではないにしても水槽や池などから逃げ出してしまった場合は「野外への放出」にあたるので、飼い方の基準を参考にして、適切な管理で脱走の防止に努めてください。

相談ダイヤルを設置

Q.
いま飼っているアメリカザリガニやアカミミガメを飼育できなくなったらどうしたらいいですか。

A.
川や池に捨てることは「野外への放出」にあたり禁止されています。最後まで責任を持って飼うことが必要ですが、どうしても飼えない場合は、代わりに飼ってくれる人を探し、無償で譲り渡してください。

Q.
代わりに飼ってくれる人を探しても見つからない場合はどうしたらいいですか。

A.
代わりに飼ってくれる人がどうしても見つからない場合は、残念ですが殺処分もやむをえません。殺処分する場合は、適切に処分できる業者に依頼するなどして、薬殺や冷凍など、できる限り苦痛を与えない適切な方法で行ってください。

そうしなくていいように、飼い始める前によく考えて飼うことが大切です。環境省では相談ダイヤルを設けて飼育などの相談に応じています。

番号は0570-013-110です。

外来種対策に取り組んできた現場は

今回の規制を、アメリカザリガニなど外来種対策に取り組んできた現場はどう捉えているのでしょうか。訪れたのは東京・八王子市にある長池公園です。

江戸時代からある農業ため池を活用した公園で、豊かな自然が残された、市民の憩いの場所になっています。
60年ほど前の調査では、都内でも有数の水草の産地で、さまざまな生き物も生息していました。

しかし、20年程前に公園として整備された時には、すでにアメリカザリガニやアカミミガメ、ブラックバスなど、外来種が数多く確認され、豊かに繁茂していた水草もほとんど無くなっていました。
そこで2019年に、池の水を抜いて干す「かいぼり」を実施。

外来種の駆除も行ったところ、東京では絶滅とされていた「じゅんさい」や「ミズユキノシタ」などの水草が、およそ60年ぶりに再発見されました。
その後も貴重な水草を守るため、池にザリガニを駆除するワナを設置して駆除を続けています。
これがそのワナです。

上の部分から自動でおびき寄せるエサをカゴの中にまきます。

エサに誘われたザリガニは、穴から入り下のカゴに収納される仕掛けです。

訪れたこの日も、仕掛けて3日で20匹余りのザリガニが入っていました。
長池公園の管理を担当しているパークレンジャーの片山敦さんは「駆除を始めてから、ヨシノボリやマツモムシなどの生き物が増えてきたように感じる」と話します。

しかし、復活した水草も、ザリガニが入り込める場所ではすぐに切られて無くなってしまうといいます。

水草の周りを囲うなどして保護していますが、外来種対策に終わりはないと顔を曇らせています。

片山敦さん
「駆除した物は冷凍し殺処分しているが心苦しい思いがある。だが外来種を野に放った人間の責任が一番大きい。外来種によって数を減らしてしまった生き物がまた復活するキッカケを作ることにもなるので、今回の指定で、多くの人にいろいろな在来の生き物に対して影響を与えているんだと知ってもらい、飼っている生き物を外に捨てないなどを意識してもらえるとうれしい」