北朝鮮「衛星」きょうから打ち上げ通報期間に 警戒監視を強化

北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げるとしている通報期間に31日から入りました。政府は北朝鮮が「衛星」と称しても弾道ミサイル技術を用いた発射に変わりはなく、沖縄県の上空を通過する可能性があるなどとして警戒監視を強めています。

北朝鮮は29日、海上保安庁に対し、31日から来月11日の間に「人工衛星」を打ち上げると通報し、31日午前0時からその期間に入りました。

北朝鮮の労働党幹部は30日、初めてとなる軍事偵察衛星が来月に入ってまもなく打ち上げられると明らかにしましたが、日本政府は、期間を変更するという新たな通報はなく、31日に発射される可能性もあるとみています。

北朝鮮が打ち上げるとしている「人工衛星」について、松野官房長官は30日、「弾道ミサイルとほぼ同一で、互換性のある技術が組み込まれている」と指摘しました。

日本政府は、北朝鮮が「衛星」と称しても弾道ミサイル技術を用いた発射に変わりはなく、国連安保理決議に違反するとしていて、関係国とともに引き続き自制を求めています。

一方、実際に発射されれば、沖縄県の先島諸島付近の上空を通過する可能性があると分析していて、その場合には、Jアラート=全国瞬時警報システムで国民に迅速に避難情報を出す準備を整えています。

また、日本の領域への落下にも備え、浜田防衛大臣による「破壊措置命令」に基づいて迎撃する態勢をとるなど、警戒監視を強めています。

自衛隊 迎撃ミサイルの部隊を展開

防衛省は、弾道ミサイル技術を用いた事実上の弾道ミサイルが発射される可能性があるとみて、一部が日本に落下する場合に備えて、自衛隊の部隊を展開しています。

発射された場合は先島諸島など沖縄県の上空を通過する可能性があることから、東シナ海などには、迎撃ミサイルを搭載したイージス艦が展開して、24時間態勢で備えています。また、地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」が那覇市や先島諸島、それに東京の防衛省の敷地内にも展開しています。

このほか、弾道ミサイルなどが落下した場合に危険物質の除去やけが人の救護など必要な対応がとれるよう、陸上自衛隊の部隊も沖縄県内に派遣しています。

沖縄県上空を通過する可能性

防衛省は北朝鮮から事実上の弾道ミサイルが発射された場合、先島諸島など沖縄県の上空を通過する可能性があるとみています。

北朝鮮の通報では落下物が予測される区域は、朝鮮半島の西側の2つの海域と、フィリピンの東側の太平洋のあわせて3つの海域とされています。

2016年2月と2012年12月に北朝鮮北西部から発射された人工衛星と称する事実上の弾道ミサイルは、いずれも沖縄県の先島諸島付近の上空を通過したとみられています。

防衛省は、今回も先島諸島など沖縄県の上空を通過する可能性があるとみて、沖縄県に自衛隊の部隊を展開しています。

過去2回は発射から約10分後に通過か

北朝鮮が今回の通報内容と同じくフィリピン沖の太平洋などに落下物の予測区域を示した過去2回のケースでは、発射からおよそ10分後に、沖縄県の上空を通過したとみられています。

このうち前回、2016年2月は北朝鮮北西部のトンチャンリから事実上の弾道ミサイルが南の方角に発射され、政府はエムネット=緊急情報ネットワークシステムで発射からおよそ10分で「ミサイルが沖縄県地方から太平洋へ通過したと推定される」と情報を伝えました。

また、2012年12月のケースでも発射からおよそ10分で沖縄県上空を通過したとみられています。いずれも日本の領域内への落下物はなく、自衛隊は迎撃ミサイルによる破壊措置を実施していません。

事実上の弾道ミサイルは発射からおよそ10分で沖縄県の上空を通過する可能性があり、防衛省・自衛隊が警戒監視を続けています。

国土交通省 小型機やヘリコプターの飛行自粛を求める

国土交通省は30日夜、小型機やヘリコプターなど目視で飛ぶ航空機を対象に新たに航空情報を出しました。

この中では、北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げるとし、防衛省が事実上の弾道ミサイルが発射される可能性があるとみて、那覇市や先島諸島で展開している迎撃ミサイル「PAC3」の周辺の4つのエリアでの飛行を自粛するよう求めています。

期間は31日午前0時から来月11日までです。

ただ、警察や消防のヘリコプターのほかドクターヘリや管制官の指示に従って飛行する定期便などは自粛の対象になっていないということです。

初めての軍事偵察衛星で日米韓を威嚇するねらいか

北朝鮮は、敵の軍事行動をリアルタイムで追跡・監視するためとして初めてとなる軍事偵察衛星を事実上の長距離弾道ミサイルで打ち上げる構えで、安全保障協力を進める日米韓3か国を威嚇するとともに、国威発揚を図るねらいがあるとみられます。

北朝鮮は、おととし発表の「国防5か年計画」に盛り込んだ、初めてとなる軍事偵察衛星の開発を進め、今月16日にはキム・ジョンウン(金正恩)総書記が、搭載準備が完了したとされる1号機を視察し今後の行動計画を承認していました。

また、朝鮮労働党中央軍事委員会のリ・ビョンチョル副委員長は30日の談話で、軍事偵察衛星が来月に入ってまもなく打ち上げられると明らかにし「アメリカや追従勢力の危険な軍事行動をリアルタイムで追跡・監視し、軍事的準備態勢を強化する上で不可欠だ」と強調しました。

北朝鮮北西部 発射場周辺の天候は

北朝鮮は天候などを考慮したうえで、最終的に発射のタイミングを決めるとみられます。

韓国の気象庁が30日に発表した予報によりますと、北朝鮮北西部のトンチャンリ(東倉里)にある「ソヘ(西海)衛星発射場」からおよそ50キロ離れたピョンアン(平安)北道シニジュ(新義州)では31日、日中の時間帯はおおむね晴れる見込みです。

来月1日は朝方に雨が降ったあと、日中は曇りの見込みだということです。2日から9日までは、晴れまたは晴れのち曇りの日が続くと予想されています。