日野自動車 三菱ふそうトラック・バス 経営統合で基本合意

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは経営統合することで基本合意したと発表しました。

発表によりますと日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは取締役会を開き、両社が経営統合することで基本合意したということです。

経営統合のための新会社を設立し、両社がその傘下に入るということです。そのうえで、新会社の株式を日野自動車の親会社のトヨタ自動車と三菱ふそうトラック・バスの親会社のダイムラートラックがそれぞれ同じ割合で保有するとしています。
親会社を含む4社は、トラックなど商用車の開発や生産、それに水素など次世代の技術開発も協力して行うということです。

4社は来年末までの経営統合を目指し、具体的な協議を進めていくとしています。

日野自動車は、排ガスなどの検査データの不正問題で昨年度のグループ全体の決算が過去最大の最終赤字になるなど業績の悪化が続いていました。

また、トラックなどの商用車をめぐって各社は脱炭素への対応など開発コストの負担が課題となっていました。

トヨタ 佐藤社長「単独で戦うのは難しい状況」

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は、記者会見で「日本の商用車市場は、世界と比べて規模が小さく各社が単独で戦うのは、難しい状況だ。両社によるシナジー=相乗効果を高め、開発、調達、生産における事業の効率化を図ることでCASE=通信や自動運転などの次世代の技術に取り組む事業基盤と競争力を強化していく」と述べました。

また日野自動車について「経営の根幹である商品、オペレーションの領域、車作りというところで、トヨタが持ってるノウハウを生かすことが難しい。商用車ビジネスについて、われわれが日野を支えることの限界もあると正直思っている」と述べました。

そのうえで、佐藤社長は「4社による未来志向の大きなフレームワークで、商用車ビジネスの未来を作っていこうという中で、われわれにない強みをダイムラートラックの皆様にお借りしながら、三菱ふそうの方にアドバイスもいただきながら、日野自動車の未来に対して取り組みを進めていきたい」と述べました。

ダイムラー ダウムCEO「規模の大きさが鍵」

会見の中でダイムラートラックのマーティン・ダウムCEOは「ゼロエミッション=脱炭素に向けて加速していく中で投資が大きな課題の一つだ。複数の新たな技術に投資をしなければならず、この業界のトップ企業にとっても大変なことで、同時並行の技術開発を経済的に成り立たせるためには規模の大きさが鍵だ。きょうの協業は4社すべてにメリットをもたらす」と述べました。

日野自動車 小木曽社長「日野単独では非常に厳しい」

日野自動車の小木曽聡社長は、記者会見で「不正の対応については、日々の活動の中で手応えを感じてきているが、これからのカーボンニュートラルなど環境変化への対応を同時に実現することは、日野単独では非常に厳しいとずっと悩んでいた。今回の4社の枠組みを千載一遇の機会と捉えている」と述べました。

三菱ふそう デッペンCEO「手を結ぶことで力を得る」

会見の中で、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペンCEOは「さまざまな先進的なサービスや技術をお客様は求めているが、単独でできる範囲を超え、手を結ぶことで私たちは力を得る。広い販売ネットワークと熟練の従業員などを持つ強大な日本のトラックメーカーとなる。多くの人々と技術開発を加速するために一緒に働くことができる」と述べました。

西村経産相「国際市場で大きな存在感持つこと期待」

西村経済産業大臣は記者団に対し、「自動車産業は、脱炭素化など地殻変動というべき大変革の時代を迎えている。グローバルな視点でスピード感をもって大胆な投資をすることが、地殻変動を乗り越える鍵だ。この協業が大胆な挑戦につながり、グローバルな競争力を高めて、特に日野と三菱ふそうが国際市場において、大きな存在感を持つことを期待したい」と述べました。

国内商用車メーカー 2つのグループに

今回の経営統合によって国内の商用車メーカーは大きく2つのグループとなります。

国内の商用車メーカーは、
▼トヨタ自動車が5%出資する「いすゞ自動車」と、
いすゞの子会社の「UDトラックス」

それに、
▼トヨタの子会社の「日野自動車」
▼ダイムラートラック傘下の「三菱ふそうトラック・バス」の3つのグループに分かれていました。

経営統合によって、
▽「日野自動車」、「三菱ふそうトラック・バス」のグループと、
▽「いすゞ自動車」、「UDトラックス」のグループの大きく2つのグループとなります。

ただ、トヨタとしては、2つのグループともに一定の資本関係がある形です。

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスは、経営統合を通じて水素を使って走る燃料電池車やEV=電気自動車、それに自動運転などのCASEと呼ばれる次世代の技術開発で連携する方針です。

さらに、国内の大手商用車メーカーのすべてがトヨタと関わる形となることで、今後は規模の拡大を通じた開発コストの削減や物流分野の新たなサービスの開発などが加速するか注目されます。

トヨタの佐藤恒治社長は記者会見で「いすゞも含めて大きな連携をしながらCASEの普及に向けた動きを加速させていきたい」と述べました。