役所広司さん カンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞 日本人2人目

世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭で、俳優の役所広司さんがドイツのヴィム・ヴェンダース監督の作品「PERFECT DAYS」(原題)の演技で、最優秀男優賞を受賞しました。日本人の俳優が最優秀男優賞を受賞するのは19年ぶり2人目です。

また、脚本家の坂元裕二さんが是枝裕和監督の最新作「怪物」で脚本賞を受賞しました。

ことしで76回目となるカンヌ映画祭は最終日の27日、最優秀賞のパルムドールを競うコンペティション部門など各賞の発表が行われました。

このうち、俳優の役所広司さんがドイツのヴィム・ヴェンダース監督の作品「PERFECT DAYS」(原題)の演技で、最優秀男優賞を受賞しました。

役所さんは名前が読み上げられると、大きく驚いた表情を見せ、壇上に上がって「こんなに華々しいカンヌ映画祭でスピーチするのはあまり好きじゃない」と話し、会場の笑いを誘っていました。

その上で「主人公の平山というとても魅力的な男をかいて下さってありがとうございました」と述べ、ヴェンダース監督ら関係者に何度も謝意を表していました。
この映画は、東京 渋谷の公共トイレを舞台に撮影した作品で、トイレの清掃員として働く主人公の男性を役所さんが演じています。

日本人の俳優が最優秀男優賞を受賞するのは2004年に是枝裕和監督の作品、「誰も知らない」で主演した俳優の柳楽優弥さんが日本人として初めて受賞して以来、19年ぶりです。

また、脚本家の坂元裕二さんが是枝監督の最新作「怪物」で脚本賞を受賞しました。

日本の作品で脚本賞を受賞するのは、2021年に「ドライブ・マイ・カー」で濱口竜介監督と大江崇允さんが受賞して以来です。

最優秀賞のパルムドールは、フランスのジュスティーヌ・トリエ監督のミステリー映画、「アナトミー・オブ・ア・フォール」が受賞しました。

役所さん「アジアの映画 力強く」

役所広司さんは授賞式のあとNHKの取材に対し、1997年のカンヌ映画祭で、みずからが主演した映画「うなぎ」が最高賞のパルムドールを受賞したときのことに触れ「映画祭の熱気と熱狂を見て映画の力を感じ頑張っていこうと誓ったのがカンヌ映画祭でした。それから時間がたちましたが、はじめて最優秀男優賞をもらったことは夢のようです」と喜びを表していました。

また、自身の演技のどのような点がヨーロッパの映画界に受け入れられたのかという質問に対して「僕が演じた平山という男は過去、地獄を見ていて、お客さんは平山に対し『新しい人生を頑張って』という気持ちで見てくれたのではないでしょうか」と述べました。

また、ドイツのヴェンダース監督については「おそらく監督の前世は日本人だったんじゃないかと思うほど、日本人と、日本の文化や習慣を正確に理解できる人だと撮影を通じて思った」と述べ、高く評価していました。

そして、今後の目標については「いままでどおり、日本映画で一つ一つ大切に自分の仕事をしていきたい。是枝さんらアジアの監督が高い評価を受けていて、アジア人どうしで力を合わせればアジアの映画が力強くなっていくと思います。そういうものに積極的に参加したい」と意気込みを語りました。

役所広司さんとは

役所広司さんは、長崎県出身の67歳。

俳優の仲代達矢さんが主宰する「無名塾」に所属して俳優としての活動をはじめ、1983年のNHKの大河ドラマ「徳川家康」の織田信長役で注目を集めました。

1996年には「Shall we ダンス?」など複数の映画で主演を務め、国内の数々の映画賞で主演男優賞を受賞しました。

その翌年は「CURE」で東京国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したほか、主演を務めた今村昌平監督の「うなぎ」がカンヌ映画祭の最優秀賞を受賞し、日本を代表する映画俳優としての評価を高めました。

その後も国内外の数々の作品に出演し多くの映画祭で俳優賞を受賞しているほか、2009年にはみずから主演した映画「ガマの油」で初めて監督を務めました。

こうした功績で、2012年には紫綬褒章を受章しています。

評論家「人間性の豊かさ 映像を通してにじみ出る」

役所広司さんがドイツのヴィム・ヴェンダース監督の作品「PERFECT DAYS」(原題)の演技で最優秀男優賞を受賞したことについて、映画評論家の渡辺祥子さんは、「役所さんは人間性の豊かさが映像を通してにじみ出ていて、立っているだけで様になる俳優です。それは長い俳優人生の中で役所さんが蓄えてきたものであり、良い役者の条件だと思います。年をとり積み重ねてきたものは、世界中の人にも伝わるのだと思いました」と話していました。

出身地の長崎 諫早の図書館に特設コーナー

役所さんの出身地、長崎県諫早市にある諫早図書館は受賞を祝おうと急きょ役所さんが出演した映画作品や関連の書籍を集めた特設コーナーを設け、訪れた利用者が手に取っていました。

70代の男性は「諫早出身の役所さんが素晴らしい賞をとったのでガッツポーズしました。名誉ある賞を胸に、役所さんにはさらに道を極めてほしいです」と話しました。

諫早図書館は「諫早市民のみなさんと喜びを分かち合いたいと特設コーナーを設けました。役所さんにはいっそう世界の作品に出演してもらい、世界を魅了してほしいです」としています。