セブン&アイHD 井阪社長続投決定 退任求めた株主提案 否決

流通大手「セブン&アイ・ホールディングス」の株主総会が開かれ、アメリカの投資ファンドが株主提案で求めた井阪隆一社長の退任は反対多数で否決され、井阪社長の続投が決まりました。

ただ、再任に賛成する比率が去年の総会より20ポイント近く下がり、株主の厳しい評価を示す結果となりました。

続投決定も現経営陣に対する厳しい評価示す結果に

セブン&アイをめぐっては、主要株主のアメリカの投資ファンド、バリューアクト・キャピタルが、中核のコンビニ事業と傘下のイトーヨーカ堂などのスーパー事業を分離するよう求めてきました。

しかし、会社側が事実上、この要求に応じない内容の経営計画を示したことから、ファンド側は、井阪隆一社長を含む取締役4人を退任させ、新たに社外取締役4人を選任する株主提案を提出していました。
株主総会は25日10時から都内の本社でおよそ3時間にわたって開かれ、採決の結果、ファンド側の株主提案は反対多数で否決されました。
そのうえで、会社側が提出した井阪社長を含む取締役の選任案は賛成多数で可決され、井阪社長の続投が決まりました。

ただ、井阪社長の再任に賛成した比率は76.36%にとどまり、去年の総会と比べて18.37ポイント低下しました。

また、後藤克弘副社長が74.89%、3人の社外取締役は60%台にとどまりました。

過去3年間の取締役選任案への賛成の比率は90%台が続いていたことから、いまの経営陣に対する株主の厳しい評価を示す結果となっています。

セブン&アイは、日本の小売業で初めて年間の売り上げが10兆円を超えましたが、利益の大半をコンビニ事業が占める一方、イトーヨーカ堂は、3年連続の最終赤字となるなど、引き続き、グループ運営の効率化とスーパー事業のてこ入れが大きな経営課題となります。

対立の構図は

井阪社長
セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、2016年に社長に就任し、これまでの総合流通グループとしての多角化路線から、コンビニエンスストア事業に経営資源を集中する方針に大きくかじを切りました。

コンビニ事業では、2021年アメリカの企業から、コンビニを併設したガソリンスタンド部門を日本円で2兆円あまりで買収し、海外事業の拡大を進めてきました。

これに対して、コンビニ事業以外の合理化については、その進捗の遅れを指摘する見方もあります。

不振が続く傘下の大手デパート「そごう・西武」については、2022年11月、海外の投資ファンドに売却する方針を決めましたが、関係者との調整の遅れなどから売却の時期についてはことし3月、2回目の延期で時期を未定とすることを発表しました。

また、祖業でもあるスーパー事業は、構造改革を進めたものの、傘下のイトーヨーカ堂が3年連続の最終赤字となり、ことし3月に、全体の4分の1にあたる店舗の大幅な削減を行う方針を明らかにしました。

その一方で、グループ全体の業績についてはコンビニ事業がけん引する形で拡大を実現しています。

ことし2月までの1年間のグループ全体の決算では売り上げが11兆円あまりと、日本の小売業で初めて10兆円を超え、最終的な利益も過去最高を更新しました。
そうしたなか、セブン&アイの経営陣と投資ファンド側の対立は激しくなっていきました。

投資ファンド側は、コンビニ事業の今後の成長性を生かすために、スーパー事業との分離を経営陣に求めてきました。

これに対して会社側は、ことし3月に打ち出した新たな経営計画で、「スーパーは食品関連に強みがありコンビニ事業の成長に不可欠だ」などとして、グループの相乗効果を優先する姿勢を示しました。

これに反発したファンド側は、「井阪社長は現状の戦略を維持するための誠意のない行動を取った」などとして、きょうの株主総会で新たに4人の社外取締役を選任する株主提案を提出し、▼井阪社長と▼後藤克弘副社長、それに▼取締役の選任や解任に関わる指名委員会で委員長や委員を務めてきた社外取締役2人の退任を要求していました。

これまでの実績を強調する井阪社長ら経営陣と経営の刷新が必要だとするファンド側が真っ向から対立し、総会での株主の判断が焦点となっていました。

会社側「当社成長戦略を支持 うれしい」

株主総会のあと、セブン&アイ・ホールディングスは、取締役会としての声明を公表しました。

今回の総会の結果について、「多くの株主の皆様に当社の成長戦略をご支持いただいていることをうれしく思います。取締役会は価値の創造に向けたあらゆる可能性を排除せず、客観的な分析・検証を継続的に実施し、事業の変革を加速させていきたいと考えています」としています。

米投資ファンド「次のステップについて議論を」

株主提案が否決されたことを受けて、アメリカの投資ファンド、バリューアクト・キャピタルは、海外の複数の機関投資家が株主提案に賛成したという見方を示しました。

そのうえで、「世界最大規模の機関投資家の多くが新たなリーダーシップと、より明確な成長戦略を求めて議決権を行使した。私たちはセブン&アイの取締役や株主と建設的に関わり、次のステップについて議論することを待ち望んでいる」とするコメントを出しました。

株主からはさまざまな声が

総会に出席した株主からは、会社の経営のあり方や井阪隆一社長らの退任を求める投資ファンドの株主提案をめぐり、さまざまな声が聞かれました。

井阪社長らいまの経営陣の再任に賛成した70代の株主は、「もともと多くの食品を抱えるこうしたビジネスが急激に変わることはないので、地道に手を打っていってほしい。株価も緩やかに上がっているので、株主として文句はない」と話していました。

一方、いまの経営陣の再任に反対した70代の株主は、「井阪社長には質問に対してもう少し正確に答えるべきだと感じたので反対で投票した。会社の利益を上げていくには、ファンドの提案は合理的だと思った」と話していました。

また「セブン‐イレブン」のオーナーで、いまの経営陣の再任に反対した60代の株主は「ローソンやファミリーマートが進出してきても、どう対応するかの先が見えない。鈴木敏文名誉顧問がトップだった時は、ちゃんと道を作ってわれわれオーナーが乗って歩いていけるところまで導いてくれた。だけどいまの井阪社長はそういうことが見えてこない」と話していました。