【動画解説】ロシア人などの義勇兵がロシア領内に侵入し攻撃か

ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入して戦闘が起き、死傷者が出ていると発表しました。
ウクライナ政府は関与を否定する一方、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織がSNSでロシア領内に入って戦闘を行っていると主張しています。

国営ロシアテレビによりますと、ロシアのプーチン政権はこの戦闘について、ウクライナ側から侵入した工作員による一般住民に対するテロ行為だとしたうえで、工作員70人以上を殺害し、装甲車などを破壊したと主張しています。

情報は錯そうし、まだはっきりとしないことも多い武装組織。
今回の侵入の目的などを、別府 正一郎 国際記者が解説でお伝えします。

(5月24日BSキャッチ!世界のトップニュースで放送 動画は9分28秒 データ放送ではご覧になれません)

ロシア西部に侵入したとされる武装組織はいったい何者なのか。

今回の侵入に関与したと見られているのは「自由ロシア軍」と「ロシア義勇軍」を名乗る、2つの組織です。
いずれも、メンバーはロシア人などで、ロシアのプーチン政権を批判しています。
また、いずれも、去年、ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた後に、結成されたと言われています。
つまり、”ロシアの反体制派の武装グループ”といえます。
一方で、メンバーの人数は分かりません。
2つの組織の政治的な姿勢には違いもあると言われます。

「自由ロシア軍」について、BBCは「侵攻に反対し、政治的には自分たちを中道派だと位置づけている」と伝えています。一方で、「ロシア義勇軍」については、エコノミストは、「極右の政治思想に傾倒し、ロシアのネオナチ主義者も含まれている」としています。

ウクライナ政府とのつながりです。
組織はウクライナ領内にいて、そこから、国境を越えてロシア領内に侵入したと見られます。
これについて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「状況を注視している」としながらも、「ウクライナとは関係がない」として関与を否定しています。
ただ、フィナンシヤル・タイムズは、「ウクライナの国防省情報総局の当局者が、『当然、一定のコミュニケーションはある』と認めた」と伝えています。とはいえ、この当局者にしても、ウクライナ軍の関与は否定しています。

一方、ロシア政府は、先ほどの国営ロシアテレビであったように、「ウクライナ軍のテロリスト」だと主張しています。
今回の侵入の目的です。

ことし3月にも「ロシア義勇軍」を名乗るグループがロシア西部の別の州に侵入したとして注目され、こうした侵入が取り沙汰されるのは今回が初めてではありません。ただ、今回はそれよりも規模が大きいと見られます

ニューヨーク・タイムズは、ロシアが、ウクライナの戦闘の前線ではなく、国境により多くの兵力を投入せざるを得なくさせる目的や、ロシア国民の間で対立があることを見せる狙いがあるのではないかとするウクライナの元政府高官の分析を伝えています。
一方で、ロシア政府が、「ロシアに戦争が仕掛けられている」というナラティブを主張しやすくなるかもしれません。