全国新酒鑑評会 山形県が金賞数1位に 福島県の10連覇ならず

各地の酒蔵が日本酒のできを競う全国新酒鑑評会の結果が24日発表され、特に優れた金賞に山形県から20点が選ばれ、都道府県別の受賞数で1位となりました。
史上初の10連覇となるか注目されていた福島県は14点で5位でした。

「全国新酒鑑評会」は、広島県東広島市にある独立行政法人酒類総合研究所が日本酒の製造技術と品質の向上のため明治時代から開いている唯一の全国規模の日本酒の鑑評会で、111回目のことしは818点が出品されました。

先月から今月にかけて行われた審査の結果が24日午前10時に発表され、「入賞」に394点が選ばれ、このうち特に優れた「金賞」に218点が選ばれました。

金賞のうち福島県の酒は、去年より3点少ない14点でした。

福島県は、東日本大震災と原発事故が発生した2年後の2013年から、新型コロナウイルスの影響で金賞を決める最終審査が中止された3年前をはさんで、去年まで9回連続で都道府県別の金賞受賞数が日本一となり、今回、史上初の10連覇となるか注目されていました。

しかし、20点の山形県、19点の兵庫県、16点の長野県、15点の新潟県に次いで5位でした。

“日本酒の神様”鈴木賢二さん「来年へ課題を整理」

福島市にある県酒造組合の事務所には全国新酒鑑評会の結果を見届けようと、午前10時の発表を前に大勢の報道関係者が集まりました。

そして、組合の担当者がインターネット上に発表された都道府県別の金賞受賞数を一つ一つ数え上げ、福島県が14点で5位だったとわかると、事務所内には落胆のため息が響いていました。

県内で酒造りの指導に当たってきた“日本酒の神様”こと県酒造組合特別顧問の鈴木賢二さんも厳しい表情を浮かべたうえで、「ことしはコメが硬い年で現場が困惑し、作りが難しかったことが最大の要因ではないか。福島県以外の地域でも酒造りの技術が上がり、福島一強という状況が崩れてきた部分もある。皆さんにこれほど大きな期待をいただいて10連覇できなかったのは残念としかいいようがないが、来年の酒造りに向けて課題を整理していきたい」と話していました。

また、県酒造組合の渡部謙一会長は「これはあくまでコンテストの結果で、福島の酒の質が下がったわけではなく、酒のうまさは変わらないと思います。10連覇を達成できなかったのは残念だが、またあすから気持ちを切り替えておいしい酒づくりにまい進していきたいです」と話していました。

日本一の山形県「技術の高さが認められうれしい」

一方、山形県酒造組合によりますと、山形県の日本一は平成26年以来9年ぶりで3回目です。

県酒造組合の仲野益美会長はNHKの取材に「山形の酒づくりの技術の高さが認められ、うれしいです。国内での販売は新型コロナの影響で苦戦が続いていますが、久しぶりの日本一という明るい話題が需要喚起の弾みになればと思います」とコメントしています。

酒田市の酒蔵経営者「山形の日本酒の魅力を発信していきたい」

出品した酒が、ことしで9回連続して金賞に選ばれた山形県酒田市の酒蔵の経営者は受賞を喜ぶとともに、ほかの酒蔵と切磋琢磨して質を向上させたいと意気込んでいました。

昭和22年に設立された酒田市の酒蔵「酒田酒造」では、出品した大吟醸酒が9回連続で金賞に選ばれました。

蔵によりますと、ことしは原料にした酒米の「山田錦」が固かったため、水分を多めに含ませるなどの工夫をこらしたところ、すっきりとした上品な甘さに仕上がったということです。

佐藤正一社長は「苦労したが、ことしも金賞を受賞できてひときわうれしい。今回の日本一を弾みに山形の日本酒の魅力を全国に発信していきたい」と話していました。

この酒蔵には、県内外のほかの蔵から若手の杜氏などが教えを請いに来ることもあり、「合宿部屋」を設けて、長い人には半年程度かけて酒造りの技術を教えてきたいうことです。

佐藤社長は「『自分の蔵だけよければいい』というやり方だと、日本酒自体が他の酒から遅れをとってしまうことになりかねない。県内外の他の蔵と教え合いながら、日本酒の更なる可能性を探っていきたい」と話していました。