ロシア“ウクライナ工作員侵入し戦闘” 反体制組織との見方も

ロシアのプーチン政権はウクライナと国境を接する西部の州にウクライナ側から工作員が侵入して戦闘が起きたと発表し、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会はテロ事件として捜査を開始しました。イギリス国防省は攻撃はロシアの反体制組織によるものだという見方を示しています。

ウクライナと国境を接するロシア西部、ベルゴロド州の州知事は22日、ウクライナの工作員が州内に侵入し、銃撃や無人機による攻撃を受け、戦闘が起きていると発表しました。

州知事は女性1人が死亡したほか、複数のけが人がいるとしていて、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は23日、テロ事件として捜査を開始しました。

またロシア国防省は23日、「ベルゴロド州にウクライナの民族主義の部隊が侵入したが対テロ作戦によって阻止し、これを打ち負かした。ウクライナの70人以上のテロリストを殺害し、装甲車やトラックを破壊した」と発表しました。

これに対しウクライナ大統領府のポドリャク顧問は22日「ウクライナは関係がない」と関与を否定しています。

一方、ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織はSNSで、ロシア領内に入りベルゴロド州で戦闘を行っていると主張し、軍用車両などの映像を公開しています。

イギリス国防省は23日「ベルゴロド州の国境近くの少なくとも3か所でロシア治安部隊とパルチザン組織が衝突した可能性が高い。ロシア側はいくつかの村で住民を避難させ、追加の部隊を配備した」と指摘し、攻撃はプーチン政権に反発するロシアの反体制組織によるものだという見方を示しました。

そのうえで「ロシアは国境地域で直接攻撃を受け、深刻な安全上の脅威にさらされている」と指摘するとともに、プーチン政権は「戦争の犠牲者」として今回の事案を軍事侵攻の正当化に利用するとみられると分析しています。

ウクライナ軍幹部“義勇兵組織と協力もロシアでの戦闘不参加”

ウクライナ側に立って戦うロシア人などの義勇兵だとする組織がロシア領内に入り、戦闘を行っていると主張していることについて、ウクライナ軍の幹部はNHKの取材に対し、この組織と協力関係にあるとしながらも「ウクライナはロシアの土地を求めてはいない」と述べ、ウクライナ軍は、今回の戦闘には加わっていないと強調しました。

このウクライナ軍の幹部は去年10月、日本に支援を呼びかけるウクライナ議会の議員団の一員としても来日したロマン・コステンコ氏で23日、NHKのオンラインインタビューに応じました。

コステンコ氏は、ロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織が、ロシアのベルゴロド州で戦闘を行っていると主張していることについて、「彼らには彼らの目標がある。ウクライナ軍は彼らと協力関係にあるが、ウクライナはロシアの土地を求めてはいない」と述べ、ウクライナ軍は、今回の戦闘には加わっていないと強調しました。

一方、コステンコ氏は、ウクライナ軍が重視しているのはロシア側への大規模な反転攻勢だとしたうえで、「私はいわゆる反転攻勢を『春から夏にかけての作戦』と呼びたい。私たちはそれなりの量の兵器を蓄えてきた。ただ、ロシア軍の兵器の備蓄はウクライナの何倍もある」と述べ、作戦は短期間では終わらず、継続的な軍事支援が必要になると訴えました。

そのうえで、G7広島サミットにゼレンスキー大統領が対面で参加したことについて、「決定的に重要な出来事だった。インドを含め各国のリーダーが、ウクライナへの支援の必要性を理解していた」と述べ、G7だけでなくインドなど各国に対してウクライナの現状を訴え、理解を得る機会になったと評価しました。