韓国視察団が福島第一原発に 処理水放出に向けた状況など視察

東京電力福島第一原子力発電所でたまる処理水を、基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐって、韓国の専門家で構成する視察団が23日朝から現地を訪れ、処理水の保管状況や放出に向けた設備の工事の状況などを視察しています。

日本政府は、福島第一原発にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、基準を下回る濃度に薄めて海へ放出する方針で、ことし夏ごろまでの放出開始に向けて東京電力が準備を進めています。

この計画をめぐって、21日から日本を訪れていてる韓国の視察団は、原子力安全委員会の幹部や海洋環境の専門家などおよそ20人で構成され、22日は都内で経済産業省や外務省、東京電力などから、計画の進捗(しんちょく)状況などについて説明を受けました。
一行は、23日朝から福島第一原発を訪れていて、24日までの2日間、処理水の保管状況や分析結果、それに放出開始に向けた設備の工事の状況などを確認することにしています。

韓国の国内では、処理水を放出する計画に懸念の声があがっていますが、日本政府はIAEA=国際原子力機関が行う安全性に関する評価に加えて、今回の視察団の受け入れなどを通じて韓国での理解が深まることを期待するとしています。

一方、韓国政府は視察団の派遣の目的について「韓国の海や水産物にどのような影響を及ぼすか徹底的に確認し、必要な措置を直ちに実行していく」としています。

西村経産相「安全性への理解が深まることを期待」

西村経済産業大臣は、23日の閣議のあとの会見で、韓国の視察団が23日と24日の2日間、福島第一原発を訪れて、処理水の保管状況や放出開始に向けた設備の工事の状況などを確認することについて「国際社会に対し、さまざまな機会を通じて科学的根拠に基づき、透明性をもって丁寧に説明している。韓国の専門家による視察においても丁寧に説明し、安全性への理解が深まることを期待している」と述べました。

野村農相「輸入停止の解除も働きかけたい」

野村農林水産大臣は、23日の閣議のあとの会見で「韓国は、福島や宮城など8つの県のすべての水産物の輸入を停止している。今回の視察は処理水の調査が中心だと聞いているが、それに加えて輸入制限の解除についてもお願いしたい」と述べ、政府として水産物などの輸入停止の解除も働きかけたいという考えを示しました。

専門家「韓国と一緒に検証し議論するのがあるべき姿」

韓国の専門家による視察について、処理水の処分方法を検討する国の小委員会のメンバーも務めた福島大学の小山良太 教授は、「政府間の関係も難しい時期が続き、機会がなかったが、情報交換できる事務局レベルの対話が進み、ようやく実現できるようになった。韓国の原子力関係、海洋関係の専門家が原発を視察に来るのは大きな一歩だと思う」と評価しました。

そのうえで、今回の視察をきっかけに韓国側がとっている輸入規制の撤廃など自由な貿易の再開につなげることが重要だとしたうえで、「処理の方法が妥当なのか、安全性を担保できるのかなど、科学的な性質の問題を科学者どうしが、実際にプラントを見て議論することは、もっと早い段階で実現させたかった。IAEAの意見だけで安全だと全部決めつけるのではなく、韓国側と一緒に検証していく姿勢をあえて見せながら、懸念があれば議論していくことがあるべき姿だと思う」と話していました。