マイナンバー公金受取口座を別の人に登録 複数確認 総点検へ

マイナンバーにひも付けて登録する「公金受取口座」について、河野デジタル大臣は誤って別の人のマイナンバーに登録されるトラブルが確認されたことを明らかにしました。トラブルは6つの自治体で11件確認されていてほかにも登録された口座に誤りがないか、総点検を実施することにしています。

これは河野デジタル大臣が23日の閣議のあとの記者会見で明らかにしました。

それによりますと、マイナンバーにひも付けて登録することで国の給付金などを受け取ることができる「公金受取口座」について、誤って別の人のマイナンバーに登録されるトラブルが確認されました。

トラブルは福島市など6つの自治体で11件確認され、いずれも人為的なミスが原因で誤って入金されたケースはないとしています。

これを受けて、デジタル庁は自治体に対してマニュアルを守った手続きの徹底を呼びかけるとともに、ほかにも登録された口座に誤りがないか、総点検を実施することにしています。

各地の自治体の窓口ではマイナンバーカードの取得促進のために行われていた「マイナポイント事業」で、専用サイトを活用した登録を支援しています。

しかし、今回確認されたトラブルではこの専用サイトで登録を済ませた後、ログアウトしないまま、手続きを続けたため別の人のマイナンバーに口座が登録されたということです。

河野デジタル大臣は、「誤ってひもづけられた口座にこれまでに入金はないが、こうしたことが今後起きないよう、デジタル庁と自治体で連携をして取り組んでいきたい」と述べ、再発防止に取り組む考えを示しました。

福島市で4件のトラブル

福島市で、「公金受取口座」の登録に誤って別人のマイナンバーがひも付けられるトラブルが4件起きていたことが先月、発覚しました。

市によりますと、以前、市役所を訪れ、市の担当者のアドバイスを受けながら窓口にあるパソコンでログインした人が、後日、別人の情報がすでに登録されているのに気付いたということです。

連絡を受けた市がデジタル庁に報告したところ、これ以外の3件のトラブルも確認されたということです。

市によりますと、いずれのトラブルも対応にあたった担当者が、直前に利用した人の画面をログアウトせず、次の人の手続きを行ってしまったことが原因だということです。

これらの口座に実際に給付金などが振り込まれることはありませんでした。

福島市は「手続きのミスがあったことを深くおわび申し上げます。ログアウトしたことの確認を徹底するなど再発防止に努めていく」としています。

福島市「混み合った状況が発生する中でミス起きた」

福島市によりますと、「マイナポイント第2弾」の申し込みが始まった去年1月からこれまでに市役所に設けた窓口だけで3万4000人を超える人が訪れていて、多いときには一日に200人以上の手続きや相談に、4つの窓口で対応しているということです。

福島市デジタル推進課の目黒貴裕課長は「混み合った状況が発生する中でミスが起きてしまった。ポイント申し込み期限の9月末にかけて手続きに来る人が増えると予想され、一つ一つ確認作業を行いながら適切にサポートを行っていきたい」と話していました。

福島県いわき市でもトラブル1件確認

福島県いわき市はマイナンバーにひも付けて登録する「公金受取口座」について、誤って別の人のマイナンバーに登録されるトラブルが1件確認されたと発表しました。

いわき市によりますと、先月7日、マイナンバーカードと健康保険証や公金受取口座の情報をひも付けて登録する市の窓口で別人の口座番号がひも付けられるトラブルが1件発生していたということです。

福島市のケースと同様、窓口で対応にあたった担当者が、直前に利用した人の画面をログアウトせず、次の人の手続きを行ってしまったことが原因だということです。

誤って登録された口座に給付金が振り込まれるなどの影響はなかったということで、いわき市は「手続きの手順の徹底を周知し再発防止に努めます」としています。

加藤厚生労働相 マイナ保険証も点検を要請

マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていた問題で、加藤厚生労働大臣は、健康保険の組合に対し、ルールどおりに入力していたか点検し、7月末までに報告するよう要請しました。

マイナンバーカードと一体化した健康保険証について、誤って他人の情報が登録されていたケースが7300件余り確認された問題で加藤厚生労働大臣は23日、再発防止策を公表しました。

それによりますと、主な原因は、健康保険を運営する組合による、加入者情報の入力ミスだったとして、およそ3400ある全国すべての組合に対し、これまでの入力作業でルールを守っていたか点検を要請します。

守っていなかった場合、改めて情報が正しいかどうか、データの照会をかけて確認を行い、7月末までに報告するよう求めています。

また、マイナンバーカードと一体化した健康保険証のシステムを運営している団体に対し、登録情報が正しいかどうか確認を求め、他人の情報が登録されている疑いがある場合、本人に連絡するとしています。

加藤大臣は「メリットを実感して利用してもらうためにも、システムに対する信頼が大変重要だ。信頼を損なうことがないよう、迅速かつ、正確なデータ登録の徹底を求めるとともに、厚生労働省としても対応していきたい」と述べました。

マイナンバーカード ほかにもトラブル

政府がマイナンバーカードの普及に力を入れる中、このほかにもトラブルが相次いで明らかになっています。

デジタル庁によりますと、マイナンバーカードを使い、コンビニで住民票の写しや戸籍証明書などを交付するサービスでは、別人の証明書が発行されるトラブルが、ことし3月以降、横浜市や川崎市、それに東京 足立区や徳島市で合わせて14件起きています。

また、すでに登録を抹消した印鑑登録証明書が誤って発行されるトラブルも、合わせて13件確認されています。

こうしたトラブルを受けてデジタル庁は、システムの運営会社に対して、原因の調査や再発防止のためシステムを一時停止するよう要請したほか、総務省は全国の自治体に対し証明書の自動発行システムの点検を求めています。

さらに、マイナンバーカードと一体化した健康保険証に、誤って他人の情報が登録されていたケースが、7300件余り確認されました。

厚生労働省は、主な原因は、健康保険を運営する組合による、加入者情報の入力ミスだったとして、およそ3400ある全国すべての組合に対し、これまでの入力作業でルールを守っていたか点検を要請するということです。

専門家「普及をあまりに急速に進めた結果」

マイナンバー制度をめぐる相次ぐトラブルについて、内閣府の個人情報保護推進室で専門職をつとめていた中央大学の宮下紘教授に聞きました。

Q.マイナンバー制度は信頼と正確さが不可欠だといえる。トラブルの原因は?

A.「公金受取口座」と「健康保険証」の登録ミスは、いずれも入力段階の人為的なミスで、マイナンバーのシステムそれ自体に欠陥が見つかったわけではない。

マイナンバーカードの普及をあまりに急速に進めた結果、こういった人為的なミスが相次いでいると考えられる。

こういった進め方を、いま1度、見直す機会になるのではないかと思う。

Q.マイナンバーカードを使ってコンビニで住民票の写しや戸籍証明書などを交付するサービスでは別の人のものが発行されるトラブルも起きているが?

A.こちらは、人為的なミスというより、ソフトウエア自体に欠陥があった。

ソフトウエアの改善については、業者にすべて任せていたような印象がある。

第三者的な立場である個人情報保護委員会による定期的な監査や立ち入り検査などを行い、システムのチェックや見直しを継続的に行うことが必要だ。

Q.マイナンバーに登録された自分の情報が正しいのか、不安を感じたらどうすればよいか?

A.マイナンバー制度は、運営する国に大きな責任があるが、利用する国民も登録されている自分の情報を確認することが重要だ。

マイナンバーカードを持っている人は、「マイナポータル」を通じて自分の情報が正確に入力されているかどうか確認できるので、自分自身で自分の情報を守っていくという発想も今後、重要になってくるのではないかと思う。

Q.こうしたトラブルについて、国はどう受け止めるべきか。

A.マイナンバーという制度は、今後のデジタル時代のインフラとしての性格を持っている。

このインフラに対して信頼が損なわれると、今後の情報化、デジタル化のサービス自体にも欠陥が生じてしまう。

いつまでにカード取得者を増やすなど、期限を区切って物事を進めるのではなくて、まずは安心や安全を第一にして進めていくことが重要だ。