岸田首相と韓国ユン大統領 韓国人原爆犠牲者慰霊碑に祈り

岸田総理大臣は21日朝、G7広島サミットに招待している韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領とともに広島市の韓国人原爆犠牲者慰霊碑に祈りをささげました。

岸田総理大臣とユン大統領は21日午前7時半ごろ、広島市の平和公園を訪れ、韓国人原爆犠牲者慰霊碑にそろって献花し、祈りをささげました。

日韓両国の首脳がそろって慰霊碑を訪れたのは初めてです。

慰霊碑は、韓国人被爆者の提唱で1970年に平和公園の対岸に建てられ、1999年に平和公園に移されました。

朝鮮半島から日本に渡り、広島で被爆した人たちの慰霊とともに、原爆の惨禍を繰り返さないとの願いが込められています。

ユン大統領は19日、大統領としてはじめて広島市で在日韓国人の被爆者と面会し、これまでの支援が十分でなかったと陳謝しました。

岸田総理大臣とユン大統領は、このあと会談するのに続き、午後にはアメリカのバイデン大統領も加わって日米韓3か国の首脳会談も行い、北朝鮮による核・ミサイル問題への対応などで連携を確認する見通しです。

韓国大統領府「慰霊碑訪問は両首脳の努力を示すもの」

韓国大統領府のイ・ドウン(李度運)報道官は、日韓両首脳による韓国人原爆犠牲者慰霊碑への訪問について、「両国のつらい過去を直視し、癒やすために、両首脳がともに努力していることを示すものだ」と評価しました。

また韓国大統領府の関係者は、「歴史問題の解決に向けて言葉だけではなく、行動で示したという意味がある。問題の解決には相当、時間がかかるだろうが、両政府ともより未来志向的に、スピード感を持って解決しようという意思がある」と述べました。

韓国人原爆犠牲者とは

広島に原爆が投下された当時、朝鮮半島から渡ってきた数万人が犠牲になったといわれていますが、詳しい人数は現在でも明らかになっていません。

戦後、韓国や北朝鮮に多くの被爆者が戻り、大韓赤十字社によりますと、現在韓国では被爆者健康手帳の交付を受けたおよそ1800人が南部のハプチョン(陜川)などを中心に暮らしているということです。

韓国国内では長年、政府による被爆者への支援が不十分だと指摘が出ていましたが、支援に関する法律が施行されたのは6年前の2017年でした。

また、被爆者の多くが差別などをおそれ、みずからの体験を公にすることを控えてきたこともあり、メディアで大きく取り上げられる機会も少なく、韓国国内で被爆者の実態はあまり知られてきませんでした。

韓国原爆被害者協会のシム・ジンテ(沈鎮泰)さんは「被爆から78年になるのに韓国国内には慰霊碑ひとつない」と述べて、韓国政府のさらなる支援を求めています。