ゼレンスキー大統領 広島到着 サミット出席 岸田首相と会談へ

ウクライナのゼレンスキー大統領は、G7サミットに参加するため、午後3時半ごろ広島空港に到着しました。21日に予定されているウクライナ情勢をテーマにしたセッションに参加するほか、岸田総理大臣との首脳会談も行われる見通しです。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、午後3時半ごろ広島空港に到着しました。

そして出迎えた木原官房副長官らと握手を交わし、空港をあとにしました。

ゼレンスキー大統領は、サミット最終日の21日に予定されているG7首脳とのウクライナ情勢のセッションと、招待8か国の首脳らも加えた平和と安定に関するセッションにゲストとして参加し、意見を交わすほか、岸田総理大臣との首脳会談も行う予定です。

また政府関係者によりますと、広島市の原爆資料館を訪れる方向で調整しているということです。

岸田総理大臣はことし3月、ウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談した際、今回のサミットに、オンラインで参加してもらうことで合意していました。

日本政府によりますと、その後、ゼレンスキー大統領から、対面参加への強い希望が伝えられたことから改めて調整が行われた結果、今回の広島訪問が決まったとしています。

議長を務める岸田総理大臣としては、ロシアへの制裁とウクライナ支援を継続する方針を直接伝えることで、G7との揺るぎない連帯をアピールしたい考えです。

ゼレンスキー大統領 「平和はさらに近づくだろう」と投稿

ゼレンスキー大統領は、20日午後、広島空港に到着した直後、自身のツイッターに「日本。G7。ウクライナのパートナー、そして友人たちとの重要な会議だ。私たちの勝利のため、一層の協力と、安全を。きょう、平和はさらに近づくだろう」と投稿しました。

警察 「予備部隊」投入で警戒強化

ウクライナのゼレンスキー大統領が開催中のG7広島サミットに参加することを受けて、警察は参加国の増加などを想定して準備していた「予備部隊」を投入し、警戒を強化しているということです。

ゼレンスキー大統領が到着した広島空港の周辺には多くの警察官が配置され、厳戒態勢が敷かれました。

直前の午後2時半には、ゼレンスキー大統領がサミットのメイン会場がある広島市内のホテルまで移動することなどに伴い、急きょ高速道路の通行が規制されました。

警察幹部によりますと、ごく一部でゼレンスキー大統領の来日の可能性があることが共有され、警護にあたる警察官の配置の調整などが水面下で進んでいたということです。

G7広島サミットの警備は、全国から派遣される警察官などを含む、最大2万4000人の態勢であたっていますが、警察は参加国の増加などを想定して準備していた「予備部隊」を投入し、ゼレンスキー大統領の周辺警護にあたるなど警戒を強化しているということです。

警察幹部によりますと、サミットなどの国際的なイベントでは急きょ参加国が変わるケースなどが少なくないため、不測の事態に備えてあらかじめ予備的な人員を含めた態勢を組んでいたということです。

警察幹部の1人は、「ウクライナをめぐる情勢を踏まえ、緊張感をもって警備に当たりたい」と話しています。

海外メディアは

ウクライナのゼレンスキー大統領が広島に到着したことについて、海外メディアも速報で伝えています。

このうちアメリカのAP通信は、「世界で最も力のある民主主義国家の首脳たちと会談するために広島に到着した」と速報で伝えました。

その上で「領土奪還のための反転攻勢を準備する中で、各国からのさらなる支援を得ることがウクライナにとって最も重要なことだ」と伝えています。

またイギリスのロイター通信は「核攻撃を受けた最初の都市である広島で開催されたサミットにゼレンスキー氏が出席することは、ロシアの核の脅威に対する各国の懸念を際立たせるものだ」として、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに出席することの意義を伝えています。

各国の記者も関心

G7広島サミットの取材拠点では各国の記者がウクライナのゼレンスキー大統領が広島に到着する様子を伝える映像を食い入るように見ていました。

サミットの取材にあたっているドイツの公共放送の担当者は、「ゼレンスキー大統領の広島訪問は他のG7のどの国の首脳よりも大きなインパクトがある。ゼレンスキー大統領は被爆地である広島に実際に立っていることを最大限に活用して、ロシアに対して核兵器の使用は絶対に許されないというメッセージを送るだろう」と話していました。

インドの国際放送の政治記者は、「ゼレンスキー大統領がサミットに出席するために来日したことは歴史的なできごとだ。彼がG7や招待国に対して何を話すのか、世界中が注目している。ゼレンスキー大統領にとって、ロシアに対する影響力を持つインドのモディ首相との面会が非常に重要だ。彼の来日は、ロシアによるウクライナでの戦争において重要な局面になり得るかもしれない」と話していました。

フランスの経済紙の特派員は、「ゼレンスキー大統領が実際に広島の地を訪れたことは、このサミットに大きな影響をもたらす。これまでロシアに対する制裁と距離を置いてきたブラジルやインドの首脳とどのように接するのか非常に興味深い。彼がサミットに対面で参加することによって、これまでロシアへの制裁を避けてきた首脳たちの中長期的な対応を改めさせるかもしれない」と話していました。

中東 カタールのテレビ局の記者は、「ウクライナが必要としている軍事支援を得るため彼にとってはいいことだと思う。すでに彼はF16戦闘機の供与をめぐってここ広島でゴーサインをもらったところだ。彼はG7各国の首脳以外の、ロシアに対する制裁に貢献していない国のリーダーとも会うだろう」と述べました。

ウクライナのテレビ局記者「多くの可能性広がる」

ウクライナのテレビ局の記者、ドミトロ・アノプチェンコさんは「とても感動的だ。彼が日本に到着し、G7に参加することをうれしく思うし、自分の国を誇りに感じる」と話していました。

その上で「ウクライナは予想されている反転攻勢に備え、さらにロシアに圧力をかけることができるよう財政的また軍事的な支援を求めることになると思う。オンラインの場合と首脳どうし対面で話した場合とを比べることはできないが、ウクライナにとっては多くの可能性が広がることになったと思う」と述べました。

また、アノプチェンコさんは「私の家族はまだウクライナにいて毎朝起きたら彼らの生存を確認するため連絡するのが日課になっている。広島はつらい歴史の一部だが、われわれは当時の日本人と同じ痛みを抱いている」と話していました。

中国は大きく伝えず

中国国営の中央テレビはこれまでのところ、19日まで開催されていた中国と中央アジア5か国の首脳会議について時間を割いて詳しく伝えていますが、G7広島サミットについては大きく伝えていません。

G7広島サミットに関するニュースについては、これまでのところ、ロシアへの制裁強化や、サミットの開催に反対する市民団体の集会などを短く伝えるだけです。

また、中国共産党系の機関紙「人民日報」も、20日付けの一面では、習近平国家主席が中央アジア5か国の首脳らと会談を行っている写真を大きく掲載しています。

一方、G7広島サミットについては紙面の中で取り上げていません。