日経平均株価 バブル景気後の最高値を更新 要因は?

東京株式市場は、19日も買い注文が広がり日経平均株価は終値としても32年9か月ぶりの高値、いわゆる「バブル景気」の後の最高値を更新しました。

▼日経平均株価、19日の終値は前日より、234円42銭、高い、3万808円35銭と、いわゆる「バブル景気」の時期の1990年8月以来32年9か月ぶりの高値をつけました。

▼東証株価指数・トピックスは、3.84、上がって、2161.69と、1990年8月以来32年9か月ぶりの水準をつけました。

▼1日の出来高は12億7383万株でした。

ことしに入り株価はどう動いた?

ことし日経平均株価は2万5700円あまりの水準でスタートし、その後、上昇傾向が続きました。

国内の経済活動の正常化に加え、アメリカの利上げが加速するという懸念が後退したこと。

日銀総裁に就任する前に植田和男氏が国会などで金融緩和を継続する姿勢を示したことで投資家の間に安心感が広がり、日経平均株価は3月6日に終値で2万8000円台を回復しました。

しかし、3月中旬にアメリカで銀行の破綻が相次いだことに加え、スイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」の経営危機をきっかけに金融不安が広がり、株価はいったん2万6000円台まで下落しました。

ただ、海外の投資家を中心に利上げを続ける欧米に比べて日本は景気が底堅いという見方が広がりました。

また東京証券取引所が市場の評価が低い企業に対して株価上昇につながる具体策を示すよう求めたことなどから、4月18日、日経平均株価は8営業日連続で値上がりして2万8600円台に上昇。

終値として3月につけた高値を更新しました。

そして、4月28日に、日銀が植田総裁のもとで初めてとなる金融政策決定会合で金融緩和策の維持を決めたことも追い風となりました。

5月になって企業の決算発表が本格化すると業績が好調な企業を中心に買い注文が集まる展開となり、17日に日経平均株価は、おととしの9月以来、1年8か月ぶりに3万円台を回復。

そして19日に、一時、「バブル景気」の時期の1990年8月以来32年9か月ぶりの高値をつけました。

1990年のバブル景気とは

平成2年・1990年は東西に分断されていたドイツが統一され、イラクがクウェートに侵攻するなど、国際情勢が大きく動きました。

日本は、「バブル景気」が崩壊に向かって歩み始めた1年でした。

前年・1989年の年末に終値で3万8915円87銭の史上最高値を記録した日経平均株価は、1990年の年明けから値下がりを続け、この年の年末には2万3848円まで急落しました。

「財テク」ブームのもと地価の高騰が続いていたことを受け、この年、当時の大蔵省は地価高騰への対策として不動産融資の総量規制を実施。

日銀も利上げを続けました。

その結果、翌1991年になって地価は下落に転じ、日本経済は急速に冷え込んでいきました。

大きく膨らんだ泡はいずれ消えるのではないかと国民の多くが感じ始め、「バブル経済」ということばが流行語になったのもこの年でした。

【株高の要因1】原動力は海外の投資家

いま進んでいる株高の原動力は海外の投資家です。

欧米の金融引き締めで景気の減速が懸念される一方で、日本は新型コロナからの経済活動の再開やインバウンドの回復などで、まだ先行きが期待できると見る投資家が増えているからです。

3月下旬以降、海外の投資家が株式を買った金額は7週連続で、売った金額を上回る「買い越し」となっています。

東京証券取引所によりますと東証と名古屋証券取引所では4月は、2兆1510億円あまり上回る大幅な「買い越し」となりました。

海外の投資家の買い越し額が月間で2兆円を超えるのは2017年10月以来です。

5月の2週目も海外の投資家は5658億円あまりの買い越しでした。

3月最終週からの買い越し額をあわせると2兆8842億円あまりとなり、
「日本株を持たないことが今はリスクだ」との声も聞かれます。

日本企業の業績が全体的に堅調で先行きへの期待感が高まっていることに加え、欧米の利上げによる海外経済の減速を懸念して東京市場に資金を振り向ける海外投資家が増えていることが背景です。

市場関係者は、「外国為替市場で円安ドル高が進み、海外投資家が買いやすい状況が続いていることも追い風となっている」と話しています。

世界で際立つ日本株の上昇

今年度に入ってからの日本の株価の上昇率は世界の中で際立っています。

日経平均株価のことし3月31日の終値と5月18日の終値を比べると上昇率は9%になります。

世界の主要な証券取引所の代表的な株価指数の中で、最も高くなっています。

▼日経平均株価に次いで高いのがブラジルの主要株価指数、ボベスパで8%、▼IT関連銘柄の多いアメリカのナスダックとインドの代表的な株価指数、センセックスがいずれも4%、▼ドイツの主要な株価指数ダックスは3%の上昇率となっています。

【株高の要因2】堅調な企業業績

経済活動の正常化や円安の効果で業績を伸ばす企業が相次いだことが株価上昇の要因となっています。

SMBC日興証券が旧東証1部上場企業を中心に18日までに発表をすませた全体の99.2%にあたる1423社の昨年度の決算を分析したところ、54%にあたる769社が最終的な利益を前の年度よりも増やし増益となりました。

経済活動がコロナ禍から正常化し「空運」や「陸運」などの業績が改善しました。

また資源価格の上昇や円安の効果などで業績が押し上げられた商社を中心とした「卸売」などの株式が買われ、株価が上昇しました。

業種別にみると・・・

業種別に株価をみると今年度に入ってからはほぼすべての業種で上昇しています。

東京証券取引所は東証株価指数・トピックスに採用されている企業を33の業種に分類し、それぞれの業種の株価指数を算出しています。

それによりますとことし3月31日の終値と18日の終値を比べると今年度に入ってからは、全体の90%にあたる30の業種で株価指数は上昇しています。

このうち、アメリカで銀行の経営破綻が相次ぐなど、3月に急速に広がった欧米の金融不安がいくぶん後退したことを受けて、「保険業」は12%、「銀行業」は10%、それぞれ上昇しています。

また、アメリカの著名な投資家のウォーレン・バフェット氏が来日し、日本の総合商社の株式に積極的に投資する姿勢を示したことを受け、商社を中心とした「卸売業」も11%上昇しています。

さらに、日本のコロナ禍からの経済活動の本格的な再開への期待から、鉄道などの「陸運業」は13%、デパートなどの「小売業」も10%の上昇となっています。

【株高の要因3】企業改革への期待

東京証券取引所が市場での評価が低い企業に改善を促したことで企業の改革への期待が高まっていることも株価を押し上げる要因として指摘されています。

東京株式市場では、1株あたりの純資産に対して株価が何倍かを表すPBR=株価純資産倍率と呼ばれる指標が1倍を下回る企業が多く、市場での評価が低いことが課題となっています。

東証は、ことし1月、市場の評価が低い企業に改善を求める方針を明らかにし、3月下旬には上場企業に対応するよう通知しました。

こうした中、大日本印刷はPBR1倍超えを目標に掲げ、3月にあわせて3000億円の自社株買いなどを発表すると、株価は上昇し、PBRが一時、1倍を上回りました。

岡三証券グループも3月にPBRが1倍を超えるまで年間10億円以上の自社株買いを実施することを明らかにし、発表の翌営業日には株価がストップ高となりました。

家電量販店大手のケーズホールディングスも5月10日、1倍割れが続くPBRの改善を図るため、株主還元の強化を明らかにし、翌日の株価は大きく上昇してことしの最高値をつけました。

市場関係者は「市場では低PBRの銘柄への注目がかつてないほど高まっている。ただ、自社株買いだけでなく、成長のための取り組みも重要だ」と話しています。

【株高の要因4】活発な「自社株買い」

企業が株主への還元策としていわゆる「自社株買い」などを活発に行っていることも株価上昇の要因です。

企業がみずから会社の株式を買う、いわゆる自社株買いをすると企業がすでに発行した株式の総数が減り、1株あたりの価値が高くなるため投資家からは株主還元策の1つとして考えられています。

年度の決算発表が集中する5月は自社株買いの発表も増え、東海東京調査センターによりますと、今月に入ってから17日までにあわせて3兆900億円の自社株買いが発表されたということです。

5月中に発表された自社株買いの総額は去年の3兆1000億円がこれまでで最も多く、ことしはすでにこの水準に迫っています。

東証は、ことし1月、市場での評価が低い企業に改善を求める方針を明らかにし、3月下旬には上場企業に対応するよう通知しました。

これも自社株買いを後押ししていると見られます。

市場関係者は「5月の自社株買いの総額は過去最高を更新するペースだが、企業価値を高めるために企業がどのような対応をとるか注目されている」と話しています。