G7首脳と1人で面会 “長い間の葛藤 追体験してください”

G7首脳と1人で面会 “長い間の葛藤 追体験してください”
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G7広島サミットの初日、各国の首脳は広島市の平和公園を訪れ、原爆資料館を視察しました。そこで面会したのは、ひとりの被爆者でした。
G7の首脳がそろって原爆資料館を訪問したのは、きょうが初めてです。資料館の中での様子は非公開となりましたが、外務省によりますと、岸田総理大臣が展示の内容を説明し、各国の首脳は広島市在住の被爆者、小倉桂子さんと対話したということです。

小倉さんは85歳。8歳の時、爆心地から2.4キロ離れた自宅近くで被爆しました。原爆資料館の館長を務めた夫・馨さんの遺志を継ごうと、通訳者のグループを立ち上げ、平和公園を訪れる外国人向けのガイドなどの活動を行うとともに、みずからの被爆体験を英語で世界に向けて発信してきました。

外務省によりますと、各国首脳と面会した被爆者は小倉さん1人だったということです。

G7首脳の様子は

「みなさんが入ってこられたら、思わず『Welcome to Hiroshima』と言いました」

小倉さんは、各国の首脳に対して被爆体験を英語で証言しました。

「海外から来た人は原爆投下の瞬間について知りたいと思い、ぴかっと光ったとき、真っ白で何もみえない、爆風で立ってられず、地面にたたきつけられたということを伝えました。そのとき見たもの、心で感じたことをそのまま語りました」

話を聞いた各国首脳の様子については。
「興味を持って聞いてもらい、かなり長く話をさせてもらいました。内容は言えませんが、質問もたくさんしてもらいました」

“広島から一歩を 生きているあいだに”

そのうえで小倉さんは、次のように話しています。

「長い間感じてきた被爆者の心の中の葛藤、そして目に見えない傷、トラウマとか悲しみとか人に言えない秘密とか、私の目を心を通して追体験してくださいと申し上げました。

次に進むためにはどうすることができるのか十分討議をしていただいて、外交の力でできるだけ早く戦争をやめてほしい。広島から一歩を踏み出す宣言を世界にぜひともお願いしたいと思います。少なくとも被爆者が生きているあいだに」
動画は去年9月、アメリカの大学で講演した、小倉さんの被爆体験です。

平和公園訪問 テレビで見守った被爆者は…

G7各国首脳が平和公園を訪問する様子を、テレビなどで見守った広島の被爆者の人たちに、受け止めを聞きました。

“原爆の惨状 以前より響いてるのではないか”

6歳の時に爆心地からおよそ2.3キロの地点で被爆した田中稔子さん、84歳です。原爆によって親族や多くの同級生を亡くし、心に深い傷を負って60年以上にわたって被爆体験を話すことができませんでした。

しかし、国際交流で南米を訪れた際に現地の人から「あなたには被爆の経験を話す責任がある」と言われて考えが変わり、70歳になってから証言活動を始めました。70代後半から学び始めたという英語で、通訳を介さずに講演を行っています。

きょうは、G7各国の首脳が平和公園を訪れた様子をテレビで視聴しました。
田中さんは、アメリカのバイデン大統領が原爆資料館から出てきた時の表情について「随分深刻な、痛ましい顔をしていたので、バイデン大統領の心には、原爆の惨状が以前より響いてるのではないかと感じました」と話していました。

そして「被爆者の話は原爆を目の前で見た人の話です。首脳たちにはその話を心に政治をしてほしい。世界から核兵器をなくす方向に動かしてほしい」と話しています。

“サミットの最後には核兵器廃絶の宣言を”

14歳の時に爆心地からおよそ1.5キロの地点で被爆し、顔や体に大やけどを負った森下弘さんです。

森下さんは「ウクライナへの軍事侵攻が起こったり、核廃絶への議論が停滞したりする中、資料館の展示を見ることでこの悲惨な出来事は広島と長崎であっただけでなく今後、自分たちにも起こりうることだと考えて欲しい」と話していました。

その上で「サミットの最後には核兵器の廃絶を宣言して、世界中に核兵器に対する姿勢をアピールしてほしい」と話していました。

“視察の時間 短いのではないか”

広島県被団協の箕牧智之 理事長は、G7各国の首脳が平和公園を訪れた様子をテレビで視聴しました。

箕牧さんは、各国首脳の原爆資料館の視察がおよそ40分だったことについて「時間が短いのではないか。この時間でたくさんのものを見られるわけがないし、惨状が分かったという所まではいかないのではないか」と話しています。

その上で、「記帳をしたり被爆者の証言を含めてどれが何分だったか詳細なことを知りたい。何をどれくらい、どんな気持ちで見たか感想を聞きたい」と話していました。

“非常に意義深いが、開かれた形で見学があれば”

ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの国際運営委員を務める川崎哲さんです。「非常に意義深いことだと思う。展示は凄惨なものも多いが目をそらさず一つ一つ見ていただきたい」と述べました。

一方で、資料館内の訪問の様子が公開されないことについては、「開かれた形で見学があれば、なおよかった」とした上で、「首脳の到着までにも時間がかかっているので、時間をむだにせず、たくさんの展示をしっかり見てもらいたい」と話していました。

ゼレンスキー大統領のサミット出席について

ウクライナ政府の高官が、ゼレンスキー大統領が来日しG7広島サミットに対面で出席することを明らかにしたことについて、受け止めを聞きました。
広島県被団協の箕牧智之 理事長
「私たちとしては歓迎したい。ただ、今回の訪問でG7とロシアとの関係が悪化しないか心配しています」

森下弘さん
「ゼレンスキー大統領の思いや状況を直接、みんなが聞くことができるのは大切なことだと思う。ウクライナへの軍事侵攻をやめ、核兵器の廃絶に向けた歩みを進められる可能性があると思います」

田中稔子さん
「戦争を終わらせる方向に進めるのが広島の役割。戦争を有利に進めるための兵器について広島で話すとしたら、容認できません。戦争を回避するような方向転換ができるといいと思います」
世界には、まだこれだけの核弾頭があります。動画でまとめました。