「家と学校以外の居場所がほしい」こども家庭庁が指針策定へ
「家では幼いきょうだいたちの世話をしなくてはならず、落ち着かない」
「学校では場の空気を読んでしまい、個性を出しにくい」
子どもたちをめぐる問題が複雑化する中、学校や家庭以外で、いつでも安心して過ごせる場所をつくる必要があるとして、こども家庭庁は検討会での議論を始めました。
「家と学校以外のこどもの居場所」、どんな場所なのでしょうか。
中学生や高校生が集まる「交流スペース」
「こどもの居場所」をつくろうと、積極的に取り組んでいる自治体があります。

東京 文京区では、中学生や高校生を対象にした交流スペース「b-lab(ビーラボ)」を8年前に設置、年間延べ2万5000人が利用しています。
中には、談話スペースのほか、運動できるホールや楽器の練習ができるスペースなどが整備、ここで勉強したり、ゲームをして遊んだりと、自由に過ごせます。
利用時間は、午前9時から午後9時まで。
年末年始を除いて毎日利用できます。
フロアには、スタッフのほかにボランティアの大学生などもいて、中学生や高校生が1人で来ても居心地良く過ごせるよう、さりげなく声をかけています。
中には、談話スペースのほか、運動できるホールや楽器の練習ができるスペースなどが整備、ここで勉強したり、ゲームをして遊んだりと、自由に過ごせます。
利用時間は、午前9時から午後9時まで。
年末年始を除いて毎日利用できます。
フロアには、スタッフのほかにボランティアの大学生などもいて、中学生や高校生が1人で来ても居心地良く過ごせるよう、さりげなく声をかけています。

中には発達の特性や不登校など、学校や家庭で息苦しさを感じている生徒もいるということですが、スタッフはあえて聞き出すことはしません。
会話の中から、やりたいことや、新たな関心や興味のきっかけをつかんでいくようにしているということです。
会話の中から、やりたいことや、新たな関心や興味のきっかけをつかんでいくようにしているということです。
ただ利用するだけでなく…

利用するだけではなく、みずからスタッフとして運営に関わる生徒もいます。
ミーティングの際には企画したイベントの報告や、館内の掲示物のアイデアを出し合うなど主体的に活動しています。
ミーティングの際には企画したイベントの報告や、館内の掲示物のアイデアを出し合うなど主体的に活動しています。

その1人、高校2年の「けいしん君」は、ほとんど毎日ここに来ています。
学校では、場の空気を読んでしまい自分の個性を出しにくく、「自分は引っ込み思案な方だ」と感じています。
ここではスタッフと話したり、趣味の音楽を作ったり、出会った仲間とゲームをして過ごしたり。
(けいしん君)
「みんながフレンドリーで居心地が良く、好きなことができるし、友達も増やせる。学校から帰ってきて、疲れを癒やせる環境だと思います」
学校では、場の空気を読んでしまい自分の個性を出しにくく、「自分は引っ込み思案な方だ」と感じています。
ここではスタッフと話したり、趣味の音楽を作ったり、出会った仲間とゲームをして過ごしたり。
(けいしん君)
「みんながフレンドリーで居心地が良く、好きなことができるし、友達も増やせる。学校から帰ってきて、疲れを癒やせる環境だと思います」
学校以外の “逃げ場” に
「学校では、受験勉強のストレスなどで人間関係が難しく、生きにくさを感じる」と話していたのは、高校2年の「りのさん」。

(りのさん)
「学校だと人間関係があったりして、関係崩れたとか、学校行きたくないなって思う時があるじゃないですか。そういう時の“逃げ場”っていうか、別の環境があるよっていうの心がやわらぐ。心のよりどころになるっていうか、逃げ場があるだけで生きれるかなって」
そのうえで。
「学校だと自分と同じ感じの人が多くなるけど、ここで活動してみんなとふれあうと、ほかの人の価値観も違っている。価値観が違う人と話してああこういう発見もあるんだっていうので自分の視野を広げる面でもいいかなって思います」
「学校だと人間関係があったりして、関係崩れたとか、学校行きたくないなって思う時があるじゃないですか。そういう時の“逃げ場”っていうか、別の環境があるよっていうの心がやわらぐ。心のよりどころになるっていうか、逃げ場があるだけで生きれるかなって」
そのうえで。
「学校だと自分と同じ感じの人が多くなるけど、ここで活動してみんなとふれあうと、ほかの人の価値観も違っている。価値観が違う人と話してああこういう発見もあるんだっていうので自分の視野を広げる面でもいいかなって思います」

また高校1年の「めいめいさん」は、ここに来て「『居場所を見つけた』と思いました」と話していました。
(めいめいさん)
「家では毎日、幼いきょうだいの世話をしなければならなくて落ち着かないけれど、ここではスタッフの人に話を聞いてもらえて息抜きができる。自分の好きなことも見つけて、イベントを企画しても否定されない。ここと出会ってなかったら、毎日疲れていたと思います」
(めいめいさん)
「家では毎日、幼いきょうだいの世話をしなければならなくて落ち着かないけれど、ここではスタッフの人に話を聞いてもらえて息抜きができる。自分の好きなことも見つけて、イベントを企画しても否定されない。ここと出会ってなかったら、毎日疲れていたと思います」
“居場所があれば 子どもの可能性が広がる”
文京区青少年プラザ「b-lab」の米田瑠美館長は、「こどもの居場所」の必要性について次のように話しています。

「思春期まっただ中の中高生は、心も揺らぎやすく、葛藤も多いうえに、先の未来が見えない将来の不安も抱えています。一方で、昔のように見守ってくれる近所のお兄さん、お姉さんのような存在もなく、自分に目を向けてくれる居場所を意図的に作る必要があると感じています。安心できる居場所があれば、本当に好きなことややってみたいことを発見し、自己表現する可能性を持っていると思います。今後、国が政策として取り組むことで、多様な居場所が広がってほしいです」
「居場所」を望む声 中高生以上の世代で高く
こども家庭庁が昨年度、子どもや若者2036人を対象に行ったアンケート調査では、特に中高生以上の世代で「家や学校以外の居場所がほしい」にもかかわらず、そうした居場所が「ない」と回答する割合が高くなっています。
アンケートで、「家や学校以外に『ここに居たい』と感じる居場所がほしい」と答えた人のうち、そうした居場所が「ある」と答えた人と、「ない」と答えた人を見ると…。
アンケートで、「家や学校以外に『ここに居たい』と感じる居場所がほしい」と答えた人のうち、そうした居場所が「ある」と答えた人と、「ない」と答えた人を見ると…。

▽9歳まで 「ある」 80.7%「ない」 19.3%
▽10~12歳 「ある」 81.7% 「ない」 18.3%
▽13~15歳 「ある」 73.3% 「ない」 26.7%
▽16~18歳 「ある」 73.1% 「ない」 26.9%
年齢が上がるほど「ない」と答えた人の割合が高くなっています。
また居場所がないと答えた人に、どのような場所なら行ってみたいか複数回答で尋ねたところ、
▽10~12歳 「ある」 81.7% 「ない」 18.3%
▽13~15歳 「ある」 73.3% 「ない」 26.7%
▽16~18歳 「ある」 73.1% 「ない」 26.9%
年齢が上がるほど「ない」と答えた人の割合が高くなっています。
また居場所がないと答えた人に、どのような場所なら行ってみたいか複数回答で尋ねたところ、

▽15歳以下では、
「いつでも行きたい時にいける」
「好きなことをして自由に過ごせる」と回答した割合が
50%前後と高い傾向にあり、
▽16歳以上では、
その2つに加えて、
「1人で過ごせたり、何もせずのんびりできる」という回答の割合も
約57%から64%と高くなりました。
「いつでも行きたい時にいける」
「好きなことをして自由に過ごせる」と回答した割合が
50%前後と高い傾向にあり、
▽16歳以上では、
その2つに加えて、
「1人で過ごせたり、何もせずのんびりできる」という回答の割合も
約57%から64%と高くなりました。
「こどもの居場所」づくりの指針 国も検討開始
学校や家庭以外に、安心して過ごせる「こどもの居場所」について、こども家庭庁は17日、有識者による検討会での議論を始めました。
年内にも、居場所づくりについての指針を策定する方針です。
年内にも、居場所づくりについての指針を策定する方針です。

「こどもの居場所」づくりは、4月に発足したこども家庭庁が掲げる政策の柱のひとつです。
子どもたちが地域のコミュニティの中で育つことが難しくなっているほか、虐待やいじめ、不登校、自殺の増加などの課題が複雑化する中で、子どもや若者が学校や家庭以外に安心して過ごせる場所を作る必要があるとしています。
17日に始まった有識者の会議では「自治体間で連携し、住む場所に関わらず居場所を利用できることが大切だ」といった意見や「オンラインゲームやSNSなど、これまで想定されていなかったものが居場所として機能していることも念頭に置いて議論すべきだ」といった意見が出されました。
こども家庭庁は、今年度、自治体を対象に公募を行い、モデル事業を始めるとともに、子ども・若者から意見を聴いたり先行事例を調査するなどしたうえで、「こども居場所」づくりの整備の方向性などを定める基本指針を、年内にも策定することにしています。
子どもたちが地域のコミュニティの中で育つことが難しくなっているほか、虐待やいじめ、不登校、自殺の増加などの課題が複雑化する中で、子どもや若者が学校や家庭以外に安心して過ごせる場所を作る必要があるとしています。
17日に始まった有識者の会議では「自治体間で連携し、住む場所に関わらず居場所を利用できることが大切だ」といった意見や「オンラインゲームやSNSなど、これまで想定されていなかったものが居場所として機能していることも念頭に置いて議論すべきだ」といった意見が出されました。
こども家庭庁は、今年度、自治体を対象に公募を行い、モデル事業を始めるとともに、子ども・若者から意見を聴いたり先行事例を調査するなどしたうえで、「こども居場所」づくりの整備の方向性などを定める基本指針を、年内にも策定することにしています。
専門家「子どもたちが安心して過ごせる環境整備を」
「こどもの居場所」づくりについての国の検討会の委員で、文教大学の青山鉄兵准教授に聞きました。

(青山准教授)
「地域のつながりが希薄になり、家と学校以外のコミュニティーがないという子どもがとても多い。そのため、そこでうまくいかなくなってしまうと行き場がなくなり、生きづらさにつながってしまう状況がある。さらにコロナ禍で感染対策などを優先せざるをえず、ゆとりのある自由にできる空間というのは縮小する時期が長かったので、子どもたちがホッと安心できる場所を、改めて意図的に整えていく必要がある」
国がこどもの居場所づくりに取り組む意義について。
「こどもの居場所は、教育・福祉・地域の問題などさまざまな問題が複合的に入っている問題なので、縦割りにせず国全体で取り組んでいくことが重要になる。国レベルで居場所の検討や取り組みを進めることで、これまであまり関心のなかった人たちや、取り組みが進んでいない自治体も居場所づくりに関心を持ち、具体的な取り組みにつながるきっかけになればと思います」
そのうえで、次のように指摘しました。
「居場所づくりでは、単に『場所』を用意するだけでなく、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが不可欠です。子どもや若者の声を聞きながらいろいろなニーズや課題を抱えた子どもなど、すべての子どもが安心できる居場所を作っていくことが大切だと思います」
「地域のつながりが希薄になり、家と学校以外のコミュニティーがないという子どもがとても多い。そのため、そこでうまくいかなくなってしまうと行き場がなくなり、生きづらさにつながってしまう状況がある。さらにコロナ禍で感染対策などを優先せざるをえず、ゆとりのある自由にできる空間というのは縮小する時期が長かったので、子どもたちがホッと安心できる場所を、改めて意図的に整えていく必要がある」
国がこどもの居場所づくりに取り組む意義について。
「こどもの居場所は、教育・福祉・地域の問題などさまざまな問題が複合的に入っている問題なので、縦割りにせず国全体で取り組んでいくことが重要になる。国レベルで居場所の検討や取り組みを進めることで、これまであまり関心のなかった人たちや、取り組みが進んでいない自治体も居場所づくりに関心を持ち、具体的な取り組みにつながるきっかけになればと思います」
そのうえで、次のように指摘しました。
「居場所づくりでは、単に『場所』を用意するだけでなく、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることが不可欠です。子どもや若者の声を聞きながらいろいろなニーズや課題を抱えた子どもなど、すべての子どもが安心できる居場所を作っていくことが大切だと思います」
