岐阜 ことし初の猛暑日 熱中症のリスクを減らす「暑熱順化」を

17日は全国的に晴れて気温が上がり、岐阜県では全国でことし初めてとなる35度以上の猛暑日となりました。18日も関東で猛烈な暑さとなるほか、東日本や北日本を中心に厳しい暑さが続く見込みです。

熱中症への対策のためこまめな水分補給などのほか、軽く汗をかく運動や入浴などを習慣化し「暑熱順化」を進めることが大切です。

気象庁によりますと、日本列島は17日も高気圧に覆われて晴れ、広い範囲で夏のような厳しい暑さとなりました。

岐阜県揖斐川町では、午後3時前に気温が35.1度に達し、全国でことし初めて猛暑日となりました。

5月中旬に35度以上となったのは1993年以来、30年ぶりです。

このほか、日中の最高気温は
▽群馬県神流町と山梨県甲州市勝沼で34.8度、
▽埼玉県秩父市で34.6度、
▽三重県松阪市飯南で34.5度などとなったほか、
▽東京の都心でも31.6度と、
初めて真夏日となりました。

気象庁によりますと、17日午後5時現在、全国の観測点のおよそ3割にあたる297地点で30度以上の真夏日となるなど、北海道から九州にかけての広い範囲でことし1番の暑さとなりました。

18日も厳しい暑さ続く見込み

18日は九州や沖縄・奄美などでは低気圧や前線の影響で雨が降りますが、そのほかの地域は高気圧に覆われて晴れると予想されています。
特に東日本や北日本の太平洋側を中心に山を越えた風が吹き下ろす際に乾燥して気温が上昇する「フェーン現象」の影響で厳しい暑さが続く見込みです。

18日、日中の最高気温は
▽山形市や福島市、前橋市、埼玉県秩父市で35度と猛烈な暑さとなるほか、
▽甲府市と茨城県土浦市で34度、
▽長野市や宇都宮市、宮城県白石市、岩手県一関市で33度、
▽東京の都心で32度などと、
予想されています。

体が暑さに慣れていないこの時期に気温の高い日が続いていて、熱中症の疑いで病院に搬送されるケースが相次いでいます。

こまめに水分補給をしたり屋外での作業や運動などの際には休憩を十分に取ったりするほか、室温が28度以下になるようエアコンを適切に使用するなど、引き続き熱中症への対策を心がけてください。

熱中症のリスクを減らす「暑熱順化」を

17日は急な暑さとなりましたがこれからさらに暑くなる季節に向けて必要となるのが「暑熱順化」で、「体を暑さに慣れさせる」ことです。

本格的な夏を前に、軽く汗をかく運動や入浴などを習慣化し「暑熱順化」を進めることで熱中症のリスクを減らせるため、そのポイントを知って対策を行うことが大切です。

「暑熱順化」の方法や目安は

日本気象協会は熱中症になる人を減らすため専門家の監修で「暑熱順化」の詳しいポイントなどをまとめています。
体が暑さに慣れる「暑熱順化」は気温の高い日が続くと自然に進みますが、ここ数日のように涼しい日が続いたあとに急に暑くなるときはまだ進んでいないため、意識的に行う必要があるということです。
具体的な暑熱順化の方法や目安は
▽ウォーキングは30分、
▽ジョギングは15分で、
頻度は週に5日程度が望ましいとしています。

ひと駅分歩くことやできるだけ階段を使うなど、意識して少し汗をかくことが大切です。

▽通勤や買い物など日常で取り入れやすいのがサイクリングで、1回30分、週3回程度が望ましいということです。

ほかにも、
▽屋内で行う軽いストレッチは1日30分を週に5日から毎日だとしています。

いずれも、体が汗ばむ程度の無理ない範囲で実施することが大切なほか、17日のような厳しい暑さとなった日には行わないなど時間帯やそのときの環境に注意して行う必要があるということです。

入浴については、シャワーだけでなく湯舟につかって適度に汗をかくことが大切だとしています。
また、地域ごとに暑熱順化を始める時期の目安にしてもらうため、「暑熱順化前線」を独自に算出していて、ことし、東京や名古屋、それに大阪では「5月中旬」を開始の目安としています。

消防の現場でも

「暑熱順化」を業務で取り入れているのが、真夏でも火災現場などに駆けつけ、重装備で活動しなければならない消防隊員たちです。

群馬県前橋市の消防局は毎年この時期、隊員たちの「暑熱順化」の機能を高めるための訓練を週に1度を目安に行っています。

17日は市内の消防署で、実際の訓練と同じ実演をしてもらいました。

隊員たちは、防火服やヘルメット、手袋を身につけボンベを担ぐ、実際の活動のときと同じ装備で訓練に臨みます。

装備の重さは20キロにものぼるということです。
まず、5階建ての建物で火災が発生し複数の人が逃げ遅れた想定の訓練が行われ、およそ20分にわたってホースでの放水をしたり、はしごをのぼって人を模した人形をベランダから救出したりしていました。

このあと、隊員たちは運動靴に履きかえ、ボンベを背負った重装備のまま、敷地内を20分ほどランニングします。
訓練で熱中症にならないよう、途中、水分補給などは行います。

隊員たちは暑さで時折、険しい表情をみせ、したたり落ちるような汗をかいていました。

訓練に参加した30代の男性隊員は、「結構汗をかきました。夏本番に向けてしっかり体を慣らすよう意識しています」と話していました。

前橋市消防局は隊員の熱中症のリスクを減らすため、10年ほど前から暑さが本格化する前に「暑熱順化」の訓練を始めていますが、近年は暑くなり始める時期が早くなり、ことしは4月中旬から訓練を行っているということです。

ラクビーの動きで「暑熱順化」を 埼玉 熊谷

猛暑で知られる埼玉県熊谷市では、ラグビーの動きを取り入れた運動を制作し、「暑熱順化」を呼びかけています。

この運動は、熱中症の危険が高まる前に身体を動かして「暑熱順化」を進めてもらおうと熊谷市が企画し、地元のラグビーチーム、「埼玉パナソニックワイルドナイツ」の元選手が作りました。

ラグビーとエクササイズをかけて「熊谷ラグササイズ」と名付けられ、フォワード編とバックス編の2つのバージョンがあります。
市のホームページなどで、それぞれ10分ほどの動画が公開されています。それぞれ6種類の運動が設定されていて、ラグビーで実際に行う動きに近い動作で体を動かします。

例えば、
▽ボールを横に投げるような動作で両手を動かす運動や
▽味方選手を上に持ち上げるような動作をする運動、
▽相手にタックルするような動作で体と足を前に出す運動などです。

また、
▽四つんばいになったあとスクラムの時のように膝を少し浮かすような運動もあります。
NHKの荒木さくらアナウンサーも市の職員に指導を受けながら体験しましたが、10分余りの運動で、じわりと汗をかいたほか、途中、「きつい」などと話していました。

一方、市は、この運動中もこまめな水分補給をし、室内で行う場合は換気することや体調に変化が合った場合には運動を中止するよう呼びかけています。

日本気象協会「まさに今の時期から暑熱順化が必要」

日本気象協会の泉澤里帆さんは「まさに今の時期から暑熱順化が必要なタイミングとなっている。暑熱順化には個人差があるが2週間ほどかかると言われているため、今の時期から暑さに慣れるための運動や軽めのストレッチ、入浴を始めて徐々に暑さに体をならしていくことが大切だ」と話しています。

一方、体が暑さに慣れても気温の変化などで戻ってしまうこともあるということで、「一度運動や入浴で暑熱順化が進んでも気を抜かず、引き続き、熱中症に注意してほしい」と話していました。