【解説】ゼレンスキー大統領 “戦闘機連合” 結成を呼びかけ

イタリア、ドイツ、フランス、イギリスの4か国を相次いで訪問したウクライナのゼレンスキー大統領。ロシアへの反転攻勢に向けて各国から新たな軍事支援を取り付けた一方、改めて求めたのが、F16戦闘機などの戦闘機の供与です。

望月麻美キャスターの解説です。

(5月16日の「キャッチ!世界のトップニュース」で放送しました)

【動画6分30秒】
(データ放送ではご覧になれません)

ゼレンスキー大統領はjet coalition=「戦闘機連合」を結成したいとして、各国に参加を呼びかけました。

ウクライナは数か月にわたって戦闘機の供与を欧米に求めています。ウクライナは欧米から最新の戦車の供与などを受けていますが、こうした兵器を活用して地上戦を戦い国土を奪還するためには、制空権を握りロシアの空からの攻撃を阻止する必要があるためです。
しかし欧米はF16戦闘機の供与には慎重です。

アメリカは…

アメリカは機体の供与や訓練も含めて実践配備までにはおよそ1年半かかるため現実的ではないとしています。

また大きな理由として事態がエスカレートすることへの懸念があります。

ウクライナが供与された戦闘機でロシアの領土内を攻撃すれば、ロシアを刺激し、最悪の場合、ロシアの核使用につながってしまうという懸念です。

ゼレンスキー大統領「自分たちの国土を奪還するだけ」

ウクライナ側はこれを払拭しようとしています。

クレバ外相は先月27日、SNSに「F16戦闘機はロシアの攻撃を阻止するもので挑発するものではない」と投稿し供与を求めました。

ゼレンスキー大統領もドイツのショルツ首相との会見で「ロシアの領土を攻撃するわけではない。自分たちの国土を奪還するだけだ」と強調しました。

欧米は供与には慎重な姿勢を崩さない一方、今回の訪問で各国の温度差も見えたほか、ウクライナにとっては望ましいとみられる反応も出てきています。

欧州各国は…

ドイツのショルツ首相は、「われわれが供与した防空システムなどは効力を発揮している」などと述べるにとどまりました。

一方イギリスは、現在、供与する計画はないとした上で、各国がF16戦闘機を供与することも視野に、この夏からウクライナ軍のパイロットの訓練を始めるとしています。

またフランスのマクロン大統領は15日、地元の放送局のインタビューで、供与についてはゼレンスキー大統領と協議していないとした上で、パイロットの訓練を行う準備はあると述べたと伝えられました。
ウクライナに対する欧米の軍事支援はこれまでも、当初慎重だった戦車や射程の長いミサイルなどの供与を決めるなど、段階を追ってレベルが引き上げられてきた経緯があります。

反転攻勢の行方とともにゼレンスキー大統領が呼びかけた「戦闘機連合」が結成されるのかも大きな焦点となっています。