岸田首相 “G7広島サミット 核廃絶機運を高める転機に”

岸田総理大臣はNHKのインタビューに応じ、G7広島サミットについて、ロシアのウクライナ侵攻を許さない立場や法の支配に基づく国際秩序の重要性を確認し、対ロ制裁の実効性を高めたいという意向を示しました。また、被爆地での開催を通じ、核廃絶の機運を高める転機にしたいなどと決意を強調しました。

G7広島サミットが今週19日に開幕するのを前に、岸田総理大臣はNHKのインタビューに応じました。

冒頭、今回のサミットについて「ロシアや北朝鮮をはじめ、さまざまな動きがあり、国際社会は歴史的な転換期を迎えている。エネルギーや食料など、国際的な大きな危機にどう対処していくか迫られる大事な時期で、その中で行われるサミットに、大変、緊張感を感じている」と述べました。

ロシアのウクライナ侵攻「制裁の実効性を高めていく努力を」

そして、ロシアのウクライナ侵攻への対応について「力による一方的な現状変更を許してはならない。核兵器による威嚇、ましてや使用は許してはならない。こうしたことを訴えるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持、強化していく。こうしたG7の強い思いを発信していくサミットにしたい」と述べました。

また、ウクライナ情勢をめぐり中間的な立場をとる国も多いグローバル・サウスとも呼ばれる新興国や途上国を念頭に「法の支配に基づく国際秩序や国際法に基づいて国際社会が活動していくことは、弱い立場、ぜい弱な国にとってこそ大切なルールで、どんな立場の国であっても共有できるのではないか」と指摘しました。
その上で、ロシアに対する制裁について「半導体不足で武器の製造が滞るなど、一定の効果は出ている。ただ、第三国による制裁逃れやう回の動きなどに対し、G7でも連携して実態を把握し、制裁の実効性を高めていく努力を行わなければならない」と述べました。

一方、ウクライナに対し、日本として、さらに踏み込んだ形での防衛装備品の支援を行う可能性について「日本に好ましい国際環境を作り出すためにも、国際法に違反して侵略を受けたような国を支援する観点でも、重要な政策的な手段になりうると整理されている。与党で議論を始めている段階で、丁寧に議論を行った上で日本としての考えを整理しなければならない」と述べました。

中国への対応「国際社会の一員としての責任を果たしてもらう」

このほか、今回のサミットをアジアやインド太平洋地域に欧米各国が関わるきっかけにしたいとした上で「力による現状変更の試みが、東シナ海や南シナ海といった地域でも起きている。ウクライナにおける侵略行動は決してヨーロッパだけの話ではなく、東アジアにおいても真剣に考えなければいけない重要な課題だ」と指摘しました。
中国の軍事パレード
そして、覇権主義的な行動を強める中国への対応について「G7各国には地政学的にも中国との関係の違いは存在すると思うが、一致したメッセージを出していこうと努力を続けてきた。今回のサミットでも課題や懸念を率直に伝え、国際社会の一員としての責任を果たしてもらうというメッセージを伝えていくことが重要だ」と述べました。

さらに、台湾情勢をめぐり「台湾海峡の平和と安定は、わが国のみならず、地域や国際社会全体の平和と安定にとって重要な課題で、対話により平和的に解決されるべきものだ。G7としてメッセージを出していきたい」と強調しました。

被爆地でのサミット開催「広島で議論する意味は大変大きい」

また、被爆地・広島でサミットが開催される意義について「かつて原爆によって壊滅的な被害を受け、その後、力強く復興を遂げた広島という場所に、世界やG7のリーダーが集まり、平和や安定について議論する意味は大変大きい」と述べました。

そして「いま、ロシアによる核の威嚇、北朝鮮のミサイル・核開発が懸念されている。核兵器のない世界という理想への機運が後退しているときだからこそ、いま一度機運を盛り上げる転機にしたい」と述べました。

その上で、サミットのメンバーに核保有国が含まれていることを踏まえ「信頼関係を支えるのは核を持っている国の透明性だ。自分たちはどれだけの核兵器を持っているか明らかにするところから始めようという考え方に基づき、具体的な取り組みを呼びかけたい」と決意を強調しました。