LGBT法案 自公 差別に関する文言を変更した修正案 正式に了承

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐり、自民・公明両党は、超党派の議員連盟がまとめていた法案の差別に関する文言を変更した修正案を正式に了承し、今週中の国会提出を目指すことになりました。

超党派の議員連盟が、おととし法案をまとめた、LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法について、自民党の総務会は、16日午前、「差別は許されない」という文言を「不当な差別はあってはならない」などと変更する修正案を了承し、党内の手続きを終えました。

これを受けて、自民・公明両党の政務調査会長らが出席して、16日夕方、与党政策責任者会議が開かれ、修正案を正式に了承しました。

両党は、野党側に修正案への理解を求めたうえで、今週中の国会提出を目指す方針です。

会議のあと、自民党の萩生田政務調査会長は記者団に対し「議論を尽くし結論を出すことができた。賛同してもらえる会派に声をかけ、条件が整えば、できるだけ速やかに国会に提出したい」と述べました。

また、公明党の高木政務調査会長は「与党として合意できてよかった。なるべく多くの方々と一緒に提出して法案を成立させたい」と述べました。

議連 会長代理 稲田元防衛相「多くの賛同のもと成立が重要」

超党派の議員連盟で会長代理を務める稲田元防衛大臣は、記者団に対し「法案を議論した特命委員会の幹部側から、国会審議の答弁の中で明らかにしていくことなどの説明があり、懸念の意見もあったが、明確な反対意見はなかった。基本的人権に関する法案であり、成立すれば当事者にとって大きな前進になるので、野党にも理解してもらい、多くの賛同のもとで成立することがとても重要だ」と述べました。

松野官房長官「多様性尊重の社会実現へ取り組む」

松野官房長官は午後の記者会見で、「提出に向けた準備を進めていると承知しており、引き続き状況を注視していきたい。政府としては、多様性が尊重され、すべての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、しっかりと取り組んでいく」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「できるかぎり全党合意で提出が重要」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で、「安倍内閣も含む過去の政府答弁などに立脚した内容になっている。議論が白熱した局面もあったが、自民党らしく最後は合意をまとめることができた。まずは各党に自民党の案を示して、できるかぎり全党が合意して提出に持っていくことが重要だが、難しい場合は、また別の対応を考えていくことになる」と述べました。

法案に反対 自民 高鳥衆院議員「極めて不正常な運営」

法案に反対の立場をとっている高鳥修一衆議院議員は、記者団に対し「特命委員会などの合同会議では、法案への反対が多数だったにもかかわらず、党内手続きを進めていて、極めて不正常な運営だった。手続きにかしがあることは、党執行部も分かっている」と述べました。

自民 石破元幹事長「法案審議の過程で努力必要」

自民党の石破元幹事長は記者団に対し「理解増進のための法案で、新たな法的な状態が起きるものではなく、いろんな懸念がきちんと払拭(ふっしょく)されるため、これから法案審議の過程でわが党の努力は必要だ」と述べました。

公明 山口代表「合意形成は非常に大きな突破口に」

公明党の山口代表は総理大臣官邸で記者団に対し、「G7広島サミットの前の成立が望ましいという認識は、今も変わっていないが、特に反対論の強かった自民党を含めて合意が形成されたことは、非常に大きな突破口になる。今国会で法案が成立し、具体策を前進させていく契機になることが重要であり、サミット前に合意形成の努力の姿と結果をおおむね示すことができたことは大変よかった」と述べました。

国民 玉木代表「無理に期限切るべきでない」

国民民主党の玉木代表は記者会見で、党内で自民党の修正案への賛否が分かれているとしたうえで、「G7サミットを1つの契機に法整備をするのはわからなくもないが、拙速にやると、かえって理解増進が進まなくなる。立法という重大な行為なので、十分議論をして、無理に期限を切るべきではない」と述べ、G7広島サミットまでの法案の提出にこだわるべきではないという考えを示しました。

当事者の支援団体など「『正当な差別』の存在を是認するものだ」

自民・公明両党が修正案を了承したことを受けて、当事者の支援団体などは16日夜、国会内で会合を開きました。

この中で、トランスジェンダーの浅沼智也さんは「『不当な差別はあってはならない』という修正は『正当な差別』の存在を是認するものだ。差別を許さないことにちゅうちょする法案はいらない」と批判しました。

また、支援団体の代表の松岡宗嗣さんは「理解の増進ではなく、理解を抑制し差別を増進するような法律になってしまうのではないか。超党派で合意した法案から後退するのは到底許されず、当事者が差別や偏見から守られる法律をつくってほしい」と訴えました。