タイ総選挙 野党2党で下院過半数 政策面で隔たりも連立交渉へ

タイで行われた総選挙で、軍の影響力排除を掲げ、第1党となった革新系の野党「前進党」と第2党となったタクシン元首相派の最大野党「タイ貢献党」が連立交渉を行うことになりました。
ただ、両党には、政策面で隔たりがあることから、9年前の軍事クーデター以降続く軍寄りの政権が交代するのか、交渉の行方が注目されています。

タイの選挙管理委員会は15日、14日に行われた総選挙の暫定結果を発表しました。

軍の影響力排除などを掲げる革新系の野党「前進党」が152議席を獲得して第1党となり、タクシン元首相派の最大野党「タイ貢献党」が141議席で第2党となりました。

一方、9年前の軍事クーデターを率いたプラユット首相の「タイ団結国家建設党」は、36議席にとどまりました。
前進党のピタ党首は、会見で「政治を私物化しない、完全なる民主主義的な議会を目指す」と勝利を宣言し、首相就任に意欲を示したうえで、第2党のタイ貢献党などと連立交渉に向けた接触を始めたことを明らかにしました。
一方、タクシン元首相の次女でタイ貢献党の首相候補のペートンタン氏も会見し、ピタ党首と電話で協議し連立交渉を行うことで一致したとしています。

2党の議席を合わせると下院の過半数を超えますが、前進党は王室への中傷を禁じる不敬罪の改正などを公約に掲げ、タイ貢献党とは政策面で隔たりがあります。

このため、双方が合意して野党による政権交代となるのか、それともタイ貢献党が別の政党との連立を模索するのかなど、その枠組みによって軍と政権の関係が変わってくるだけに、各政党による交渉の行方が注目されます。

「前進党」 バンコク中心部で勝利を祝うパレード

総選挙で第一党となった革新系の野党「前進党」がバンコク中心部で勝利を祝うパレードを開き、多くの支持者が集まりました。

パレードの起点はタイの民主化の象徴とされる「民主記念塔」で、ピタ党首らが乗った車両が到着すると、党のカラーであるオレンジのシャツなどを着た多くの支持者が道路を埋め尽くしました。

また、ピタ党首や前進党の関係者らが立ち寄った広場でも多くの支持者が詰めかけ、ピタ党首は「この機会を決してむだにしません。私たちは誰もが夢と希望に満ちたタイを築いていきます」と演説しました。

35歳の看護師の女性は「言葉にできないほどうれしいです。この先の道のりは簡単ではありませんが国民の強力な後押しがあるので乗り越えてくれると思っています」と話していました。

26歳の会社員の男性は「民主主義が戻ってくることをうれしく思います。前進党が政権を樹立できると確信しています」と話していました。