【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍発表“ミサイル18発の攻撃すべて破壊した”

ウクライナ軍の参謀本部は16日、ロシア軍がミサイル18発を発射して各地を攻撃したとしたうえで「ウクライナの空軍と防空能力によってすべて破壊した」と発表し、迎撃に成功したと強調しました。

ウクライナ軍はロシア側が極超音速ミサイルだと誇示する「キンジャール」6発や、ロシア海軍の巡航ミサイル「カリブル」9発などを撃墜したとしています。また、ロシア軍の無人機による攻撃も行われたもののいずれも撃墜したとしていて、欧米の軍事支援を受けるウクライナ側の防空能力が向上していることもうかがえます。

今回のロシア軍のミサイル攻撃は、首都キーウなどを標的にしたもので、キーウ当局は「異例の集中攻撃だった」と指摘しています。

キーウのクリチコ市長はSNSで市内の複数の場所でミサイルの破片などが落下したり爆発が起きたりし、これまでに3人がけがをしたほか建物やバスなどに被害が出ていると投稿しました。

仏大統領 戦闘機のパイロット訓練に前向きな考え

フランスのマクロン大統領は15日、フランスメディアとのインタビューの中でウクライナへの軍事支援について問われ、「われわれはパイロットの訓練のための扉を開いた」と述べ、戦闘機のパイロットの訓練を行うことに前向きな考えを示しました。

訓練の時期については「今すぐにでも開始できる」と述べたほか、訓練は準備ができているほかのヨーロッパ各国と共同で行うことを想定しているということです。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、今月13日から、フランスやイギリスなど4か国を相次いで訪問し、新たな軍事支援を取り付けていて、マクロン大統領とは14日に会談を行っていました。イギリス政府も、この夏からウクライナ軍のパイロットの訓練を始めることを発表しています。

ウクライナ産の農産物 各国が輸出再開の合意維持を求める

国連の安全保障理事会では、ウクライナ産の農産物の輸出再開をめぐるロシアとウクライナの合意について各国から維持するよう求める意見が相次ぎました。

このうち、日本の石兼国連大使は「合意が停止されれば世界の食料供給に壊滅的な結果をもたらす可能性がある」と指摘してロシアに責任ある行動を求めたほか、アメリカのウッド次席大使も「飢えに苦しむ世界の人たちを人質にするのをやめるよう求める」とロシアを非難しました。

一方、ロシアは、自国産の農産物の輸出が依然、妨げられているとして今月18日以降の延長に同意しない可能性もあると改めて主張しました。

仲介にあたってきた国連は、今後数日間、協議が続くとしていて、その行方が注目されています。

“イランがロシアに400機以上の無人機を提供”

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は15日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対してイランが軍事支援を拡大させていると非難しました。

具体的には、イランがロシアに対して戦車用の砲弾などに加えて去年8月以降、400機以上の無人機を提供したとしていて、こうした無人機のほとんどはウクライナの重要インフラへの攻撃に使われているとしています。

これに対して、イラン側は見返りにロシアからミサイルや防空システムなどを受け取っているほか、戦闘機を購入する契約も結んでいて、イラン側は数十億ドル分の兵器を入手しようとしているということです。

これを受けて、カービー調整官は近日中に、関係する組織や団体などを対象にした制裁を発表するとしています。

ウクライナ “東部の病院にミサイル攻撃 4人死亡”

ウクライナ東部や南部では、ロシア軍による攻撃で住民の犠牲が増え続けています。

ウクライナ東部ドネツク州のキリレンコ知事は15日、アウディーイウカでロシア軍のミサイル攻撃があり、病院に着弾して4人が死亡したとSNSに投稿しました。

14日には東部ハルキウ州の知事がロシア軍の砲撃により住民2人が死亡したと明らかにしたほか、南部ヘルソン州の当局は、ロシア軍による攻撃が繰り返され6人が死亡したとSNSに投稿しました。

ロシアはウクライナ各地で無人機も使って攻撃を繰り返しているとみられ、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は14日「反転攻勢を行おうとするウクライナ軍の能力を低下させるための新たな作戦の可能性が高い」と分析しています。

一方、ロシアの国営通信社は、ロシア側が支配する東部ルハンシク州の中心部で15日、爆発があり、親ロシア派の治安関係の幹部が負傷したと伝えました。

これを受けて、重大事件を扱うロシアの連邦捜査委員会が捜査を開始したと発表し、ルハンシク州を併合したとするプーチン政権が支配を誇示しています。

ゼレンスキー大統領 英や独など4か国訪問 戦闘機の供与求める

ウクライナのゼレンスキー大統領は、13日から3日間の日程でイタリア、ドイツ、フランス、イギリスの4か国を相次いで訪問しました。

ウクライナ大統領府は15日、声明を出し、一連の訪問の最優先事項は領土奪還に向けたウクライナ軍の反転攻勢の準備を進めることだったと明らかにし、強力な軍事支援を受けることで各国と合意したとしています。

このうち、ドイツが30両の旧式の戦車などの供与を発表したほか、イギリスは飛行距離が200キロを超える攻撃用の無人機、数百機などの供与を発表しました。
ゼレンスキー大統領は15日、イギリスのスナク首相とロンドン郊外で会談したあと記者団の取材に応じ、反転攻勢について「もうすぐ準備ができる」と述べました。

そのうえで、各国に呼びかけているF16戦闘機などの供与について「制空権のないウクライナにとって、非常に重要なことだ」と強調し、各国に改めて協力を求めました。
イギリスの首相官邸はNHKの取材に対し、現在、戦闘機そのものをウクライナに供与する計画はないとしていますが、各国がF16戦闘機を供与することも視野に、この夏からウクライナ軍のパイロットの訓練を始めるとしています。