首相演説先爆発事件 火薬の原料となる肥料をネットで購入か

先月、和歌山市で選挙の応援に訪れていた岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれた事件で、24歳の容疑者が火薬の原料となる肥料を去年11月ごろからインターネットで購入していたとみられることが捜査関係者への取材でわかりました。

先月15日、和歌山市の漁港で衆議院の補欠選挙の応援に訪れていた岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれた事件は、今月15日で発生から1か月となりますが、兵庫県川西市の無職、木村隆二容疑者(24)は黙秘を続け、動機や背景は明らかになっていません。

警察は今月6日に火薬を無許可で製造したとして火薬類取締法違反の疑いで再逮捕し、詳しい経緯を調べています。

捜査関係者によりますと容疑者の自宅の捜索で、火薬の原料となる肥料も押収されていて、去年11月ごろから複数回にわたって肥料をインターネットで購入していたとみられるということです。購入の際には、クレジットカードが使われていたということです。

この時期には、容疑者が現在の被選挙権年齢や供託金の制度を批判し、国を相手に起こした民事裁判で訴えが退けられており、警察が関連を慎重に調べています。

元検察官“爆発物の分析がカギ”

これまでの捜査について、元検察官の亀井正貴弁護士は「容疑者が黙秘して供述が得られない中、目的や動機を物的証拠から推測するしかなく、そのための捜査に相当な時間がかかっている。今回の場合は実際に爆発していて、警察・検察は爆発物取締罰則の爆発物を使用した罪や、殺人未遂罪の適用を視野に入れていると思うが、まずは物証がある火薬類取締法違反で再逮捕をしたと思われる」と述べました。

そのうえで今後の捜査では、容疑者がどのような結果を想定していたかを解明することがポイントになると指摘しています。

亀井弁護士は「例えば単に爆発してびっくりさせればいいというだけのものなのか。それとも爆発によって死傷に至ることを想定していたかどうか。殺人未遂や爆発物使用罪で立件するには、容疑者がそこまで認識し、故意があったということを立証する必要がある」と話しています。

また、これらの解明に向けては、爆発物の分析がカギを握っているとして「警察は、今回使われた爆発物と同じものを製造して、爆発の実験をすることでその破壊力によって死傷に至らしめるかどうかをチェックすると思う。例えば、単に爆発して破片が飛んだだけということなら爆発物と言えるかどうかという問題があり、その意味で爆発物の定義についてしっかりと立証していくことになる」と話しています。

さらに容疑者の刑事責任を問えるかどうかという点も焦点になるとしていて「人を殺傷する、岸田総理大臣を傷つけるかもしれないという目的であれば、政治や選挙制度に関する不満だけでは、動機として理解するのは難しい。その意味では、刑事責任能力を調べるための鑑定留置の必要性を判断すると思われる」と話していました。