患者暴行事件の精神科病院 生活保護の患者 約4割が退院希望

東京 八王子市の精神科病院で、看護師による患者への暴行事件が起きたことを受け、入院中の患者のうち生活保護を受けている人に、担当する自治体が意向を確認したところ、4割近くが退院を希望していることがわかりました。一方で、退院は進んでおらず、専門家は地域で暮らすための支援の乏しさが背景にあると指摘しています。

東京 八王子市にある精神科病院「滝山病院」では、入院患者を暴行したとして複数の看護師が逮捕されるなどし、東京都は4月に管理体制に不備があったとして病院に改善命令を出しています。

事件を受け、入院患者のうち生活保護を受給している患者については、担当する市や区が、退院や転院の意向があるか確認を進めています。

NHKが、八王子市と東京23区、神奈川県の政令指定都市の27の市区に取材したところ、生活保護を受給していて、事件が発覚した2月時点で滝山病院に入院していた患者は、少なくとも14の市区で合わせて41人いました。

このうち、退院や転院を希望する意向が確認できた患者は16人と、4割近くに上っていました。

ただ、実際に退院や転院した患者は4月末までに4人にとどまっていて、自治体からは、
▽退院できる状況だが、受け入れ先がみつからないとか
▽転院先となる医療機関が近くにないといった声がありました。

また、
▽認知症や精神疾患によって、意向の確認自体が困難といった声もありました。

ほかの、およそ80人の患者についても、東京都が先週から意向を確認しています。

障害者福祉に詳しい兵庫県立大学の竹端寛准教授は「退院が進まない背景には、家族が支えるか、精神科病院に入院させるかの2つの選択肢しかなく、地域での暮らしを支える社会資源が乏しいことがある。患者自身も退院できないと思い込んでしまっているケースも多く、支援者と外出する機会を提供するなどして、丁寧に意向を確認する必要がある」と指摘しています。