【詳しく】千葉県木更津市で震度5強 津波なし

11日朝、千葉県南部を震源とする地震があり、千葉県木更津市で震度5強の揺れを観測したほか、震度4を東京23区や横浜市などの広い範囲で観測しました。この地震による津波はありませんでした。気象庁は今後1週間程度は同じ程度の揺れを伴う地震が起きるおそれがあるとして注意を呼びかけています。

気象庁によりますと、11日午前4時16分ごろ、千葉県南部の深さ40キロを震源とするマグニチュード5.2の地震が発生しました。この地震で
▽震度5強の揺れを千葉県木更津市で
▽震度5弱の揺れを君津市で観測しました。

また
▽震度4を千葉市美浜区や勝浦市、市原市、鴨川市、富津市、袖ケ浦市、南房総市いすみ市、睦沢町、長南町、大多喜町、東京・千代田区、東京・品川区、横浜市神奈川区中区、戸塚区、瀬谷区、栄区、川崎市中原区で観測しました。

このほか震度3から1の揺れを関東甲信越と東北南部、それに静岡県の各地で観測しました。

この地震による津波はありませんでした。

気象庁は今後1週間程度は同じ程度の揺れを伴う地震が起きるおそれがあるとして注意を呼びかけています。

気象庁「今後1週間程度 最大震度5強程度の地震に注意」

千葉県木更津市で震度5強の揺れを観測した地震について、気象庁は午前6時15分から記者会見を開き、鎌谷紀子地震津波監視課長は「揺れの強かった地域では落石や崖崩れなどの危険性が高まっているので今後の地震活動や雨の状況に十分注意してほしい」と述べました。

その上で「揺れの強かった地域では今後1週間程度、最大震度5強程度の地震に注意してほしい。特に今後2、3日の間は規模の大きな地震が発生することが多くあるので注意してほしい」と呼びかけました。

木更津市 大雨警報など基準引き下げ

今回の地震で震度5強の揺れを観測した千葉県木更津市について気象庁などは、強い揺れで地盤が緩み雨による土砂災害の危険性がふだんより高くなっているとして、「大雨警報」と「大雨注意報」、それに「土砂災害警戒情報」の基準を通常の8割に引き下げました。

気象庁は、当分の間、この基準で運用することにしていて、揺れが強かった地域では雨の降り方に十分注意し、大雨警報や土砂災害警戒情報が発表された場合には、早めの避難など安全の確保を心がけてほしいとしています。

千葉県 熊谷知事 対応万全を尽くすよう指示

千葉県は11日の朝7時に災害対策本部会議を開き、熊谷知事は国や市町村と連携し対応に万全を尽くすよう指示しました。

県内の被害状況については情報を収集中だとして確認を急いでいます。

また、今夜県内ではところによって雨が見込まれるため、屋根の被害が確認された住宅にブルーシートを配布できるよう、準備を進めることにしています。

千葉県 熊谷知事「災害への備えを再確認を」

千葉県の熊谷知事は記者会見で「現時点では住宅も含めて大きな被害は確認されていないが、今後も1週間程度は同じ程度の地震に警戒してもらうとともに、雨が降った際には土砂崩れなどの可能性もあるので、天候の見通しに十分注意してほしい」と述べました。

その上で「この機会にお住まいの地域のハザードマップの確認や家具の転倒防止対策、備蓄などさまざまな災害への備えを再確認してもらいたい」と述べました。

千葉県で震度5強は2012年以来

気象庁によりますと、千葉県で震度5強の揺れを観測したのは、2012年3月14日に千葉県東方沖で発生したマグニチュード6.1の地震以来です。

専門家「今後1週間程度は地震に注意」

千葉県で震度5強の揺れを観測した地震のメカニズムや関東地方での地震の注意点について、東京大学地震研究所の佐竹健治教授に聞きました。

関東の地下には陸側のプレートの下に東から「太平洋プレート」と南から「フィリピン海プレート」の2つの海側のプレートが沈み込んでいます。

佐竹教授は、今回はこのうち「フィリピン海プレート」の内部で発生した地震で、関東で多く起きるタイプの地震だとしています。
その上で、40キロと関東で起きる地震としては比較的浅い場所で起きたことや地盤の影響などで、震源の近くで震度5強や5弱の強い揺れを観測したと分析しています。

佐竹教授は今後の地震活動について「震度5や6を観測する地震が起きると、その後、1週間程度は同じような強い揺れの地震が発生する可能性が高いとされている。ただ、関東地方はもともと地震活動が活発な地域なので、1週間に限らず地震がいつ起きても不思議ではないと考え、備える必要がある」と話しています。

プレートが複雑に入り組んだ関東の地下では過去、100年前の「関東大震災」を引き起こしたマグニチュード7.9の大地震に加え、マグニチュード7クラスの地震が繰り返し発生しています。

佐竹教授は、国が今後30年以内に70%の確率で発生するとしている、マグニチュード7クラスの「首都直下地震」など、さらに規模の大きな地震に備えてほしいとしています。

佐竹教授は「関東地方は首都の真下に2枚のプレートがある世界でもないような場所で、そのために地震が多くなっている。常日頃から今回のような地震が関東で起きるということを頭に置いて生活するとともに、さらに大きな揺れがきても大丈夫なように備えを進めてほしい」と話していました。

18:00 千葉県と神奈川県で計8人けが

この地震で、これまでに千葉県と神奈川県で自宅で転倒したりベッドから転落したりして8人がけがをしました。

けが人の情報です。

千葉県によりますと
▼君津市で70代の女性が寝室で転倒し右肩に軽いけがをしたほか、
▼千葉市緑区では70代の女性がベッドから転落して頭などに軽いけがをしたということです。

このほか、▼松戸市と▼茂原市、それに▼鎌ケ谷市でそれぞれ高齢の女性1人が軽いけがをしました。

神奈川県では
▼茅ヶ崎市で70代の女性がベッドから転落しました。県によりますと女性は足を骨折した疑いで病院に運ばれ、手当てを受けたということです。

このほか神奈川県では
▼横浜市保土ケ谷区で自宅にいた60代の女性が転倒して右手を骨折した疑いで病院に搬送されたほか、
▼川崎市高津区では50代の男性が自宅で落ちてきた照明が頭にあたり軽いけがをしました。
建物などへの被害です。

千葉県によりますと、午後4時現在、今回の地震で屋根瓦が落ちるなど住宅の一部が損壊する被害が木更津市や君津市など3つの市であわせて11棟、確認されています。

このうち
▼震度5強の揺れを観測した木更津市と震度5弱の揺れを観測した君津市がそれぞれ5棟、
▼勝浦市が1棟となっています。

住宅以外の建物では木更津市役所の朝日庁舎の壁や天井の一部が破損したほか、ビルの窓ガラスが割れるなど木更津市と君津市であわせて5件の被害が確認されています。

また、木更津市の酒造会社や酒の販売店では酒瓶が落ちて割れたほか、市内の清見台地区では住宅街にある街灯の照明器具が落下しているのが確認できました。

学校にも被害が出ています。県立木更津東高校では校舎にある廊下の天井の一部が落下しました。

落下したのは渡り廊下の天井に取り付けられていた厚さ3ミリほどの金属製の板で、長さおよそ2メートル幅およそ15センチにわたって剥がれ落ちたということです。けが人はいませんでした。

このほか木更津市内にある公立小学校では、地震の影響で校舎内の壁にひびが入るなどの被害が確認されました。

木更津市内で屋根瓦が散乱

SNSでは屋根瓦が落ちたという投稿も見られます。

ツイッターに画像を投稿した千葉県木更津市に住む女性は「釣り船の出航準備などをしていたところ、大きな揺れを感じました。室内は置物が落ちるくらいでしたが、外の様子を見ようと出たときに、自宅の屋根瓦がばらばらと落ちてきてとても驚きました。子どももいるので、けががなくてよかったです」と話していました。

11:00 首都圏各地でエレベーターが一時停止も多くが復旧

地震の影響で首都圏の各地で多くのエレベーターが一時、自動停止しました。

エレベーターの保守を担う「日立ビルシステム」によりますと、東京、千葉、神奈川、埼玉でおよそ3000台のエレベーターが一時、停止したということです。エレベーターに人が閉じ込められたり、機器が壊れたりしたケースはなく、11日午前11時現在、作業員が立ち入れない一部の建物を除いて、ほとんどで復旧作業が終わったということです。

また「フジテック」によりますと、東京、千葉県、神奈川県を中心に一時、およそ300台のエレベーターが停止しましたが、人が閉じ込められたケースはなかったということです。エレベーターを管理する会社によりますと震度4程度までの揺れでは多くのエレベーターが自動停止した後、故障などがなければ自動で復旧する仕組みになっていて、震度3を観測した都内では多くが安全確認を含めても数時間以内には復旧したとみられるということです。

君津中央病院「エレベーターいったん停止 その後復旧」

震度5強を観測した千葉県木更津市で災害拠点病院となっている「君津中央病院」の当直担当者によりますと、揺れがあった際に、院内のエレベーターがいったん停止したものの、その後、復旧し、今は正常に稼働しているということです。スタッフが見回りを現在行っていて、午前4時50分現在、大きな被害の情報は入っていないということです。

千葉県 県立高校3校が授業取りやめ

千葉県教育庁によりますと、今回の地震で交通機関に影響が出ているとして
▽鴨川市にある長狭高校
▽館山市にある安房高校
▽富津市にある天羽高校の3つの県立高校が、11日の授業を取りやめたということです。

気象庁 震度5強の揺れの注意点

気象庁によりますと、震度5強の揺れは多くの人が物につかまらないと歩くことが難しくなります。

耐震性の低い木造の建物は、壁などにひびや亀裂が入ることがあるほか地盤や斜面では、亀裂や液状化、落石、それに崖崩れなどが発生するおそれがあります。

固定していない家具は倒れることもあり、屋外では補強されていないブロック塀が崩れることもあります。

倒れやすいものや崖の近くなど危険な場所には近づかないようにしてください。

室内の状況では、棚にある食器類や本で落ちる物が多くなり、割れた食器やガラスなどがあると片付けをする場合などに思わぬけがをするおそれがあります。

決して無理をしないようにして、室内を歩くときはスリッパや靴を履くようにしてください。

不安を感じる場合は、安全な場所に避難してください。

今回の震源周辺の過去の地震は

関東地方は、日本列島が位置する陸のプレートの下に
▽東から「太平洋プレート」
▽南から「フィリピン海プレート」
の2つの海側のプレートが沈み込んでいて、ふだんから地震活動が活発な地域です。

気象庁によりますと、今回の地震は陸側のプレートの下に沈み込んでいる「フィリピン海プレート」の内部で発生しました。

今回の震源地の周辺でもたびたび地震が発生していて、4年前の2019年5月25日にはマグニチュード5.1の地震で千葉県長南町で震度5弱の揺れを観測しました。

また、一回り大きい地震も過去には起きていて1987年12月17日には千葉県東方沖を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生し、千葉県内の各地で当時の「震度5」を観測しました。

気象庁は揺れの強かった地域では今後も1週間程度は今回の地震と同程度の揺れが起きるおそれがあるとして今後の地震活動に十分注意するよう呼びかけています。

過去には さらに大きな地震も

関東の地下に沈み込むプレートの影響で過去にはさらに規模の大きな地震も発生しています。

100年前の1923年には、関東南部の沖合の「相模トラフ」沿いのプレート境界でマグニチュード7.9の大地震が発生し、「関東大震災」を引き起こしました。

プレートの境目でひずみが蓄積されるのに伴い、内陸でも地震が多発していて、関東大震災までの200年余りの間にはマグニチュード7前後の大地震もあわせて8回発生しています。

今後、警戒されているのが「首都直下地震」で、国は今後30年以内に70%の確率で発生し、最悪の場合火災や建物の倒壊などにより死者はおよそ2万3000人にのぼると想定しています。

専門家は、関東地方は地震が多い地域のため、ふだんから揺れへの備えを進めるよう呼びかけています。