【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍「敵は最大で2キロ後退した」

ウクライナ陸軍のシルスキー司令官は11日、激戦地となっている東部バフムトの戦況について「われわれは効果的な反撃を行っている」とSNSに投稿しました。

司令官は「練度が高い民間の軍事会社ワグネルの部隊が消耗し、代わりに、練度が低いロシアの正規軍が配置されたが、敗北し、退却した」と指摘しました。

そして「戦線の一部で、敵は最大で2キロ、後退した」と強調しました。

ウクライナ軍「東部でのロシア側の攻撃 39回退けた」

ウクライナ軍の参謀本部は11日、ウクライナ東部でロシア側の攻撃をあわせて39回退けたと発表しました。

そして、特に戦闘が激しくなっている都市として東部ドネツク州のバフムトとマリインカを挙げ、2つの都市をめぐる攻防でロシア側の攻撃は失敗が相次ぎ、ウクライナ側が現時点で優勢だと主張しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は10日、バフムトの戦況について「ロシア側は部隊の消耗が著しく、戦闘への対処も場当たり的だ。部隊の指揮・統制に明らかに失敗していて、作戦の妨げになっているとみられる」と指摘しています。

ゼレンスキー大統領 反転攻勢「もう少し時間が必要」

ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、イギリスの公共放送BBCなどのインタビューに応じ、軍事侵攻を続けるロシアに対する反転攻勢について必要な装備が届いていないとして「私たちは待つ必要がある。もう少し時間が必要だ」と述べ、反転攻勢が始まるまでまだ時間がかかるという考えを示しました。具体的な時期については言及を避けました。

G7広島サミット ロシアへの強力な制裁継続で各国と調整

来週19日に開幕するG7広島サミットで、政府は、初日にウクライナ情勢への対応などをテーマにしたセッションを開き、ゼレンスキー大統領もオンラインで参加する方向で最終的な準備を進めています。

この中で政府は、ロシアのウクライナ侵攻は明らかな国際法違反だとして強く非難するとともに、軍の即時かつ無条件での撤退を求める方針をG7で共有することにしています。

そして、ロシアに対する強力な制裁やウクライナへの軍事、財政両面での支援を継続していくとともに、深刻な打撃を受けているウクライナの社会経済インフラなどの復興にも関与していく立場を明確にしたい考えです。

政府内には、サミット全体の首脳宣言とは別に、今後もウクライナを支援するG7の姿勢を強調するため、単独で声明などを発出する案もあり、セッション当日に向け、各国との間で事前の調整を続けています。

ウクライナ反転攻勢 主要都市メリトポリが焦点の1つ

ロシア側が占拠するウクライナ南部ザポリージャ州の主要都市メリトポリは、ウクライナが反転攻勢を行うにあたって焦点の1つになるとみられています。

アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は今月6日、反転攻勢を進めるウクライナにとってメリトポリの奪還が最優先の目標の1つだと多くの専門家がみていると指摘しています。

メリトポリには、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアにつながるロシアにとって重要な補給路があります。

このためウクライナ軍がメリトポリを奪還することでロシア側の補給路を遮断することができ、ザポリージャ州や隣接するヘルソン州の地域の奪還に向けても大きな影響を与えるとみられます。

また、現地メディアなどによりますと、メリトポリではロシア側に協力している関係者を標的にした爆破事件なども起きていて、メリトポリは、ウクライナの市民らによるロシアへの抵抗運動の拠点にもなっているということです。

一方、戦況の分析を続けているイギリス国防省は、ロシア側は、ザポリージャ州でおよそ120キロにわたって3重にもなる大規模な防衛線を築いていると分析していて、ウクライナ側の反転攻勢への警戒を強めているとみられます。

ワグネル代表プリゴジン氏 “弾薬がなければ全滅” 危機感示す

ウクライナ東部の激戦地バフムトで戦闘を続けているロシアの民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は現地の状況について10日、SNSに投稿しました。

このなかでプリゴジン氏は「われわれの部隊の要員が減ったため、陣地の側面をロシア軍に引き渡したが軍はそこでも失敗した。いまのワグネルには包囲されるリスクが出てきた」としています。

そして「ロシアの正規軍の部隊はいまやバフムトを去り、市内に残っているのはワグネルだけだ」とした上で、「もし十分な弾薬がなければ、ウクライナ軍によってワグネルは全滅するだろう」と危機感を示しました。

プリゴジン氏は9日、弾薬の一部をロシア国防省から受け取ったとしてバフムトからの撤退表明を撤回し戦闘を続ける意向を示していましたが、今回あらためてみずからの部隊が置かれた厳しい状況について明らかにしたものです。

軍事専門家“ウクライナ反転攻勢 初期段階が重要”

ウクライナでシンクタンクの代表を務める軍事専門家ミハイロ・サモシ氏はNHKのインタビューに対しウクライナが踏み切る構えを示している反転攻勢について「スタートがうまくいかなければ、ロシア側に戦術が知られ、作戦を立て直すのは容易ではなくなる」と述べ初期段階が重要になると指摘しました。

その上で「反転攻勢を成功させるには、適切な準備を行い、すべての条件を整えておくことが求められる」として反転攻勢を始めるにあたっては、欧米側から供与される兵器や後方支援の態勢などをみながら慎重に判断されるという見方を示しました。

また、サモシ氏は、冬のあと南部などで土壌がぬかるんでいることが反転攻勢の時期に影響すると指摘されていることについて「数週間もすれば温かく乾燥した気候になり、土壌の問題は解決される。11月ごろまでは作戦を継続できる」と述べました。

一方、反転攻勢が行われる地域については、住宅などが集まる東部のドンバス地域よりも、南部のザポリージャ州やクリミアのほうが平野が広がるなど地形的にも攻撃を仕掛けやすいとした上で「次の攻勢への起点を作っていくという意味でも南部の方が戦略的に重要だ」と指摘しました。

そして、ロシアが一方的に併合したクリミアの軍港都市セバストポリにある燃料の貯蔵施設で先月起きた火災などについて、ウクライナ側が反転攻勢を優位に進めるための作戦の一部であるという見方を示し、「ロシアが有効な防衛作戦をできないようにするための準備を進めている」と分析しました。

ロシア 兵器の保有上限定めた欧州通常戦力条約 脱退向け審議へ

ロシアのプーチン政権は、NATO=北大西洋条約機構とのあいだで通常兵器の保有上限を定めたCFE=欧州通常戦力条約について、条約の脱退に向けて議会で審議する方針を発表しました。ウクライナ支援を行う欧米へのけん制を強めるねらいとみられます。

CFE=欧州通常戦力条約は冷戦時の東西両陣営の対立を前提として戦力均衡を図る目的でヨーロッパにおける通常兵器の保有上限を定めたものです。

1990年にNATOと当時のワルシャワ条約機構とのあいだで調印されました。

ロシア大統領府は10日、CFE条約の脱退に向けて議会で審議するとして、プーチン大統領が関連する法案を議会下院に提出し、リャプコフ外務次官をその担当者に指名したと発表しました。

CFE条約をめぐってロシアは1999年に批准していますが、NATOとの対立が続く中、2007年に履行を停止しています。

議会下院で国際問題を担当する委員会のスルツキー委員長は「条約は長い間、書類上で存在するだけのものになっている。現状を考えると脱退に向けた議論がロシアの国益と安全を強化することに役立つだろう」としています。

欧米諸国がウクライナへの軍事支援を強化する中、プーチン政権としては条約の脱退を表明することで欧米へのけん制を一段と強めるねらいとみられます。

ロシア国営通信社は今月16日に議会で審議される可能性があると伝えています。

ドイツ軍トップ ウクライナ軍総司令官などと会談

ドイツ軍トップのブロイヤー総監は、10日に伝えられたドイツメディアのインタビューで、先週ウクライナを訪れ、ウクライナ軍のザルジニー総司令官やレズニコフ国防相と会談したことを明らかにした上で「ウクライナ側との対話を通じ、攻勢の計画が進んでいることは明らかだった」と述べ、反転攻勢の準備が進められているという見方を示しました。

ただ、前線の状況については「まだ地面がぬかるんでいて、農地には大きな水たまりもあり、この数週間は大規模な戦闘に必要な条件が整っていないと伝えられた」と述べました。

一方、ドイツをはじめヨーロッパ各国がウクライナに供与しているドイツ製の主力戦車「レオパルト2」についてブロイヤー総監は「戦闘で使われているとの説明を受けた」と述べ、ウクライナ軍が実戦に投入していると指摘しました。

ウクライナ原発公社 “人材が不足 原発運転できなくなる”

ウクライナが大規模な反転攻勢を行う構えを示す中、ロシアが一方的に併合したとする南部ザポリージャ州の親ロシア派のトップは、今月5日、ロシアの支配地域にいる住民、およそ7万人をほかの地域へ移動させる方針を示しています。

これについて、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は10日、ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所がある地域からおよそ3100人が移動を強いられるという情報があるとSNSで明らかにしました。

このうち2700人がザポリージャ原発の従業員やその家族で「熟練した人材が壊滅的に不足し、原発の運転ができなくなる」として強い危機感を示しました。

そして、原発の安全運転に向け、ウクライナ国内にいる専門家など必要な人材を集めるため、あらゆる手段を講じているとしています。

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長も6日、声明で「原発で働くほとんどのスタッフが住む地域で住民の移動が開始されたという情報がある。深刻な原発事故の脅威を防ぐためすぐに行動しなければならない」として、懸念を示しています。

ウクライナ高官 “反転攻勢 計画は検討段階”

ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は9日、公共放送のインタビューに応じ、領土の奪還を目指して行うとする反転攻勢について「時期や方向性の最終決定はウクライナ軍の最高司令官である大統領の執務室で行われる」と述べ、最終的な決断は、ゼレンスキー大統領が下すと強調しました。

その上で「われわれの計画をすべて知っているものは誰もいない。なぜなら、計画はまだ承認されていないからだ」と述べ、いくつかの選択肢を検討している段階だと明らかにしました。

ウクライナ国内などでは、反転攻勢への期待が高まっていますが、ウクライナ政府と軍としては、確実に成果を得るためにも慎重に準備を進めているものとみられます。

反転攻勢をめぐってはレズニコフ国防相が先月末「全体としてわれわれの準備はできている」と述べるなど早ければ今月にも始まるという見方が出ています。