【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ “ロシアの巡航ミサイル25発のうち23発撃墜”

ウクライナ軍の参謀本部は9日、SNSでロシア軍が8日夜から9日の早朝にかけて合わせて25発の巡航ミサイルで攻撃してきたと発表しました。
このうち23発を撃ち落としたとしています。

首都キーウでも迎撃した際に起きたとみられる爆発音が聞こえたほか、キーウのクリチコ市長は撃墜されたミサイルの破片が、民間施設の敷地に落ちたと明らかにしました。

キーウ州当局はSNSでメッセージを投稿し、ロシア軍が前日の8日に記録的な数の無人機で攻撃し、ウクライナの防空システムを最大限、疲弊させようとしたと指摘しました。

そのうえで、首都の防空システムは巡航ミサイルの攻撃に対しても完璧に機能し、着弾させなかったとして、今のところ、けが人は出ておらず、ロシア軍の計画は失敗したと強調しています。

プーチン大統領 戦勝記念日演説で軍事侵攻続ける姿勢強調

ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから78年の記念日を迎え、首都モスクワでは、日本時間の9日午後4時から中心部の赤の広場で記念の式典が行われました。

この中でプーチン大統領は、「われわれの祖国に対して本当の戦争が行われている。しかし、東部ドンバス地域の住民を保護し、われわれの安全を確保する」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻を正当化しました。

そのうえで、「ロシアの将来は、特別軍事作戦に参加しているあなたがたにかかっている。勝利に万歳」と述べ、今後も軍事侵攻を続ける姿勢を強調しました。

一方、ロシア大統領府は今月3日、クレムリンに対して無人機による攻撃が仕掛けられたと発表しましたが、プーチン大統領からこれについて直接の発言はありませんでした。

ことしの戦勝記念日では、安全上の懸念を理由に20以上の都市で軍事パレードの中止も発表され、モスクワの式典も去年よりも規模が小さいなどこれまでとは大きく異なる形となりました。

ロシア「戦勝記念日」モスクワでは日本時間午後4時から式典

ロシアでは9日、第2次世界大戦の戦勝記念日を迎え、極東地域から順次、記念式典が行われています。

戦勝記念日は、プーチン政権が国威発揚と国民の結束を図る場として重視してきましたが、ことしはウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、20以上の地方都市で安全上の懸念などを理由に軍事パレードの中止が発表されるなど異例の状況となっています。

また、3日には首都モスクワにある政治の中枢クレムリンの上空で無人機が爆発し、ロシアはウクライナがプーチン大統領を狙って仕掛けたものだと主張して、報復措置をとるとしています。

モスクワでは、厳戒態勢が敷かれる中、日本時間の9日午後4時から、クレムリンと隣り合う赤の広場で式典が開かれ、ロシア大統領府は、プーチン大統領の演説や軍事パレードが予定どおり行われるとしています。

ウクライナが、欧米の軍事支援を受けながら、今後、反転攻勢に乗り出す構えを示す中、プーチン大統領が演説で、長期化する軍事侵攻などについて、どのような発言を行うのかに関心が集まっています。

ロシア民間軍事会社代表「弾薬が届き始めたようだ」

弾薬の供給不足を理由に、ウクライナ東部の激戦地バフムトから撤退の意向を表明していた民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は8日、SNSに音声メッセージを投稿し「まだ目にしていないが、弾薬が届き始めたようだ」と述べ、約束された弾薬の供給が始まったという認識を示しました。

プリゴジン氏は5日、ロシア国防省が弾薬の供給を意図的に止めていると非難し、10日にバフムトから撤退する意向を表明しました。

今回、撤退の方針を撤回するかどうかについては言及していませんが、弾薬の供給をめぐって国防省などとの確執が表面化する中、ロシア側の指揮系統の乱れが指摘されています。

米ピュリツァー賞にウクライナ関連報道

アメリカのすぐれた報道などに贈られるピュリツァー賞が8日発表され、このうち、公益報道とニュース速報写真の2つの部門で、ロシア軍による空爆で破壊されたウクライナ東部マリウポリで病院から妊婦が担架に乗せられて救出される様子など、ロシアによる軍事侵攻と占領の実態を現地から伝え続けたAP通信が選ばれました。

また国際報道の部門では、軍事侵攻当初から1か月余りにわたって、ロシア軍に占領されたウクライナの首都キーウ近郊の街ブチャでの惨状などを伝えたニューヨーク・タイムズが選ばれました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、ことしはジャーナリズムに関する15の部門のうち3つの部門で、ウクライナ侵攻に関する報道を行った社が選ばれました。

ロシアは9日が「戦勝記念日」 モスクワは緊張感に包まれる

ロシアで、5月9日は第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う「戦勝記念日」で、最も重要な祝日の1つとなっています。

第2次世界大戦の期間中、旧ソビエトでは、世界で最も多い少なくとも2600万人の兵士と市民が死亡したとされ、ロシアで戦勝記念日は苦難の末に勝利した栄光と誇りの日と位置づけられています。
首都モスクワでは、戦勝記念日を前に、市内の大通りなどが記念日を祝う旗や看板などで飾りつけられる一方、警備に当たる警察車両や治安部隊の姿も目立ち緊張感に包まれています。

戦勝記念日について49歳の会社員の女性は、「国民にとって最も重要な祝日だ。プーチン大統領には式典の演説で、『必ず勝利する』という強いことばを発してほしい」と話していました。

そのうえで軍事侵攻が長期化し、こう着状態になっているとして、「大統領には、より断固とした行動で、早く終わらせてほしい」と訴えていました。

また34歳の美容師の女性は、軍事パレードの実施には賛成だとしたうえで、「安全面では不安がある。警備にあたる人を増やし、検査を厳しくしてほしい」と不安を口にしていました。

22歳の大学生の男性は、「クレムリンへの無人機攻撃など国のイメージを傷つける大変な事態だ。しかし、象徴的な式典を中止すれば、さらに人々が不安に陥り、否定的な影響を与えるだろう」と話していました。

一方で「政府は長年、戦勝記念日を勝利だけでなく軍事力のアピールと関連づけてきたが、違和感がある。本来、何のためにささげられた日なのかを考えるようにしている」とも話していました。

ウクライナ側が反転攻勢へ向けて準備か

ウクライナ側は、ロシアに占領された領土を奪還するため大規模な反転攻勢に向けて準備を進めているとみられます。

クリメンコ内相は2日、地元メディアに対して反転攻勢に向けて新たに編成された旅団に多くの志願兵が加わり、訓練も本格化していると強調しました。
欧米各国もウクライナに対する軍事支援を強化し、NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は先月27日に「ウクライナに約束した戦闘車両の98%以上がすでに引き渡されている」と述べ、各国から1550両以上の装甲車と、230両の戦車が供与されたと明らかにしました。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は6日、アメリカ軍の制服組トップ ミリー統合参謀本部議長と電話で会談したと明らかにし、反転攻勢に向けてアメリカ側とも調整を進めているとみられます。
ゼレンスキー大統領は3日、「われわれはまもなく反転攻勢に出る」と述べていてウクライナは、近く反転攻勢に乗り出すとみられます。

ロシア側 防御的な作戦に移行か

ロシア側は、今月9日に第2次世界大戦の戦勝記念日を控えるなか、国民にアピールできる戦果を得ようと東部の激戦地バフムトの完全掌握などを目指してきたとみられています。

ただ、弾薬や人員の不足が指摘されるなかで、アメリカの情報機関を統括するヘインズ国家情報長官は4日、「ロシア軍は前線で防御的な作戦に移行したとみられる」としています。

イギリス国防省も先月、ロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ州で、およそ120キロにわたって3重にもなる大規模な防衛線を築いていると指摘しています。

こうした中、バフムトを巡ってロシアの民間軍事会社ワグネルの代表は5日、弾薬が不足しているとして国防省を激しく非難し、バフムトからの撤退を表明しましたが、その2日後には弾薬と武器の供給を約束されたと主張しました。

ウクライナをめぐる情勢は、ロシアが重視する第2次世界大戦の戦勝記念日を前に緊張と混乱の度合いが深まっています。

“安全上の懸念”など理由に各地で軍事パレード中止に

2022年の戦勝記念日
ロシアのプーチン政権は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した5月9日の戦勝記念日に合わせて各地で軍事パレードを行い、国民の愛国心を高揚させ結束を強める機会として重視してきました。

しかし、ことしは先月に入ってから安全上の懸念などを理由に軍事パレードの中止が相次いで発表されました。

中止が決まったのは、ロシア西部のベルゴロド州やクルスク州、ブリャンスク州などウクライナと国境を接する地域のほか、北西部のプスコフ州や中部のリャザンなど国境から離れた地方も含まれています。

また、ロシアが9年前、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアや軍事侵攻後の去年9月に併合したとしている東部ルハンシク州や南部ヘルソン州、ザポリージャ州などでも軍事パレードの中止が決まっています。

ロシアのメディアは今月4日までに軍事パレードの中止が発表されたのは、20以上の都市に上ると伝えています。

ウクライナと国境に近い地域やクリミアなどでは、ロシア側の施設で火災が相次ぎ、無人機による攻撃などが指摘されていて、ロシア側が警戒を強めているものとみられます。

モスクワの軍事パレード実施も規模縮小の可能性も

首都モスクワの中心部赤の広場で行われている軍事パレードについてはロシア大統領府は、プーチン大統領の演説とともに予定どおり実施されるとしています。

ただ一部のロシアメディアは先月、赤の広場で行われる軍事パレードでは、航空機による上空の飛行は中止が検討されていると伝えていて規模が縮小される可能性もあります。

また、軍事パレードとともに恒例行事となっている「不滅の連隊」と呼ばれる市民の行進について、国営通信社は、安全上の懸念を理由にことしは全土で実施が見送られることになったとしています。

「不滅の連隊」が中止される背景についてイギリス国防省は先月、ウクライナでのロシア側の損失に参加者の目が向くことを政権側が懸念している可能性が高いとする分析を発表しています。

ウクライナはナチス・ドイツ降伏の8日が記念日

ウクライナでは第2次世界大戦でナチス・ドイツが降伏した日の8日、各地で市民たちが戦争の犠牲者を悼み、大戦で祖父を亡くした女性は、いまロシアと戦っている多くのウクライナの兵士が無事に帰ってきて欲しいと、一刻も早い軍事侵攻の終結を願っていました。

第2次世界大戦中、ウクライナはナチス・ドイツの占領下に置かれ、ウクライナ政府はナチスによる虐殺や戦闘などによって、少なくとも800万人が命を落としたとしています。

ソビエト時代にはロシアと同じ5月9日に戦勝記念日を祝っていましたが、2015年以降は、ヨーロッパ各国に歩調を合わせ、ナチスが降伏した日として5月8日に各地で追悼が行われてきました。首都キーウでは8日、各地の記念碑で花を手向け、追悼する市民の姿が見られました。

この日、キーウ市内にある記念碑を訪れたアナスタシア・チェルニフさん(33)は第2次世界大戦で祖父のクズマさんを亡くしました。ソビエト軍の兵士として戦闘に参加していた祖父のクズマさんは1944年、今のベラルーシで戦死したということです。

チェルニフさんは8日、7歳の息子のイリヤ君や、友人とともに、ウクライナの伝統衣装、ビシバンカに身を包んで記念碑を訪れ、花束を手向けました。

キーウではこの日の未明も、ロシアの無人機による攻撃を受けたほか、チェルニフさんが記念碑を訪れる直前にも防空警報が出されました。

このような状況でこの日を迎えたことについて、チェルニフさんは「第2次世界大戦では、ナチスが攻めてきましたが、いまはドイツではなく、ロシアが同じような考えで攻め込んできているのです。このような事態が起きるとは思いもしませんでした」と話していました。