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ロシア「戦勝記念日」極東地域で式典始まる

ロシアでは9日、第2次世界大戦の戦勝記念日を迎え、極東地域から記念式典が行われています。

軍事侵攻を続けるロシアに対してウクライナが反転攻勢に乗り出す構えを示す中、首都モスクワで行われる式典でプーチン大統領がどのような演説を行うのかに関心が集まっています。

日本時間の夕方 プーチン大統領が演説へ

ロシアでは9日、第2次世界大戦の戦勝記念日を迎え、極東地域から順次、記念式典が行われています。

戦勝記念日は、プーチン政権が国威発揚と国民の結束を図る場として重視してきましたが、ことしはウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、20以上の地方都市で安全上の懸念などを理由に軍事パレードの中止が発表されるなど異例の状況となっています。

また、今月3日には首都モスクワにある政治の中枢クレムリンの上空で無人機が爆発し、ロシアはウクライナがプーチン大統領を狙って仕掛けたものだと主張して、報復措置をとるとしています。

モスクワでは、厳戒態勢が敷かれる中、日本時間の9日午後4時から、クレムリンと隣り合う赤の広場で式典が開かれ、ロシア大統領府は、プーチン大統領の演説や軍事パレードが予定どおり行われるとしています。

ウクライナが、欧米の軍事支援を受けながら、今後、反転攻勢に乗り出す構えを示す中、プーチン大統領が演説で、長期化する軍事侵攻などについて、どのような発言を行うのかに関心が集まっています。

「戦勝記念日」ロシアで最も重要な祝日の1つ

第2次世界大戦の期間中、旧ソビエトでは、世界で最も多い少なくとも2600万人の兵士と市民が死亡したとされ、ロシアで戦勝記念日は苦難の末に勝利した栄光と誇りの日と位置づけられています。

例年、この日には各地で記念式典などが行われ、特に首都モスクワ中心部の赤の広場で開かれる式典では、大統領による演説のほか、大規模な軍事パレードが行われてきました。

このうち60周年の節目の2005年の式典には、日本から当時の小泉総理大臣や、アメリカの当時のブッシュ大統領など、欧米を含む50以上の国や国際機関の代表が出席しました。

戦勝国・敗戦国を問わず大戦の犠牲者を追悼し、平和に向けた国際社会の結束が誓われるなど「追悼と和解」の象徴という側面もありました。
一方、プーチン政権はこの戦勝記念日を国威発揚の場として利用してきました。

軍事パレードでは、最新のミサイルや戦車などが披露され、ロシアの軍事力を内外にアピールする機会にもなってきました。

また、2012年以降、戦勝記念日に合わせて、大戦で戦った家族や親族の遺影を掲げて市民が行進する催し「不滅の連隊」が全土で行われ、プーチン大統領みずからも市民とともに参加するなど、政権側は愛国心を高めて国民の結束をアピールするイベントとして利用してきました。

ウクライナへ軍事侵攻開始後の去年の戦勝記念日では、プーチン大統領が演説で「アメリカやその同盟国が背後についたネオナチとの衝突は、避けられなかった」などと述べウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」だとする主張を繰り返し、欧米の脅威が背景にあったとして侵攻を正当化しました。

また軍事パレードでは、天候を理由に実施されなかったものの、核戦力による戦争など非常時に大統領が乗り込む特別機の飛行も計画されました。

さらにロシア側はウクライナ東部や南部の占領地域でも記念の催しを行い、ロシアの支配下に置いたと誇示しました。

ロシア 記念日前に攻撃強める一方 ウクライナも“反転攻勢”か

ロシアは、ウクライナ東部の激戦地バフムトなどで攻撃を強める一方、ウクライナは、近く大規模な反転攻勢に乗り出すとみられるなど、ロシアが重視する第2次世界大戦の戦勝記念日を前に緊張の度合いが高まっています。

ウクライナ側は、ロシアに占領された領土を奪還するため大規模な反転攻勢に向けて準備を進めているとみられます。

クリメンコ内相は2日、地元メディアに対して反転攻勢に向けて新たに編成された旅団に多くの志願兵が加わり、訓練も本格化していると強調しました。

欧米各国もウクライナに対する軍事支援を強化し、NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は先月27日に「ウクライナに約束した戦闘車両の98%以上がすでに引き渡されている」と述べ、各国から1550両以上の装甲車と、230両の戦車が供与されたと明らかにしました。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は6日、アメリカ軍の制服組トップ ミリー統合参謀本部議長と電話で会談したと明らかにし、反転攻勢に向けてアメリカ側とも調整を進めているとみられます。
ゼレンスキー大統領は3日「われわれはまもなく反転攻勢に出る」と述べていてウクライナは、近く反転攻勢に乗り出すとみられます。

一方、ロシア側は、今月9日に第2次世界大戦の戦勝記念日を控えるなか、国民にアピールできる戦果を得ようと東部の激戦地バフムトの完全掌握などを目指してきたとみられています。

ただ、弾薬や人員の不足が指摘されるなかで、アメリカの情報機関を統括するヘインズ国家情報長官は4日、「ロシア軍は前線で防御的な作戦に移行したとみられる」としています。

イギリス国防省も先月、ロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ州で、およそ120キロにわたって3重にもなる大規模な防衛線を築いていると指摘しています。

こうした中、バフムトを巡ってロシアの民間軍事会社ワグネルの代表は5日、弾薬が不足しているとして国防省を激しく非難し、バフムトからの撤退を表明しましたが、その2日後には弾薬と武器の供給を約束されたと主張しました。

ウクライナをめぐる情勢は、ロシアが重視する第2次世界大戦の戦勝記念日を前に緊張と混乱の度合いが深まっています。

“安全上の懸念”など理由に各地で軍事パレードが中止に

ロシアのプーチン政権は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した5月9日の戦勝記念日に合わせて各地で軍事パレードを行い、国民の愛国心を高揚させ結束を強める機会として重視してきました。

しかし、ことしは先月に入ってから安全上の懸念などを理由に軍事パレードの中止が相次いで発表されました。

中止が決まったのは、ロシア西部のベルゴロド州やクルスク州、ブリャンスク州などウクライナと国境を接する地域のほか、北西部のプスコフ州や中部のリャザンなど国境から離れた地方も含まれています。

また、ロシアが9年前、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアや軍事侵攻後の去年9月に併合したとしている東部ルハンシク州や南部ヘルソン州、ザポリージャ州などでも軍事パレードの中止が決まっています。

ロシアのメディアは今月4日までに軍事パレードの中止が発表されたのは、20以上の都市に上ると伝えています。

ウクライナと国境に近い地域やクリミアなどでは、ロシア側の施設で火災が相次ぎ、無人機による攻撃などが指摘されていて、ロシア側が警戒を強めているものとみられます。
一方、首都モスクワの中心部赤の広場で行われている軍事パレードについてはロシア大統領府は、プーチン大統領の演説とともに予定どおり実施されるとしています。

ただ一部のロシアメディアは先月、赤の広場で行われる軍事パレードでは、航空機による上空の飛行は中止が検討されていると伝えていて規模が縮小される可能性もあります。

また、軍事パレードとともに恒例行事となっている「不滅の連隊」と呼ばれる市民の行進について、国営通信社は、安全上の懸念を理由にことしは全土で実施が見送られることになったとしています。

「不滅の連隊」が中止される背景についてイギリス国防省は先月、ウクライナでのロシア側の損失に参加者の目が向くことを政権側が懸念している可能性が高いとする分析を発表しています。

モスクワでは警備強化

モスクワでは、9日の第2次世界大戦の戦勝記念日を前に、市内の大通りなどが記念日を祝う旗や看板などで飾りつけられる一方、警備に当たる警察車両や治安部隊の姿も目立ち緊張感にも包まれています。

ロシア大統領府は今月3日、戦勝記念日の軍事パレードなどが行われる赤の広場に隣接し、ロシアの政治の中枢でもあるクレムリンが無人機による攻撃を仕掛けられたと主張する一方、記念式典や軍事パレードは予定どおり行うとしています。

戦勝記念日について49歳の会社員の女性は「国民にとって最も重要な祝日だ。プーチン大統領には式典の演説で、『必ず勝利する』という強いことばを発してほしい」と話していました。そのうえで軍事侵攻が長期化し、こう着状態になっているとして「大統領には、より断固とした行動で、早く終わらせてほしい」と訴えていました。

また34歳の美容師の女性は、軍事パレードの実施には賛成だとしたうえで「安全面では不安がある。警備にあたる人を増やし、検査を厳しくしてほしい」と不安を口にしていました。

22歳の大学生の男性は「クレムリンへの無人機攻撃など国のイメージを傷つける大変な事態だ。しかし、象徴的な式典を中止すれば、さらに人々が不安に陥り、否定的な影響を与えるだろう」と話していました。一方で「政府は長年、戦勝記念日を勝利だけでなく軍事力のアピールと関連づけてきたが、違和感がある。本来、何のためにささげられた日なのかを考えるようにしている」とも話していました。

ロシアの通信社によりますとロシア大統領府のペスコフ報道官は8日、戦勝記念日の軍事パレードについて「安全を確保するために必要な措置はすべて講じている」と述べ、厳重な警備態勢が敷かれていると強調しました。

モスクワでの戦勝記念日の式典に出席するのは

モスクワで9日開かれる戦勝記念日の式典には、旧ソビエトのベラルーシ、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、それにアルメニアの6か国から大統領や首相が出席する予定です。

プーチン大統領は8日、キルギスのジャパロフ大統領とモスクワで会談し「第2次世界大戦では、36万人のキルギス国民が前線に行き、そのうち13万4000人が帰らぬ人となった」と述べ、当時、ソビエトの一員としてともにナチス・ドイツと戦った両国の歴史を強調しました。

ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は8日、関係が良好な旧ソビエトの国々の首脳に対して戦勝記念日を祝うメッセージを送ったということで、欧米との対立が深まるなか、第2次世界大戦の歴史を共有する旧ソビエト諸国をつなぎ止めたい思惑があるとみられます。

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