新型コロナ「5類」移行 感染対策の見直し相次ぐ 慎重な対応も

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが8日、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行し、感染対策は個人の判断に委ねられることになり、各地で感染の拡大前の対応にほぼ戻す対応が見られました。

一方で、医療機関、高齢者施設などでは、これまでの感染対策を一部、継続するところも少なくありません。感染対策の見直しをめぐる動きをまとめました。

大手コンビニ “コロナ禍前とほとんど一緒”

大手コンビニエンスストアでは、店内の感染対策を大幅に見直し、コロナ禍前とほぼ変わらない状態に戻る店も出ています。

コンビニ大手のローソンは、
▼従業員に推奨してきたマスクの着用を個人の判断とし、
▼店の入り口の消毒液やレジのカウンター前につけていたビニール製のカーテンの設置も店側の判断に委ねるなど、8日から店内の感染対策のルールを見直しました。
これを受けて、東京・品川区の店舗では午前中、従業員がレジ前のシートや、手指の消毒液を撤去しました。

また、
▽レジ前の列に並ぶ際に前の客と間隔をあけたり、
▽おつりをトレーに入れて渡したりするといった感染対策への理解を促す掲示物もはがしました。
さらに、従業員の中には、マスクをはずして接客する人の姿も見られました。
ローソンTOC大崎店の浅羽智也店長は、「きょうからはマスクの着用が個人の判断である以外、コロナ前とほとんど一緒だ。今後は、客の流れが良くなると思うので売り上げの伸びにも期待したい」と話しています。

空港でも

成田空港でもほとんどの感染対策を取りやめることになりました。成田空港会社は、成田空港での感染対策を消毒液の設置を除き、取りやめることになりました。

8日はチェックインカウンターなどに設置された感染防止用のフィルムの撤去作業が行われました。また、窓口などで一定の距離を保って並んでもらうための足もとのシールの表示も順次、取り外すことになっています。
成田空港会社オペレーションセンターの手島正樹 マネージャーは「安全・安心に配慮しながら、コロナ禍前の空港に戻していきたい」と話していました。

医療機関 コロナ患者の幅広い受け入れに慎重な対応

一方で、感染対策の大幅な見直しが難しい施設もあります。

神奈川県は、かかりつけに限定せずに新型コロナの患者を幅広く受け入れる医療機関を新たに「外来対応医療機関」に指定し、8日から県のホームページで公表しています。一方、感染対策の課題などから受け入れに慎重な医療機関も多く、神奈川県内の「外来対応医療機関」は、季節性インフルエンザの患者を診察している医療機関の半分ほどにとどまっているということです。
鎌倉市にある「章平クリニック」では、通院する患者の多くは高齢者で感染への不安もあるため、
▽事前に電話で症状を聞き取り、
▽新型コロナに感染している可能性が高い場合は診療所の外で検査を行うなど、当面はできるかぎり感染対策をしながら受け入れる方針です。

「他の患者にうつさない」を第1に

札幌市中央区の「医大前南4条内科」は、慢性の呼吸器疾患で通院する患者などとエレベーターなどの経路を分けることが難しいため、新型コロナの患者は原則として受け入れてきませんでしたが、幅広い医療機関に患者の受け入れを求める国の方針を受けて、8日から患者の受け入れを順次進めていくことになりました。

クリニックは感染対策として、
▼通常の診療時間の終了後など時間をずらして来院するよう求めるほか、
▼院内の換気を徹底し、
▼さらに、室内の空気が外に流れ出さないようにする「陰圧室」で診察や検査を行うことにしています。
田中裕士院長は、「通院している人の中には呼吸器の基礎疾患があるなど、新型コロナに感染すると重症化するリスクの高い患者がいるため、他の患者にうつさないように気をつかって対応することを第1に考えている。クラスターを出さないように皆さんにご協力いただきたい」と話していました。

高齢者施設 面会制限の全面的な緩和は今後の判断も

岐阜県の高齢者施設では先月から新型コロナの「5類」への移行を見据えて面会の制限を緩和したところもあります。

岐南町の特別養護老人ホームでは、緊急事態宣言などの期間中は面会を制限し、利用者と家族は施設内の別室でタブレット端末を使ってのやりとりしかできませんでした。その後も緩和と制限を繰り返していましたが先月からは5類への移行を見据えて週に1回、面会できるようになりました。
これを受けて今月2日、施設に入所する海老原富子さん(92)のもとを長女と長男が訪れて母の日を前にカーネーションの造花と服をプレゼントしました。長男の遠藤憲司さん(70)は「もう会えないままというのも覚悟していたので、元気な姿を見られて本当によかったです。できることなら孫やひ孫にも会わせてあげたい」と話していました。

一方でこの施設では入所者の部屋での面会はまだ認めておらず、全面的な緩和は今後の状況を考慮して判断するということです。
施設を運営する社会福祉法人の深尾とよ子 副施設長は「利用者とご家族の対話や外出が再開したことはとても喜ばしいですが、あくまでも高齢者施設なので、今後も入室時の消毒やマスクの着用、手洗いといった感染防止対策は徹底していきたい」と話していました。

東京都 電話相談窓口を一本化で対応を継続

新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したあとも、自宅療養時の不安などを解消しようと、東京都は専用の電話相談窓口「新型コロナ相談センター」を開設しました。

都はこれまで
▽症状があってかかりつけ医のいない人を対象にした「発熱相談センター」と、
▽自宅療養の人を対象にした「うちさぽ東京」、「フォローアップセンター」を相談窓口として設けていて、窓口を一本化して対応を続けることにしました。

センターでは
▼体調が急変した時の健康相談に応じたり、
▼発熱した際には医療機関を案内したりするほか、
▼マスクの着用やワクチン接種に関する質問にも応じたりするということです。

電話番号は、0120-670-440で24時間受け付けていて、日本語のほかにも英語や中国語など12の言語に対応しています。

小池知事「ただ元に戻すのではない」

東京都の小池知事は、都庁で記者団に対し、「ただ元に戻すのではなく、ウイルスとの生活をどう考えていくのかも含めて、皆さんとともに進んでいきたい。リスクの高い人たちに対してはこれまでと同様に対応していくので、安心してほしい」と述べました。