ロシア軍 バフムトの優先度下げ ほかの地域の防衛に重点か

ウクライナが大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシアは、完全掌握を目指してきた東部の激戦地バフムトに対する優先度を下げて、ほかの地域の防衛に重点を置き始めているという見方がでています。

ウクライナ東部の激戦地バフムトをめぐり、ロシアの正規軍とともに戦闘に加わっている民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は5日、ロシア国防省が意図的に弾薬の供給を止めているとして政権側の対応を批判しました。

そして5月10日にバフムトから撤退すると表明しました。

この発言についてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は5日「ロシア国防省がバフムトの優先度を下げていることを示している。ウクライナの反転攻勢に備え、弾薬や物資の供給を控えている可能性がある」として、ウクライナが大規模な反転攻勢に乗り出す構えを示す中、ロシア側はほかの地域の防衛に重点を置き始めているという見方を示しました。

こうした動きに対してウクライナ軍の参謀本部は6日、バフムトでは激しい戦闘が続いているとし、徹底抗戦する構えを示しました。

一方、ロシアでは、プーチン政権が5月3日、ウクライナの無人機がクレムリンに攻撃を仕掛けたと発表した中、9日に各地で行われる予定だった第2次世界大戦の戦勝記念日の軍事パレードなどが中止されると相次いで明らかになっています。

こうした中、ロシア大統領府は5日、プーチン大統領が安全保障会議を開き、戦勝記念日の準備について話し合われたと発表しましたが、詳しい内容は明らかにされておらず、モスクワの赤の広場で行われる行事についても慎重に議論が進められているとみられます。

“撤退表明は非難の矛先を国防省・軍に向けるねらいか”

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏がバフムトから5月10日に撤退すると表明したねらいについて、防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は「5月9日のロシアの対独戦勝記念日までにバフムトの完全掌握が間に合わなかったことの責任を国防省側に転嫁するとともに、プーチン大統領が国民に戦果を示せないことへの非難の矛先を国防省、軍の側に向けるねらいがある」と指摘しました。

その上で「ロシア軍の空挺部隊が投入されているので、ワグネルの部隊がバフムトから撤退したとしても、今こう着しているバフムトの戦況自体には大きな影響がないのではないか」とも述べワグネルが実際に撤退するかや撤退した場合の影響を慎重に見極める必要があるという見方を示しました。

また「プリゴジン氏は大統領に対しては政治的なアピールを続けるのではないか」とも述べ、プリゴジン氏はバフムトから撤退したとしても戦闘には関わり続けるという見方を示しました。

一方、プリゴジン氏が「ロシア国防省が弾薬の供給をとめている」と訴えていることについて兵頭氏は「ワグネルの部隊は損耗率が激しく戦闘能力が大幅に低くなっている一方で、ロシア軍としては武器や弾薬を供給せずに維持することで、ウクライナ側の反転攻勢に備えようとしているのではないか」と指摘しました。

一方、ロシア大統領府が5月3日、ウクライナの無人機がプーチン大統領を狙ってクレムリンに攻撃を仕掛けたと主張し、報復措置をとるとしていることについては「可能性としては、首都キーウの大統領府、国防省の建物といった権力の中枢をねらった報復攻撃が考えられる」と述べました。

ただ、実際に行うかどうかについては、ピンポイントで攻撃可能な精密誘導ミサイルがどのくらい残っているかや、5月9日の戦勝記念日といった政治的な動きを踏まえて判断するとみられると分析しています。