WHO 新型コロナ 2020年1月以来の「緊急事態」宣言の解除検討へ

WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて出している「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言について、4日、専門家による委員会を開き、解除できるかどうか検討することにしています。

WHOは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年1月「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

WHOでは、この宣言を解除できるかどうか、定期的に検討していて、4日、各国の専門家や保健当局の担当者による委員会を開き、宣言の解除について議論することになっています。前回、1月の委員会では、変異ウイルスへの懸念などから、宣言の継続が決まりました。

WHOによりますと、新型コロナによる世界の死者数は、ことしはじめ、中国での感染の急拡大を受けて一時増加し、その後は減少を続けていますが、過去4週間の死者数は、なおも1万人を超えているということです。
WHOのテドロス事務局長は、先月26日の定例会見で「ことし中に緊急事態宣言を解除することに希望を持っているが、ウイルスはまだそこにある」と述べて、警戒感を示しています。

各国で感染対策が緩和され、新型コロナが存在することを前提とした対応が進められるなか、議論の行方が注目されます。

“緊急事態”の宣言とは

新型コロナウイルスについて、WHO=世界保健機関は「国際保健規則」に基づいて2020年1月「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

「緊急事態」の宣言には各国で対策の強化を促す意義があり、WHOはその後、各国に対し、感染拡大を防ぐための対策をとることや、ワクチンや治療法の開発を促進し、ワクチン接種を進めること、それに変異ウイルスの監視体制を強めることなどを求め、国際的な枠組みで途上国に対するワクチンや治療薬の供給などを進めてきました。

継続か解除か 議論は3か月に1回

WHOは新型コロナウイルスへの対応や「緊急事態」にあたるかどうかについて3か月に1回、専門家の委員会を開いて協議しており、協議の結果をもとにテドロス事務局長が「緊急事態」を継続するか、解除するか判断します。
WHOによりますと、ことし4月26日までで世界の累計感染者数はおよそ7億6400万人、およそ690万人が亡くなった一方で、ワクチンの接種回数は4月24日までで133億4000万回に上ります。

新型コロナは根絶できず、今後も繰り返し感染拡大が起きるとみられますが、治療が進歩し重症化を防ぐ飲み薬も出てきていることから、感染した場合に重症化したり、亡くなったりする人の割合は下がっています。

日本国内での対策について、専門家は感染力の強い変異ウイルスが拡大しないか監視体制を維持し、感染が拡大した際には医療体制を強化できるようにするとともに、場面に応じた正しい不織布マスクの着用や換気を行うこと、飲食はできるだけ少人数で飲食時以外はマスクを着用すること、症状があるときは外出を控えることといった基本的な感染対策を続ける必要があると指摘しています。

国内感染者 累計3400万人 死者7万5000人近くに

WHO=世界保健機関が新型コロナウイルスについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した2020年1月30日の時点で日本国内で感染が確認された人の数は厚生労働省のまとめでは12人でした。

それ以降、国内ではこれまでに合わせて8回、感染拡大の波を経験し、今月3日までに感染した人の累計は3400万人近く、亡くなった人は7万5000人近くに上っています。

国内の「緊急事態宣言」 第1波~第8波の対応は

日本国内で最初に感染が確認されたのは2020年1月15日で、4月7日には、政府は東京など7都府県に法律に基づく初めての「緊急事態宣言」を出して、人と人との接触機会を「最低7割、極力8割」減らすよう求めるなど、厳しい行動制限が行われました。

感染拡大の第1波では、2020年5月末までに感染者数はおよそ1万7000人、亡くなった人は892人で、感染者のうち亡くなった人の割合、致死率は5.34%と高い状態でした。

感染拡大の波は、これまでにあわせて8回起きましたが、致死率は徐々に下がる傾向で、感染対策と社会経済活動を両立させるため、緊急事態宣言は変異ウイルスのデルタ株が拡大した2021年夏の「第5波」のあと、まん延防止等重点措置はオミクロン株が拡大した去年2022年初めからの「第6波」のあとは出されなくなりました。

今年2月末までの3か月で死者の3割占める

一方で、感染力が強いオミクロン株の拡大以降、感染者数は桁違いに多くなり、医療体制がひっ迫してコロナだけでなく救急など一般の医療にも大きな影響が出たほか、亡くなる人の数は多くなってきています。

この冬の第8波では致死率は0.23%ですが、亡くなった人の数は2023年1月には、一日で500人を超える日もあるなど過去最多となり、2022年12月以降、ことし2月末までの3か月でおよそ2万2300人で、これまでに亡くなった人の3割を占めています。

当初は新型コロナウイルスへの感染で重い肺炎となって亡くなる人が多かったのが、現在ではもともと重い持病のある高齢者などが感染をきっかけに状態が悪化して亡くなるケースが多くなっている可能性があると専門家は指摘しています。

変異ウイルスとワクチンのこれまで

新型コロナウイルスは3年間、変異を繰り返していて、対応するワクチンも導入されましたが、感染力が強い新たな変異ウイルスの出現や拡大が懸念されています。

日本国内で初めて感染が確認されたのは中国の武漢で見つかったのと同じタイプのウイルスでしたが、2020年の春以降は変異が加わってヨーロッパで広がったウイルスが国内でも拡大しました。

その後、感染力が強まった変異ウイルスが出現して日本国内にも流入し、2021年の春以降はイギリスで最初に報告された「アルファ株」、その後、2021年夏以降はインドで最初に報告された「デルタ株」が広がり、重症化する患者が相次いで医療体制がひっ迫しました。

新型コロナウイルスのワクチンは日本国内でも2021年2月に医療従事者から接種が始まり、高齢者や基礎疾患のある人、そして、基礎疾患のない12歳以上に拡大され、8月下旬には人口の4割程度、その年の年末には7割以上が2回の接種を完了しました。

主流のオミクロン株 変異し広がる

2022年の初めからは、南アフリカで最初に報告された感染力の強いオミクロン株が国内でも主流の状態が続いています。

オミクロン株は「BA.1」というタイプが広がったあと、2022年春以降は「BA.2」、そして夏以降は「BA.5」が主流になりました。

オミクロン株は免疫をすりぬけやすく従来型のワクチンでは効果が下がるとされ、「BA.1」や「BA.5」に対応する成分を含んだワクチンも開発され、接種が進められました。

しかし、いまでは2種類のオミクロン株が組み合わさった変異ウイルスで、より免疫をすりぬけやすいとされる「XBB.1.5」などが日本国内でも広がり、海外でも別の「XBB」系統の変異ウイルスが広がっています。

アメリカのFDA=食品医薬品局は新型コロナのワクチンについて、今後は季節性インフルエンザのワクチンのように、新たな変異に対応したワクチンを毎年接種するという案を示しています。