名古屋刑務所13人を書類送検 所長ら33人処分 受刑者暴行で

名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行や不適切な処遇を繰り返していた問題で、名古屋刑務所は13人の刑務官を特別公務員暴行陵虐などの疑いで書類送検しました。これに合わせて法務省矯正局は合わせて33人を懲戒処分などにしました。

名古屋刑務所では、おととし11月から去年9月にかけて刑務官22人が3人の受刑者に対して、顔や手をたたいたり、顔にアルコールスプレーを噴射したりするなどの暴行や不適切な処遇を繰り返していたということです。

関係した刑務官らは「指示に従わず、大声を出したり要求を繰り返したりしたので腹が立った」などと説明しているということです。

法務省矯正局が調査を行い、名古屋刑務所は20代から30代の刑務官13人に悪質な暴行があったとして特別公務員暴行陵虐などの疑いで、書類送検しました。

これに合わせて法務省矯正局は書類送検された13人を懲戒処分にし、このうち最も重い停職6か月の3人は、28日辞職したということです。

また、書類送検されなかった残りの刑務官や、現在と前の名古屋刑務所長などの上司ら合わせて20人が訓告や厳重注意などとされました。

法務省矯正局の西岡慎介参事官は会見し、関係者や被害にあった受刑者に謝罪したうえで「職員の人権意識の欠如があった」と述べました。

この問題をめぐっては原因究明のため、有識者による第三者委員会で調査が進められています。

法務省矯正局 花村局長「再発防止の徹底図る」

今回の事案を受けて、法務省矯正局の花村博文局長は「矯正行政に対する信用を著しく失墜させたものであって誠に遺憾であり、被害者をはじめ関係する皆様方に深くおわび申し上げます。2度とこのような事案を起こさぬよう、名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会の議論などを踏まえ、再発防止の徹底を図ってまいりたいと考えております」というコメントを発表しました。

専門家「刑務所に根づいた組織風土改革が重要」

今回の問題について専門家は、刑務所に根づいた組織風土を改革していくことが重要だと指摘しています。

刑務所運営や刑務官の教育に詳しい龍谷大学矯正・保護総合センターの浜井浩一教授は「刑務所では受刑者になめられたら規律を維持できなくなってしまい秩序が乱れてしまうという、組織風土を刑務官が脈々と受け継いできている。結果として『受刑者は管理する対象』ということになっている」などと述べました。

特に名古屋刑務所では、過去にも刑務官による受刑者への暴行が問題となったにも関わらず、再び起きていることから、そうした組織風土が根強く残っていた可能性があるのではないかと指摘します。

また、刑務官の研修の講師を務めた経験もある浜井教授は、今回関係した刑務官らのほとんどが採用から3年未満の20代から30代の若手だったことについて、コロナ禍の影響でそれ以前と同様の満足な研修が行われなかったとしたうえで、「研修の中で生まれる他施設の職員とのつながりも持てず、名古屋刑務所で間違った処遇が取られていてもそれが特殊なことだと気付くことができなかったのではないか」などと話しました。

そして、再発防止に向けて「組織風土の改革と新人研修の在り方について、両面で変えていかなくてはいけないのではないか」と指摘しました。