JAXA データ書き換え 再発防止策の履行を前提に研究再開目指す

JAXA=宇宙航空研究開発機構の古川聡宇宙飛行士が責任者を務める研究チームが実験データの書き換えなどを行っていた問題で、JAXAは再発防止策の確実な履行を前提に、来年度以降、宇宙医学に関する研究について本格的な再開を目指すことを明らかにしました。

JAXAは2016年から翌年にかけて実施した、通信ができない環境で人体にかかるストレスを調べる実験で、2人の研究者がデータの書き換えなどを行っていたもので、2人が所属する研究チームの責任者で、早ければことし国際宇宙ステーションでの長期滞在が計画されている古川宇宙飛行士を「戒告」の懲戒処分にしたほか、役員3人を厳重注意などとする処分を行っています。

JAXAは28日、宇宙政策を審議する文部科学省の有識者会議で調査結果を報告し、
▽ねつ造や改ざんというべき不適切な研究行為があわせて20件あったほか、
▽データの信頼性を損なわせる行為があったとしました。

そして、
▽人材が不十分で適切な指導者がおらず、科学的合理性に基づいた研究や徹底したデータ管理がなされなかったことに加えて
▽医学研究に対する組織としての認識の甘さ
▽問題の原因分析に着手せず自律的に改善を図る機会を逸したことなどが今回の主な原因だとしました。

JAXAは再発防止策として、データ管理の手順書を制定し責任者を新たに配置するほか、倫理規定の改正や研究者マニュアルの制定などを示しました。

そのうえで、再発防止策の確実な履行を前提に来年度以降、宇宙医学に関する研究の本格的な再開を目指すことを明らかにしました。

出席した委員からは「再発防止の形だけを作っても再発する。教育をしっかり行い、形に命を吹き込んでほしい」などの意見が出されていました。

JAXA “古川宇宙飛行士の長期滞在は予定どおり進める”

JAXAは28日午後、都内で会見を開きました。

JAXAは、来年度以降、宇宙医学に関する研究の本格的な再開を目指すという方針について、ことし中に研究計画の立案などを担う指導者を外部から招き、方針をまとめるとしています。

これについて、スケジュールに余裕があるかという質問に、佐々木宏理事は「再開の目標は来年度以降だが、拙速に進めてはいけないと考えている。有識者の意見を丁寧に聞き、進めたい」と答えました。

そのうえで、「医学研究を何でもやれるわけではないと分かった。一方で有人宇宙活動が民間も含めて月や火星に広がる中で、宇宙医学の役割は大きいと考えている。JAXAができることとできないことを見極めながら、適切に、身の丈にあった形で取り組んでいきたい」と話していました。

また、研究チームの責任者で「戒告」の懲戒処分を受けた古川聡宇宙飛行士が、早ければことし、アメリカの宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーションに長期滞在する計画については予定どおり進めるとしたうえで、「古川宇宙飛行士が取り組んでいる訓練の内容も含めて評価し、最終的に打ち上げに臨むことになる。何か問題があればバックアップの飛行士に切り替える」と説明しました。