世界初 ブラックホール「ジェット」に関する撮影に成功

4年前、初めて輪郭の撮影に成功し世界的に注目されたブラックホールに関する新たな研究成果です。

銀河の中心にある巨大なブラックホールに引き寄せられる高温のガスの輪と、反対にガスが高速で噴き出す「ジェット」がつながった様子を撮影することに世界で初めて成功したと、日本を含む国際研究グループが発表しました。

巨大なブラックホールが形成される仕組みを解明する手がかりになると注目されています。

日本やドイツ、台湾などの国際研究グループは、地球から5500万光年離れたおとめ座の「M87」と呼ばれる銀河の中心にあるブラックホールの方角を世界16か所の電波望遠鏡をつないで観測しました。

その結果、ブラックホールの極めて強い重力で引き寄せられた高温のガスで形づくられる「降着円盤」という輪と、「ジェット」と呼ばれる光に近い速度で噴き出すガスの根元がつながった様子を撮影することに世界で初めて成功したということです。

画像では「降着円盤」の南側と北側の2か所から「ジェット」が噴き出す様子が捉えられています。

「降着円盤」と「ジェット」は銀河の中心にあるブラックホールと共に存在していると考えられていますが、4年前、別の研究グループが同じブラックホールの輪郭を初めて撮影し公開した際には写っていませんでした。

今回は、異なる周波数の電波が使われているほか、望遠鏡の数を増やしてより広い範囲を同時に観測することで撮影に成功したということです。

光さえも吸い込むブラックホールが「ジェット」を生み出すことは天文学最大の謎の一つとされていて、太陽系がある天の川銀河の中心にもある巨大なブラックホールが形成される仕組みを解明する手がかりになると注目されています。

国際研究チームのメンバーで国立天文台の秦和弘助教は「ブラックホール研究の歴史に新たな1ページを刻む成果の1つだと考えている。今後は『ジェット』がどのようにブラックホールから生み出されるのかを解き明かしていきたい」と話しています。

研究グループ “メカニズム解明のはずみになった”

撮影成功について、研究グループのメンバーが27日、会見を開き「今後さらにブラックホールのメカニズムを解明していくはずみになった」などと語りました。

この中で、研究グループのメンバーで、論文執筆の責任者を務めた国立天文台の秦和弘助教は「予測以上にいい品質の画像が得られた。『降着円盤』のような構造が観測できるとは思っていなかったので、本当に本当かよという印象だった。巨大ブラックホールを構成する3つの要素として研究者が追い求めてきた『ジェット』、『ホール』、そして『降着円盤』を画像として撮影することができて非常にうれしい結果だ。今後、さらにメカニズムを解析していくはずみになった」と語りました。

今回、日本からは、国立天文台や大阪公立大学など7つの研究機関が参加し、海外の機関に所属する人も含め10人以上の研究者が関わっています。

秦助教は「非常に競争率が高い分野の研究で、統括から立案、データの分析や解釈まで多くの日本人が中心となってリードしたほか、データの画像化でも日本が開発した画像化の手法が主に使われ、日本のブラックホール研究が高いレベルにあることを示した」としたうえで、「この研究成果を多くの人に知ってもらい、宇宙の研究に興味を持ってほしい。そして、この分野にフレッシュなアイデアを持った研究者に参加してもらいたい」話していました。