判決を受けて、亡くなった鈴木陽介さんの母親の吉田典子さん(61)が名古屋市内で記者会見を行いました。
この中で「陽介はあまり弱音を吐くような子じゃなかった。なぜあの子を助けられなかったのか。『会社辞めてもいいよ』と言ってあげられていたら、陽介は今も生きていたのかもしれない」と涙ながらに語りました。
吉田さんは会見の中で、陽介さんが亡くなる直前までつけていたという仕事への悩みや苦しみなどが記された日記を手にし「日記には自分が死んだときに抗議してほしいという内容の記載があった。やらなくちゃいけないという思いにさせてくれたのは陽介。守ってあげられなくて本当にごめんなさいという思いです」と話しました。
そのうえで「陽介の仕事がどんなに大変だったのかを証明してもらえた。事実だけが知りたいと思ってやってきた。多くの人に助けてもらい、感謝のことばしかありません」と話しました。

中部電力 男性自殺 1審取り消し 労災認める判決 名古屋高裁
13年前、中部電力に入社して半年の26歳の男性が自殺したことをめぐり、遺族が労災と認めるよう求めていた裁判で、2審の名古屋高等裁判所は訴えを退けた1審を取り消し、労災を認める判決を言い渡しました。
平成22年4月に中部電力に入社した鈴木陽介さん(当時26)は三重支店の営業部に配属されたおよそ半年後に自殺しました。
津労働基準監督署は労災を認めませんでしたが、鈴木さんの母親は、会社の支援がないまま仕事の責任者を命じられたうえ、上司だった課長から「おまえなんかいらない」などとパワハラを受けたことが原因だとして、裁判で国に労災認定を求めていました。
1審はおととし、上司の指導には業務指導の範囲を逸脱した言動があったとは認められないなどとして訴えを退けました。
25日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の長谷川恭弘裁判長は「上司の課長は休日出勤の際に『お前なんかいらない』とか『そんなこともできないで大卒なのか』などと叱責し、大学名をばかにしていた。こうした発言は業務指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するものだった」と指摘しました。
そのうえで「強い心理的な負荷を受けていて、精神障害の発病と自殺は業務が原因と認められる」として1審を取り消し労災を認める判決を言い渡しました。
母親が会見「守ってあげられなくて本当にごめんなさい」
津労働基準監督「今後の対応は関係機関と協議し判断」
判決を受けて津労働基準監督署の杉徳敬副署長は「今後の対応については判決内容を検討し、関係機関と協議した上で判断したいと思います」とコメントしています。
中部電力「コメントは差し控える」
また、中部電力は「そうした判決が出ていることは報道などで承知しているが、当該訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控えます」としています。