“ミニ・トランプ”は何しに日本へ?注目のフロリダ州知事

アメリカで“ミニ・トランプ”とも呼ばれてきたフロリダ州のデサンティス知事が24日来日し、岸田総理大臣と会談しました。デサンティス氏は来年秋に行われるアメリカ大統領選挙で野党・共和党の有力候補の1人とされています。

アメリカの州知事がなぜいま来日し、総理大臣と会談をすることになったのか?詳しく解説します。

デサンティス氏は24日、夫人と共に総理大臣官邸で岸田総理大臣と会談しました。

岸田総理大臣が「日本の政治や経済、それに文化について理解を深めてもらい、関係の強化につなげてもらいたい」と述べたのに対し、デサンティス氏は「北朝鮮や中国の台頭など、この地域が厳しい状況にあることは理解している。強い日本はアメリカにとっていいことであり、強いアメリカは日本にとっていいことだ」と述べました。

ディサンティス氏どんな人?

フロリダ州のデサンティス知事(44歳)は2018年の知事選挙で当時、大統領だったトランプ氏の全面的な支援を受けて初当選しました。
その政治姿勢や主張から「ミニ・トランプ」とも言われてきました。

リベラル派と対決

共和党内でデサンティス氏が人気を高めた要因の1つがリベラル派との対決姿勢を前面に打ちだし、実現してきた保守強硬的な政策です。

新型コロナ対応では感染拡大が続いていた3年前、ほかの州で感染対策の徹底が続く中、経済回復を目指して州内の規制をいち早く解除しました。また個人の自由を重視する立場から、学校でマスク着用を義務化することや飲食店などがワクチン接種の証明を求めることを禁止しました。

学校教育をめぐっては去年3月、LGBTなど性的マイノリティーに関する話題を小学3年生までの授業で取り上げることを規制する州の法律を成立させました。「学校教育がリベラル化し過ぎている」と訴える保守層の声を受けたものでした。

ディズニーに報復措置とみられる対応も

こうした規制に対し、州内で人気テーマパークを運営するウォルト・ディズニーが反対を表明すると、これまで認めてきた税制上の優遇措置を含む特区制度を廃止する法律を成立させ、報復措置とみられる対応に出ます。

デサンティス氏は今月21日、ワシントン近郊で行った講演で「性別は選ぶものだと生徒に教えるべきではなく、フロリダ州では認めない。多くのメディアやディズニーはそれを嫌ったがフロリダ州を治めているのは彼らではない」と強調しました。

デサンティス氏は去年11月の中間選挙の前からトランプ氏と距離を置く姿勢を見せ始め、先月以降全米各地で演説を行うなど大統領選挙も視野に動きを活発化させています。

なぜ日本へ?

この時期の日本訪問はどうして実現したのでしょうか。

日本政府関係者によりますと、首都ワシントンにある日本大使館は、冨田駐米大使らがデサンティス知事側と接触して関係構築を進めながら日本を早期に訪問するよう水面下で働きかけてきました。

日本政府関係者「立候補表明後は身動き取りにくくなる」

日本側が関係構築に力を入れてきたことは、去年11月の中間選挙でデサンティス氏が知事に再選を果たした10日後、日本大使館のツイッターに冨田大使がデサンティス氏と会談した際の写真が投稿されていることからもうかがえます。

安倍元首相も大統領就任前のトランプ氏と会談

2016年11月
日本側の日本訪問の呼びかけの背景には2016年に当時の安倍総理大臣が大統領就任前のトランプ氏といち早く会談し、信頼関係の構築につなげた経緯があります。

デサンティス氏が共和党の有力な大統領候補の1人として浮上するなか、日本政府関係者は「今回の訪問はデサンティス氏に同盟国日本の重要性を理解してもらう機会になる」と話しています。

また「デサンティス氏が立候補を表明したあとでは選挙活動で身動きがとりにくくなるうえ、今であれば日本政府としても知事の立場として迎えられるため、いいタイミングだ」として、早期訪問の意義を強調しています。

共和党内の支持率 トランプ前大統領との差は広がる

野党・共和党内では先月下旬以降、トランプ前大統領が大統領候補として支持を伸ばし、デサンティス知事との差を広げています。

調査会社「モーニング・コンサルト」は大統領選挙に向けた共和党の候補者選びを想定した世論調査を行っていて、去年12月以降の支持率の推移を公開しています。
ことし1月2日までの3日間に行われた調査では最も多くの支持を集めるトランプ氏が45%だったのに対し、2番手につけるデサンティス氏が34%と11ポイント差にまで迫りました。

ただ、トランプ氏は先月30日にニューヨーク州のマンハッタン地区の大陪審に起訴されて以降再び支持を伸ばし、今月16日までの3日間の調査では、トランプ氏が53%、デサンティス氏が24%と差は29ポイントに広がりました。

トランプ氏の起訴について共和党側は「政治的な迫害だ」などとして強く反発していて、党内でのトランプ氏への支持の拡大につながっているものとみられます。

トランプ氏を追いかけるデサンティス氏は州議会の会期が終了する5月以降に大統領選挙への立候補を表明するとの見方が出ていて、一連の外交日程を巻き返しを図る機会にしたいねらいもあるものとみられます。

トランプ氏「不誠実で平凡な知事」

デサンティス知事はトランプ前大統領を支持してきた支持者も取り込みながら共和党内で支持を広げてきました。

ワシントン近郊で行われたデサンティス氏の講演を聞きにきた男性は「トランプ氏は大統領としてとても成功したが、国をさらに分断させてしまう。デサンティス氏がフロリダで実現したことをできれば偉大な大統領になる」と話し、立候補すれば共和党の候補者選びでデサンティス氏を支持する考えを示しました。
こうした状況をトランプ氏は警戒し、かつて蜜月関係にあったデサンティス氏について「非常に不誠実で平凡な知事だ」と呼ぶなどけん制しています。

先月、中西部アイオワ州で行った演説では「聖人ぶったデサンティスの名前を聞いたことがあるか。保守系メディアでトランプは支持率でデサンティスを上回っていると報じられている」と述べて自身のほうが依然として優位だと強調しました。