【詳細】スーダン 退避の日本人“銃撃かなり激しかった”

政府はアフリカ・スーダンから退避した日本人ら45人に続き、日本時間の25日未明にかけて新たに8人が出国し、首都・ハルツームで希望していた全ての在留邦人が退避したと明らかにしました。

一方、情勢が比較的安定しているとみられるスーダン南部には、退避を希望する在留邦人1人が残っているとして、支援を続けることにしています。

日本人の退避をめぐる動きと、現地の最新状況を随時更新でお伝えします。

現地では電力や水の供給滞り 治安の悪化も深刻

アフリカのスーダンで戦闘を続けている軍と準軍事組織のRSF=即応支援部隊は、新たに25日から72時間の停戦に合意しました。しかし、停戦が発効した後も現地では銃声や爆発音が聞こえ、双方が互いを停戦に違反していると非難していて戦闘が収まるかは予断を許さない状況です。

スーダンでは今月15日以降、軍と準軍事組織のRSF=即応支援部隊との間で武力衝突が起き、WHO=世界保健機関によりますと、これまでに459人が死亡したということです。双方は、アメリカなどの仲介で25日午前0時、日本時間の午前7時から新たに72時間の停戦で合意したと発表しました。

しかし、首都ハルツームにいる男性医師はNHKの電話取材に対し、25日も銃声や爆発音が聞こえ軍用機も上空を頻繁に飛び交っていると話していて、不安定な状態が続いています。

これについて軍とRSFの双方が相手側が停戦に違反し攻撃を続けたり部隊を移動させたりしていると非難していて、早くも停戦の実効性が揺らぐ事態となっています。

現地では、電力や水の供給が滞り、医療機関では医薬品や発電機を動かすための燃料が不足しているということで、人道的な危機が深まっています。

また、各国は引き続き、現地にいる自国民の退避を進めていますが、移動中に略奪や強盗の被害に遭うケースも出ていて、治安の悪化も深刻になっています。

スーダン軍とRSFは、これまでにも停戦の合意を守らずに戦闘を続けてきた経緯があり、今回の合意によって戦闘が収束し、事態の改善につながるかは予断を許さない状況です。

フランス特殊部隊 退避作戦で1人けが

フランスのマクロン大統領は25日、国防・国家安全保障会議に出席し、スーダンからの自国民などの退避作戦を行っていたフランスの特殊部隊の隊員1人がけがをしたと明らかにしました。

そのうえでマクロン大統領は「隊員の容体は安定しており、命に別状はない」と述べました。フランスによる退避作戦をめぐっては23日、スーダン軍と準軍事組織のRSF=即応支援部隊がそれぞれフランスの関係者が攻撃を受け1人がけがをしたなどと発表していました。

一方、マクロン大統領は「作戦の結果、フランス人だけでなく多くの外国人も救出することができた。救出したのはフランス人209人を含む538人だった」と述べました。

みずから車運転 NPOの日本人理事長 退避の状況語る

スーダンで医療や教育などの支援に取り組むNPO法人「ロシナンテス」の川原尚行 理事長(57)が日本時間の25日午後、退避先のジブチでNHKの取材に応じました。

川原さんによりますと現地時間23日午前4時に首都ハルツーム市内の集合場所に集まり、車列を組んで東部の都市、ポートスーダンを目指したということです。

川原さんはほかの在留邦人も乗せてみずから車を運転し、ポートスーダンに到着したのは30時間以上たった翌24日午後1時ごろだったということです。道中では、食事休憩の途中に危険が迫っている情報があるとして休憩を中断したこともあったということです。

川原さんは「いつ攻撃されるかわからない中をかいくぐって長い時間運転して、退避してきたので、自衛隊に会えた時は本当に安心しました。感謝の気持ちしかないです」と話していました。

出張邦人も無事退避 “ハルツーム市内の銃撃かなり激しかった”

東京・品川区にある国際NGO「難民を助ける会」の本部事務所には日本時間の25日朝、スーダンの首都ハルツームに出張していた日本人の男性職員から無事にジブチに退避したという連絡があったということです。団体は「健康状態も特に問題はなく、職員が安全に出国できて感謝したい」と話しています。

「難民を助ける会」によりますと男性職員は今月1日から短期出張でスーダンを訪れていて、情勢が悪化して以降はハルツーム市内の事務所で身を潜めたりほかの支援団体と合流したりして避難を続けていました。そして、22日にJICAの職員など日本へ退避する人と合流したあと、23日から、ハルツームからポートスーダンに陸路で移動を始め、ポートスーダンから航空自衛隊の輸送機でジブチに退避したということです。
日本の本部事務所には25日朝6時ごろ、本人からメールと電話で無事にジブチの空港に到着したと連絡があったということです。「難民を助ける会」の古川千晶 事務局長は「いろいろな方の支えで職員が安全に出国できて本当に感謝しかない。声もしっかりと聞けていて、健康状態も問題はなさそうだが、かなりの移動で疲れたようだ」と話しています。

また、退避の状況について「ハルツームとポートスーダンは陸路で30時間にも及んだようだ。退避する車両がかなりの数でなかなか前に進みづらかったと聞いている。ハルツーム市内の銃撃はかなり激しかったが、市外に出ると様子が変わり安全に移動できたようだ」と説明しました。

男性職員はいったんジブチで体を休めたあと、近日中に民間機などで日本に帰国できるよう調整を進めているということです。古川事務局長は「スーダンでここまで内戦が長期化することはめったになく、今回、無事に出国できて本当に安心している。現地の人はいまも生活を続けているので、今後の支援策を検討したい」と話しています。

現地の病院には戦闘に巻き込まれた民間人が次々と

スーダンで医療支援を行っている国際NGO「国境なき医師団」が支援する現地の病院には、戦闘に巻き込まれた子どもを含む民間人が次々と運ばれています。

「国境なき医師団」が21日、西部のエル・ファシールという都市にある病院で撮影した映像には、病棟が多くの人で混みあう中、包帯を巻いた患者が担架で運ばれたり床に寝かされた患者がその場で処置を受けたりする様子が記録されています。また、周囲には頭や腕などに包帯を巻いて座っている人たちの様子も確認できます。

「国境なき医師団」によりますとこの病院は医師団が支援している病院で、運び込まれる患者の大半は戦闘に巻き込まれた民間人で、これまでに子どもを含む354人のうち、47人がなくなったということです。

2つある手術室はフル稼働しているということですが、深刻なけがを負った人が多いためベッドが足りず、このままのペースが続けばおよそ3週間で医療品が底をつく状態だということです。

「国境なき医師団」邦人スタッフ1人は現地に残る

国際NGO「国境なき医師団」は日本人スタッフ1人がいまも現地に残っていると明かしました。現時点では国外に退避する予定はなく、安全な場所に移って今後の活動の継続を検討しているとしています。

「国境なき医師団」は、戦闘が激化する前から首都ハルツームや西部のダルフール地域などスーダンの各地で医療支援を行っていて、現地の職員を含めたおよそ1200人のスタッフが活動していました。

「国境なき医師団」の日本事務局は25日NHKの取材に対し、去年6月からハルツームに派遣されている日本人男性1人がいまもスーダン国内にとどまっていると明かしました。男性は医療機関や難民の支援を行うチームの責任者で、いまはハルツームから国内の別の場所に移り、安全を確保しながら活動の継続を検討していて、現時点で国外に退避する予定はないということです。

ハルツームなどでは砲撃や銃撃が続いた影響で外出すら難しく、医療支援活動を停止せざるを得ない状況で、西部ダルフール地域の病院では子どもを含む民間人など354人が銃撃戦に巻き込まれて搬送され、このうち47人が亡くなったという報告があるということです。

「国境なき医師団」は緊急の医療ニーズがある以上、可能な限りスーダン国内にとどまって支援を継続していくとしています。

航空幕僚長 “大きな成果 引き続き安全確保を最優先で”

航空自衛隊トップの内倉浩昭 航空幕僚長は、記者会見で「無事に退避することができたのは大きな成果であった。さまざまな困難を克服し任務を無事に遂行した隊員を誇りに思う。引き続き予断を許さない現地情勢の中で、厳しい情勢にさらされている方々の安全確保を最優先にするという考え方のもと、関係部署と連携してしっかりと対応していきたい」と述べました。

公明 山口代表 “残る日本人の出国希望を確かめ 最良の結果を”

公明党の山口代表は総理大臣官邸で、記者団に対し「政府としても迅速に情報収集して準備し、果断に移送の成果を上げたことは高く評価したい。ただ、まだ残っている日本人がいるので、出国を希望するのかどうかよく確かめながら、他の国々とも協力して、最良の結果が得られるように努力を尽くしてほしい」と述べました。

自民 遠藤総務会長「かなり早い対応だった」

自民党の遠藤総務会長は、記者会見で「難しい国際情勢の中だが、かなり早い対応だったと思う。大使館や自衛隊などの関係者に心から感謝を申し上げたい。今回、退避を希望しなかった人も、スーダン国内に少人数残っているようなので、政府には引き続きしっかり対応してもらいたい」と述べました。

退避の日本人女性「36時間に及ぶ 長い緊張に満ちた退避」

スーダンの首都ハルツームからジブチに退避した日本人の女性が日本時間の25日午前、SNSのメッセージでNHKの取材に応じ「大変に長い1日でした。国連機関の調整によりハルツームからポートスーダンまで退避し、ポートスーダンからは自衛隊機と一緒にジブチまできました。ハルツームからポートスーダンまでは待ち時間も含めて36時間に及ぶ長い緊張に満ちた退避でした」とコメントしました。

日本人と家族 計58人退避「多くの国や機関の協力に感謝」林外相

林外務大臣は参議院外交防衛委員会で情勢が悪化しているスーダンから25日までに、希望していた日本人51人とその家族7人の合わせて58人が退避したことを明らかにしました。

内訳は、自衛隊の輸送機でジブチに退避したのが日本人41人とその家族4人のあわせて45人。
フランスや国際赤十字の協力でジブチやエチオピアに退避したのが日本人4人と家族1人のあわせて5人。
そして、フランスの協力でジブチに退避したのが、日本人6人と家族2人のあわせて8人だということです。

一方、外務省の西永知史参事官は自衛隊機で日本人らをジブチに退避させた際、他国に搭乗させたい人がいるかどうか確認したところ、希望する国はなかったと明らかにしました。

また、林外務大臣は記者会見で「日本人の退避にあたっては、韓国、フランス、ドイツ、アメリカ、イギリス、UAE=アラブ首長国連邦、サウジアラビア、国連、国際赤十字など多くの国や機関の協力をいただいた。心から感謝を申し上げたい」と述べました。

その上で「引き続きジブチに設置した日本大使館の臨時事務所で各国とも緊密に連携し、新たに退避を希望する人が出てくる可能性も踏まえながらスーダンに残っている日本人への支援に全力を尽くしていく」と述べました。

スーダン南部に退避希望の邦人1人 支援続ける考え 官房長官

松野官房長官は記者会見で「危険かつ困難な状況の中、成功裏に邦人の退避を遂行した大使館や自衛隊をはじめとする関係者はよく任務を全うした。その努力に敬意を表する。また、フランスや韓国、それにUAE=アラブ首長国連邦をはじめ、関係各国と国連など関係機関に感謝を申し上げる」と述べました。

具体的な退避ルートについて「韓国およびUAE=アラブ首長国連邦の協力を得て、ハルツームからポートスーダンまで陸路で移動したが、具体的な協力内容はオペレーションにもかかわるため、控えたい」と述べました。

一方、情勢が比較的安定しているとみられるスーダン南部には、退避を希望する在留邦人1人が残っているとして、支援を続ける考えを示しました。

浜田防衛相「引き続き予断を許さず 関係省庁と連携」

浜田防衛大臣は閣議のあと記者団に対し「現地時間の24日、在留邦人とその配偶者、あわせて45人をポートスーダンからC2輸送機によってジブチ共和国に退避させた。引き続き防衛省・自衛隊として予断を許さない現地情勢の中でさらなる状況の変化にも対応できるよう関係省庁と連携していきたい」と述べました。

その上で記者団から退避した人たちを自衛隊機に乗せて帰国させる可能性を問われたのに対し「現時点では答えることは適当ではない。経過を見たい」と述べました。

国連「約700人が首都ハルツームから退避」

スーダン情勢をめぐり国連の報道官は24日、現地で活動していた国連の職員やNGOのスタッフなどおよそ700人が首都ハルツームから東部の都市、ポートスーダンに陸路で退避したと明らかにしました。

ポートスーダンには、国連のほか、各国の大使館職員とその家族などが到着したということです。

国連職員などは今後、近隣諸国に移動し業務を行うものの、一部はポートスーダンに残って人道支援などの業務を続けるということで、国連は「スーダンから国連が撤退する計画はない」としています。

現地の日本大使館を一時閉鎖 ジブチに臨時事務所

スーダンの治安状況が悪化していることから、政府は現地の日本大使館を、一時閉鎖し、周辺国のジブチに臨時事務所を設置しました。

ジブチに退避した服部孝大使や大使館員は、当面、臨時事務所から邦人保護の業務などにあたるということです。

外務省はスーダン全域に渡航中止勧告を出していて、目的にかかわらず渡航をやめるよう呼びかけています。

25日 8:00すぎ “希望する首都の全在留邦人が退避” 岸田首相

岸田総理大臣は、25日午前8時すぎ、総理大臣官邸に入る際、記者団に対し、新たにスーダンから在留邦人とその家族合わせて8人が出国し、希望していたすべての在留邦人がスーダンから退避したと明らかにしました。

25日 1:10ごろ 日本人ら45人乗せた自衛隊機がジブチに到着

日本時間の25日午前1時10分ごろ、アフリカ・スーダンから退避した日本人ら45人を乗せた航空自衛隊のC2輸送機が、周辺国ジブチの国際空港に到着しました。

25日 0:30前 武井外務副大臣 ジブチに到着 日本人の退避に対応へ

アフリカ・スーダンからの日本人の退避に対応するため、武井外務副大臣が25日午前0時半前、周辺国のジブチに到着しました。

武井副大臣はスーダン東部のポートスーダンから自衛隊機でジブチに退避した日本人らと面会する方向で調整を進めていて、日本への帰国などの支援にあたるということです。

また、関係国と連携しながらスーダンに残っている日本人の早期の退避に向けて調整を進めるということです。

23:50ごろ 岸田首相 “自衛隊機が日本人ら45人乗せジブチへ”

スーダンからの在留邦人の退避について、岸田総理大臣は、24日午後11時50分ごろ総理大臣公邸で記者団に対し「自衛隊派遣のC2輸送機により、在留邦人とその配偶者、合計45人が、先ほど、スーダン東部のポートスーダンを飛び立ち、今、ジブチに向かっている」と明らかにしました。

また、これとは別に、フランスなどの協力を受け、4人の日本人が、既にスーダンからジブチやエチオピアに退避したと説明しました。

そのうえで「危険かつ困難な状況の中、成功裏に邦人退避を遂行した大使館や自衛隊をはじめとする関係者の努力に敬意と感謝を申し上げたい。また協力してもらった韓国、UAEをはじめ、関係各国や国連などの関係機関に感謝を申し上げる」と述べました。

退避した日本人らについては、希望に基づいて、日本への帰国などの調整に当たるとともに、必要な支援を行っていくとしています。

一方、岸田総理大臣は、スーダンにはなお退避を希望する日本人が数人残っているとして、引き続き関係国とも緊密に連絡をとりながら早期の退避に全力をあげる考えを示しました。

17:55ごろ(日本時間) 自衛隊のC130輸送機 ジブチの空港を離陸

スーダンからの在留邦人の退避に向けて、周辺国ジブチの空港では航空自衛隊のC2輸送機に続き、C130輸送機が日本時間の24日午後5時55分ごろ、離陸するのが確認されました。離陸した2機はスーダンで在留邦人の輸送にあたるものとみられます。

17:15ごろ(日本時間) 自衛隊のC2輸送機 ジブチの空港を離陸

スーダンから在留邦人を退避させるため、周辺国ジブチに派遣された航空自衛隊のC2輸送機が日本時間の24日午後5時15分ごろ、ジブチの空港を離陸するのが確認されました。

15:00すぎ(日本時間) 自衛隊の輸送機2機が新たにジブチへ

防衛省関係者によりますと、24日午後、航空自衛隊の輸送機2機が新たに周辺国ジブチに向けて日本を出発したということです。
このうち鳥取県の航空自衛隊美保基地では午後3時すぎ、C2輸送機1機が離陸するのが確認できました。ジブチに向かうものとみられます。

松野官房長官「調整が整い次第 自衛隊部隊の輸送活動開始」

アフリカのスーダンの情勢が悪化する中、スーダンにいる日本人の国外退避に向けて、自衛隊のC130輸送機やC2輸送機など、合わせて3機が周辺国ジブチに派遣されています。
これについて松野官房長官は午後の記者会見で「今回、出国を希望する方々の迅速かつ安全な退避のため、ジブチに移動させて待機中のC130輸送機およびC2輸送機をはじめとする自衛隊部隊を調整が整い次第、スーダンに派遣し輸送活動を開始する」と述べました。

また、およそ60人の在留邦人の生命や身体に影響が及んでいるとの情報には接していないとした上で、「政府としては引き続き関係国と緊密に連携するとともに関係者一丸となって対応に万全を期していく考えだ」と述べました。

スーダンに滞在の日本人 約60人か

ジブチの国際空港にある自衛隊の活動拠点では、日本時間の24日午前0時すぎの時点で3機のうちC2輸送機など一部の機体が確認できましたが、現地が日没を迎えたことなどから、その後の機体の状況や活動拠点の様子は外側からはうかがえませんでした。

仏政府 日本人含む388人をジブチ退避と発表

一方、フランス政府は24日、スーダンでの2日間にわたる退避作戦の結果、首都ハルツームからあわせて388人をフランス空軍によって周辺国のジブチに退避させたと発表しました。

この中には自国民のほか、日本人を含む外国人もいるとしていますが、詳しい人数の内訳は明らかにしていません。

岸田首相「邦人の安全確保に全力」

岸田総理大臣は、24日午前、総理大臣官邸に入る際、「スーダンの邦人の退避に関しては、現在、現地の状況を踏まえながら鋭意、対応しており、随時報告を受けている。邦人の安全に関わるので、詳細は控えたい。引き続き、邦人の安全確保、退避に関係各国とも緊密に連携しながら全力を挙げて対応していきたい。現地の状況が明らかになる中で発表できることは随時発表していきたい」と述べました。