マイクロソフト社長「ChatGPTなどAI開発と日本への投資重視」

アメリカの大手IT、マイクロソフトのブラッド・スミス社長が、NHKの単独インタビューに応じ、「ChatGPT」などのAI=人工知能の開発とそれに関連する日本市場への投資を重視していく姿勢を示しました。

マイクロソフトは、自社のクラウドサービスと文章を自動的に作り出す「生成AI」のChatGPTを組み合わせた企業向けのサービスを展開しています。

スミス社長は、日本市場でのビジネスについて「私が最も期待しているのは中小企業であり、AIとChatGPTの技術は、人手不足など中小企業が直面する課題の解決につながる」と述べました。

そのうえで「私たちは日本で、より多くのデータセンターの能力を確保していくために、今後もこの分野への投資は継続する」と述べ、日本市場への投資を重視していく姿勢を示しました。

一方、今月29日から開かれるG7=主要7か国のデジタル・技術相会合で、「生成AI」の開発や規制の在り方が初めて議論されることについて「世界の民主主義国家と中国のような国との間で、AI技術に関して競争が行われている現状を考えると、正しいバランスを取るために日本のリーダーシップに期待したいと思っている」と述べ、議長国の日本の役割に期待を示しました。

【詳しく】日本市場について

日本国内のビジネスについて、マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、日本の市場を引き続き、重視していく姿勢を示しました。

ChatGPTをめぐっては、英語に比べて日本語の回答の精度が低いと指摘されています。

機能の改善についてスミス社長は「日本語で作られ、日本の文化を反映したコンテンツに、もっとアクセスすることが根本的に必要だ。そのためには、日本政府や大学からのサポートが必要となる。より早く改善されれば、日本語でサービスを利用したい人にとって、より便利なものになるだろう」と述べました。

一方、マイクロソフトは、自社のクラウドサービスとChatGPTを組み合わせた企業向けのサービスを展開しています。

日本市場についてスミス社長は「私が最も期待しているのは中小企業だ。AIとGPTテクノロジーは、中小企業が直面する課題の解決につながる。特に日本のように、中小企業が経済の重要な部分を占め、雇用不足が深刻化している国では、このテクノロジーは、中小企業の成長を加速させる可能性を秘めていると思う」と述べました。

一方、事業の拡充に向けて必要となるデータセンターへの投資については、「私たちは日本でより多くのデータセンターのキャパシティー(=能力)を確保していくために、今後もこの分野への投資は継続する。そして、このデータセンターに世界最先端の技術を導入していきたい」と述べ、日本国内のデータセンターへの投資を継続して行う方針を明らかにしました。

その一方で、データセンターで大量に消費する電力の確保については「電力がなければ、データセンターを拡張することはできないので、再生可能エネルギーや、原子力エネルギーなどを使う必要がある。日本政府と緊密に連携を取っていきたい」と述べました。

人工知能めぐるルールやG7について

ChatGPTなどのAI=人工知能をめぐるプライバシーや機密情報の保護への課題に対しては、ルールづくりに向けた動きも始まっています。

これについてマイクロソフトのブラッド・スミス社長は「まずは、自分たちに適用される方針を自分たちで作る必要がある。その上で、高い基準を設定し、責任と原則を持って効果的に実施する必要がある」と述べ、企業として厳格な基準を設ける姿勢を示しました。

そのうえで「政府に対しては、この技術がどのように機能するかという情報の発信と共有が重要だと思う」と述べ、政府と民間によるルール作りにあたっては、必要な技術情報を提供する考えを明らかにしました。

一方、今月29日から群馬県高崎市で開かれるG7=主要7か国のデジタル・技術相会合では、ChatGPTをはじめ、文章や画像を自動的に作り出す「生成AI」の開発や規制の在り方が初めて議論されます。

これについては「世界の民主主義国家と中国のような国との間で、AI技術に関して競争が行われている現状を考えると、正しいバランスを取るために日本のリーダーシップに期待したいと思っている」と述べ、議長国の日本の役割に期待を示しました。

生成系AIの開発競争が激化

マイクロソフトは、2019年に「ChatGPT」を手がけるアメリカのベンチャー企業「オープンAI」に10億ドルを投資して提携し、AIの開発で協業しています。

ことし1月には「オープンAI」にさらに数十億ドルの追加投資を行うと発表しました。

この協業によって「ChatGPT」の技術を自社の検索サイトに搭載しました。

さらに3月には「ワード」や「エクセル」などにも数か月後をめどに導入することを明らかにしました。

ChatGPTをめぐるマイクロソフトとオープンAIの動きをきっかけに、今、大手IT企業の間で競争が激化しています。

グーグルは、AIとの対話ソフト「Bard」を一般向けに始めると発表したほか、4月20日には、囲碁のAIプログラム、「アルファ碁」を開発した傘下の「ディープマインド」とAIの研究組織を統合させ、開発を加速させることを明らかにしました。

フェイスブックを運営するメタは、AIを大学や企業などの研究向けに公開すると発表したほか、アマゾンは、企業向けのデータを管理するクラウドサービスを通じて「生成系AI」を提供すると発表しました。

また、起業家のイーロンマスク氏も「TruthGPT」という名前の対話式AIを立ち上げる考えを示しています。

一方、中国では4月、「アリババグループ」が生成系AIのサービスの提供を発表したほか、IT大手「百度」が3月、試験的に提供を始めました。

中国政府は、AIが作成する文章は、社会主義の価値観を反映しなければならず、サービスの提供前に当局の審査を義務づけるなど規制案を公表しています。