日本アニメ「海賊版サイト」 日本側の要請でブラジルで初摘発

日本のアニメや漫画などの「海賊版サイト」が拠点を海外に移す中、ブラジルで現地語の字幕をつけたサイトが運営されていることが日本の業界団体の調査で確認され、ブラジル当局が摘発に乗り出した結果、36のサイトが閉鎖されたことが分かりました。日本側の働きかけをきっかけに、現地向けの日本アニメの海賊版サイトが摘発されたのは初めてです。

日本のアニメや漫画などをネット上で無断で公開する「海賊版サイト」は、摘発を逃れるため海外に拠点を移す動きが加速していて、被害は深刻化しています。

日本のアニメ会社などが加盟する「CODA=コンテンツ海外流通促進機構」は運営者の特定作業などを進めていますが、日本のコンテンツの人気が高いブラジルで、現地のポルトガル語の字幕をつけた4つの海賊版サイトが運営されているのが確認されたということです。

CODAは去年11月にブラジル当局に情報を提供。ことし2月、運営者を特定した現地の捜査当局が関係先を捜索するなど摘発に乗り出し、関連するサイトも含め13のサイトが閉鎖に追い込まれたということです。

また、一連の動きを受けて自主的に閉鎖するサイトも相次ぎ、ブラジルでアクセスの上位を占めていたものを含む合わせて36の日本アニメの海賊版サイトが閉鎖されました。

これらの中には日本からのアクセスを遮断して違法行為の発覚を免れようとしていたものもあったということで、CODAによりますと、日本側の働きかけをきっかけに日本アニメの現地向け海賊版サイトが摘発されたのは初めてです。

海賊版サイトをめぐっては、CODAの要請を受けて、ことし中国を拠点とする日本向けの海賊版サイトの運営者らが現地の公安当局に摘発されていて、攻防が激しくなっています。

日本のアニメや漫画 ターゲットとされやすく被害深刻化

海外でも人気が高い日本のアニメや漫画は海賊版サイトのターゲットとされやすく、近年、被害は深刻化しています。

出版社などでつくる一般社団法人「ABJ」によりますとおととし、海賊版サイトで漫画が「タダ読み」されたことによる被害額は、アクセス数の多かった上位10のサイトだけで推計1兆19億円と過去最悪になりました。

この年の紙と電子版をあわせた「正規」の漫画の市場規模6759億円を大きく上回り、業界に衝撃が走りました。

去年は、当時、最大規模だった漫画の海賊版サイトが摘発されたこともあって被害額は推計5069億円でしたが、依然、2020年の2倍以上と高い水準になっています。

「CODA」 運営者特定の手法とは

海賊版サイトの拠点が海外にシフトしているため「CODA」は、おととし4月から、経済産業省の支援を受けてサイトの運営者を特定するプロジェクトを進めています。

こうしたサイトは、サーバーを海外に置いて発信者の特定を困難にさせたり、特定の地域からのアクセスを遮断する「ジオブロッキング」という手法で違法行為の発覚を免れようとしたりするケースが多く、特定作業はサイバーセキュリティーの専門家らによって行われています。

具体的には、サイトの情報を細かく解析して運営者につながる手がかりを集める「デジタルフォレンジック」や、SNSで公開された情報などから運営者を推測する「オンラインプロファイリング」といった手法が使われているということです。

また国際法律事務所とも連携し、海外の裁判所に運営者の氏名や住所などの情報開示を申し立てる司法手続きも行っています。