【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(19日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる19日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍「激戦地はドネツク州のバフムトとマリインカ」

ウクライナ軍の参謀本部は19日、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点バフムトと、州都ドネツクの南西にあるマリインカが激戦地となっていると発表しました。

バフムトについてウクライナ陸軍の司令官は18日には「敵が最も力を注ぎ、支配しようとしている。砲撃や空爆の回数を増やし、街を廃虚にしようとしている」と指摘しています。

イギリス国防省はロシア側がバフムトに戦力をさらに移そうとしているとした上で、ロシア軍と民間軍事会社ワグネルの部隊が前進を続け、中心部の主要な鉄道が最前線となっていると分析しています。

一方、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は17日のAP通信のインタビューで大規模な反転攻勢について「準備が整えばすぐにでも開始する。準備不足のまま始めることはない」と述べ、欧米の兵器供与を受けながら反撃への準備を進めていると明らかにしています。

プーチン大統領の名指しの激励 責任の明確化がねらいか

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、去年9月にプーチン大統領が南部ヘルソン州と東部ルハンシク州の支配地域を訪問した際に、精鋭の空てい部隊の司令官らを名指しして激励したことなどについて「今後のウクライナの反転攻勢を見越し、潜在的なスケープゴートを特定することを意図していた可能性も高い」として、ウクライナの反転攻勢に備え、前線の責任を明確化するねらいだと分析しています。

国外避難のウクライナ人 帰国相次ぐ

ロシアによる軍事侵攻が続く中、今も多くのウクライナの人たちが国外で避難生活を送っていますが、最近では、首都キーウを狙った攻撃なども少なくなっているなどとして帰国する人が相次いでいます。

ウクライナの国境警備当局によりますと、隣国ポーランドなどから帰国した人は、今月2日には1日でおよそ5万8000人に上ったということです。

この中には、キリスト教の復活祭にあわせた休暇で一時的に帰国する人のほか、本帰国を決めた人もいるということです。

キーウ近郊のイルピンに住むセルヒー・ツキロさん(41)は、妻と2人の息子をフランスに避難させていましたが、最近、首都などを狙った攻撃も少なくなっているとして家族の本帰国を決断しました。

14日の早朝、家族はフランスからバスでキーウに到着し、ツキロさんは妻と息子たちをひとりひとり抱きしめ、再会の喜びをかみしめていました。

ツキロさんは「家族との時間を楽しみたいです。家族にとって再会が忘れられない日になりました。これからもできる限り国のために尽くしたいです」と話していました。

ロシア軍 ウクライナ南部ヘルソンを攻撃 1人死亡9人けが

ウクライナ当局によりますと南部ヘルソン州のうちウクライナが去年11月に奪還した州都ヘルソンで18日、ロシア軍による攻撃があり、1人が死亡、9人がけがをしたということです。

ゼレンスキー大統領「へルソンなどでの攻撃に対処」

ゼレンスキー大統領は、18日に新たに公開した動画で「ロシアによるヘルソンやドネツクなどでの攻撃に対して対処をする」と述べ、ロシア側を非難するとともに徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。

ウクライナ産農産物 ポーランドがGPS追跡条件に通過認める

ポーランドやハンガリー、それにスロバキアの3か国は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、ヨーロッパのほかの港からアフリカなどへ向かうウクライナ産の農産物の経由地となっていますが、その農産物が国内で流通し、打撃を受けている農家を守るためだとして輸入を禁止しました。

このうちポーランドのテルス農相は18日、ワルシャワでウクライナのスビリデンコ第1副首相兼経済相らと協議したあと、そろって会見し、貨物列車やトラックで運び込まれる農産物をGPSで追跡する対策をとることなどを条件に通過を認めることで合意したと明らかにしました。

テルス農相は対策をとることで、国内での流通を防げると強調し、スビリデンコ第1副首相兼経済相も「ウクライナの輸出業者は条件に従うと確信している」と述べ、20日から21日にかけて輸送が再開されると説明しました。

ウクライナ産の農産物の輸送が滞り影響が広がることが懸念される中、ポーランドとウクライナの合意をきっかけに問題が解決に向かうか注目されます。

プーチン大統領 支配地域訪問

ロシア大統領府は18日、プーチン大統領が去年9月に一方的な併合に踏み切ったウクライナ南部ヘルソン州と東部ルハンシク州の支配地域を相次ぎ訪問したと発表しました。

ロシアの国営通信社は、訪問はウクライナ侵攻後、初めてだと伝えています。
プーチン大統領は、支配地域の軍の作戦司令部で戦況について報告を受けたり、空てい部隊の司令官の功績をたたえたりし、ロシアが併合したとするウクライナ東部と南部の州全域を掌握しようと侵攻を続ける姿勢を示すとともに、支配を誇示するねらいがあるとみられます。

ロシア 戦勝記念日の市民の行進“全土で実施見送り”

ロシアで毎年5月9日の第2次世界大戦の戦勝記念日にあわせて各地で行われている、大戦で戦った家族や親族をたたえる市民の行進についてロシア国営のタス通信は18日、主催者側の話として、安全上の懸念を理由にことしは全土で実施が見送られることになったと伝えました。

「不滅の連隊」と呼ばれる行進はプーチン政権が愛国心を高めて国民の結束をアピールするイベントとして利用し、去年はプーチン大統領も市民に交じって父親の遺影を掲げながらモスクワの中心部を行進しました。

ロシア国防省は、来月9日にモスクワをはじめ各地で軍事パレードが計画され、国民の団結を示すとしていますが、ウクライナと国境を接するロシア西部の自治体の一部は、安全上の理由から軍事パレードを中止する方針を明らかにしています。

こうした動きについてイギリス国防省は今月13日「ウクライナでの作戦の不手際や失敗をすぐに見抜く多くのロシア人をますます不安にさせるおそれがある」と指摘しています。

ロシア当局がスパイ活動で起訴の米有力紙記者 保釈認められず

ロシアでスパイ活動を行っていたとして当局に起訴された、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記者でアメリカ国籍のエバン・ゲルシュコビッチ氏に対してロシアの裁判所は18日、保釈を認めず、拘束が長期化するおそれが出ています。

この日の審理は非公開で、ゲルシュコビッチ氏の弁護士によりますと、ゲルシュコビッチ氏は無罪を主張し、それを証明する用意があると強調したということです。

また、審理に立ち会った、ロシアに駐在するアメリカのトレーシー大使は記者団に「ゲルシュコビッチ氏に対する罪状は根拠がない」と述べ、即時釈放を重ねて求めました。

ロシアでは、スパイ活動の罪で有罪となった場合、最長で禁錮20年が科される可能性があり、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「ロシアでスパイ活動に問われた裁判は、事実上すべて有罪判決で終わる」と報じています。

アメリカ政府は、これまでにバイデン大統領がロシア側に釈放を求めたほか、ブリンケン国務長官もロシアのラブロフ外相との電話会談で「容認できない」と伝えていますが、ロシア側は釈放に応じる姿勢を見せていません。

ゼレンスキー大統領 激戦地訪問 兵士らを激励

ウクライナ大統領府は18日、ゼレンスキー大統領が東部ドネツク州の激戦地の1つアウディーイウカを訪れたと発表しました。

この中でゼレンスキー大統領は現地の司令官から報告を受けたうえで、「きょう、ここにいることを光栄に思う。われわれの土地、ウクライナ、そして家族を守る任務につく皆さんに謝意を表する。あなた方に望むのは勝利だけであり、それは私がすべてのウクライナ人に望むことでわれわれ全員にとって重要だ」などと述べ、兵士らを激励しました。
18日には、ロシア大統領府もプーチン大統領が一方的に併合したウクライナ南部のヘルソン州を訪問したと発表しています。

ウクライナ高官ら 東日本大震災から復興の農業を視察

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで農業などを担当している政府の高官らが仙台市を訪れ、東日本大震災から復興した農業の現場を視察しました。高官は、「非常に高い技術で復興を成し遂げた」としてウクライナの農業を復興させる上で日本の取り組みを参考にしたいという考えを示しました。

世界有数の小麦の産地であるウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻で多くの農地や水利施設が攻撃されるなど、農業分野の復旧や復興も大きな課題となっています。

今月16日から来日しているウクライナ農業食料省の高官など6人は、東日本大震災の被災地での復興の取り組みを学ぶため18日、仙台市を訪れました。
一行は、復旧した農地や農業用水の排水機場を視察したあと、地元の農業者と意見を交わしました。

農業者からは、震災直後は多くの農家が農業をやめ、地域産業としての農業を復興させる難しさを語りました。

これに対して、ウクライナ側からは▽被災した農家が行政からどのような支援を受けたかや▽農業の経営がどう変わったかなどを質問していました。
視察団を率いるウクライナ農業食料省のドミトラセビッチ次官は取材に対して、被災地では水利施設などの農業施設がどのように復旧したかに関心を持ったとした上で「非常に高い技術で復興を成し遂げたという印象を受けた」と述べました。

そして「水利のシステムや管理などの取り組みについて、重要な情報も得ることができた」と述べ、高い技術力を生かすとともに、行政と農業者が一体となって復興を進めた日本の取り組みを参考にしたいという考えを示しました。

ロシア軍による攻撃で農業分野にも大きな被害

世界有数の穀物の輸出国であるウクライナでは、ロシア軍による攻撃で農業分野にも大きな被害が出ています。

ウクライナの農業食料省によりますと、ロシア軍による攻撃で農業用機械や穀物の倉庫、水利施設などが破壊され農業が続けられないケースが多いということです。

世界銀行は先月公表した報告書で、ウクライナの農業分野での被害は87億2000万ドル、日本円にして1兆1000億円余りにのぼるという推計を明らかにしています。

さらに、ウクライナではロシア軍が農地や林道に埋めた地雷で市民が被害にあうケースもあとを絶ちません。
これについてイギリス国防省も17日、「ロシアが以前に占領していた地域では地雷による市民の被害が連日、報告されている。春の訪れとともに農作業をする人も増え、市民へのリスクは増すだろう」としたうえで、ウクライナからすべての地雷を除去するには少なくとも10年はかかると分析しています。

日本からはこれまでにウクライナへの農業分野の支援として▽地雷の除去や▽被害を受けた農家に対する農作物の種の提供、それに▽穀物の保管施設の供与などを行っていて、日本政府は今後も農業の復興に向けた支援を継続したいとしています。

農家 十分な作付けできず 苦しい経営状況続く

ウクライナでは、春小麦などの農作物が種まきの季節を迎えていますが、ロシア軍の侵攻で被害を受けた農家は、十分な作付けを行うことができず、苦しい経営状況が続いています。

このうち軍事侵攻当初にロシア軍に一時占拠された首都キーウ近郊のブチャの周辺で農場を経営するペトロ・ホロデンコさん(65)は、倉庫をロシア軍に破壊された上、保管していた農機具も略奪されたり壊されたりするなどして、およそ125万ドル、日本円にして1億6000万円余りの被害を被ったということです。

さらに、種麦や肥料の価格が高騰している上、銀行から新たな資金調達もできなかったため、ことし用意できた小麦の種麦は、例年の半分以下の量だということです。
このため、この春に作付けできる面積は、全体でおよそ500ヘクタールある畑のうち、およそ120ヘクタールと、4分の1以下にとどまる見込みで、広い範囲が今も耕されないままになっています。
ホロデンコさんは「ロシア軍は、私の農場経営を破壊しました。新しい農機具を買うのは難しいため、古い機械を修理して使おうとしていますが、再び自分の足で立ち上がるには資金面や技術面での助けが必要で、日本など支援が可能なすべての国に助けてほしいです」と話していました。

ロシア軍が畑に残した地雷や弾薬 復興の障害に

農業の復興を進める上で障害の1つとなっているのが、ロシア軍が一時占拠した地域で畑などに残していった地雷や弾薬などの爆発物の存在です。

ウクライナのレズニコフ国防相は今月10日、国内に残るこうした爆発物をすべて除去するには、およそ30年かかる可能性もあるという見通しを示しました。

首都キーウの近郊では13日、地元の警察がこれまでに回収した地雷などを爆破処理する様子を公開しました。

警察によりますと、これまでにキーウ周辺だけでおよそ1800ヘクタールの土地で地雷などの除去を終えたものの、今も畑や森などからロシア軍が残した爆発物が見つかることが頻繁にあるということで、農家などに注意を促しました。

警察の担当者は「これまでに膨大な量の爆発物を処理してきたが今も毎日のように見つかり、人々が巻き込まれる不幸が起きている。対応できる要員を育てるには時間も費用もかかり、人数が足りていない上、必要な機器も不十分だ」と述べて、国際社会への支援を求めました。