爆発物の容疑者 立候補できず国を訴え ツイッターに裁判内容

和歌山市の漁港で、選挙の応援に訪れていた岸田総理大臣に向かって爆発物が投げ込まれた事件で、逮捕された木村隆二容疑者(24)が、年齢などを理由に参議院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めましたが、去年11月、裁判所に訴えを退けられていたことがわかりました。

木村隆二容疑者は、去年7月に行われた参議院議員選挙の際、公職選挙法で、被選挙権を30歳以上とする規定や、300万円の供託金が必要だとする規定があり、当時23歳で供託金も準備できなかったため立候補できず、精神的な苦痛を受けたとして、去年6月、国に対し10万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

裁判は、代理人の弁護士をつけない「本人訴訟」で行われ、木村容疑者は裁判所に提出した準備書面で、憲法15条の3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定められているのに、被選挙権の年齢制限や供託金の制度が設けられていて、実態は「制限選挙」であり、憲法違反だとして批判していました。

また岸田内閣は、安倍元総理大臣の国葬を閣議決定のみで強行したと主張し、「このような民主主義への挑戦は許されるべきものではない」などと訴えていました。

去年11月の判決で神戸地方裁判所は、現在の年齢要件や供託金の制度は合理性があるなどとして、訴えを退けました。

これに対して、木村容疑者は「判決は根拠がなく誤りだ」などと不服として、去年12月、大阪高等裁判所に控訴していました。

警察は、選挙制度への容疑者の主張が事件の動機につながっていないか、詳しいいきさつを捜査しています。

【詳細】容疑者が訴えた裁判内容などのツイッターか

ツイッターには、木村隆二容疑者が訴えた裁判の内容などについて、去年から投稿しているアカウントがあります。

容疑者本人の投稿とみられ、警察も確認を進めています。

このアカウントでは、被選挙権年齢や供託金の制度を繰り返し批判していて、最初の投稿は去年6月27日に行われました。
「参院選に立候補出来なかったとして20代前半の原告が国を提訴しました。成人以上の年齢を要求することや、300万円もの大金を支払わないと立候補させないことは、明確な制限選挙です」という投稿文とともに、訴状の写真をアップしています。

原告の名前は黒く塗りつぶされていて確認できませんが、記載された日付は6月22日となっていて、木村容疑者が裁判所に提出した訴状の日付と一致します。

訴状の右上には、裁判所が6月24日に受け付けたことを示す印鑑が押されていて、この日付も木村容疑者の裁判のものと一致しています。

印鑑は本物と同じ形で、写真に写っているのは訴状とみられます。

神戸地方裁判所の記録によりますと、木村容疑者の裁判は、去年の8月5日に1回目、10月7日には2回目の口頭弁論が行われ、結審しています。

1回目の口頭弁論があった8月5日、このアカウントでは「本日、口頭弁論1回目ありがとうございました」などと投稿しています。

そして、2回目の口頭弁論があった10月7日には「今回で結審しました。1回目は被告、国が答弁から逃げた為、実質1回での結審です」などと不満をつづっています。
裁判では去年11月18日に訴えを退ける判決が出ますが、その10日後の28日には裁判官の名前を記載しながら、「引き続き、控訴して民主主義を勝ち取ります」などと投稿しています。

裁判所の記録によると、この投稿がされた日は、控訴状にある日付と一致します。

また、岸田総理大臣についての投稿も去年9月に行っていました。国会答弁のニュースを引用しながら、「岸田首相も世襲3世ですが、民意を無視する人が政治家には通常なれません」などと投稿していました。

大阪高等裁判所での2審の裁判が結審したことし3月には「審議を拒否し。いきなりの結審でした。大阪高裁の無法振りが露呈しました。基本的人権である参政権を制限することは絶対に許されません」などと投稿しています。

そして、このアカウントの最後の投稿は事件の4日前の今月11日の午後8時半ごろ。被選挙権の年齢規定と供託金の制度に対するこれまでの主張を繰り返していました。

押収したリュックサックの中から液体や粉末

和歌山県警は午後5時半すぎから今回の事件についての説明を行っています。

それによりますと、押収した容疑者のリュックサックの中から何らかの液体が入った水筒、粉末が入った小瓶、それに金属の板やスプーン、ライターが見つかったということです。

容疑者 年齢規定など選挙制度に不満持っていたか

木村隆二容疑者は、年齢の規定などがある被選挙権をめぐり、選挙制度に不満を持っていたとみられます。

去年9月24日、兵庫県川西市の当時の市議会議員が開いた市政報告会に、木村容疑者とみられる人物が参加していました。

参加した人がみずから記入する名簿に、木村容疑者の名前と住所が残っていたということです。

大串衆院議員「被選挙権の年齢の問題 熱心に話していた」

去年9月、地元の兵庫県川西市で木村容疑者とみられる人物と接触した自民党の大串正樹・衆議院議員は18日午後、国会内で記者団に、当時の状況を改めて説明しました。

この中で大串氏は、「市議会議員の市政報告会の前後に、立ち話程度だが、合わせて20分くらい話をした。若い男性があのような会に来ることは珍しく、事件現場の映像を見て、おそらく彼だろうという記憶が残っていた」と述べました。

また会話の内容について、「被選挙権の年齢の問題をかなり熱心に話していた。私からは、『現行の被選挙権の年齢は、それなりに理解されているものだ』という話をした」と述べました。

一方、記者団が、「被選挙権をめぐる問題意識が事件のきっかけになったと思うか」と質問したのに対し、大串氏は、「捜査中なので、主観的な話や感想めいたことは控え、事実関係だけにとどめたい」と述べました。

容疑者 黙秘続ける

警察によりますと、調べに対し木村容疑者は、黙秘を続けているということです。

また木村容疑者の弁護士は18日午後4時ごろ、事務所の前で報道陣が容疑者の様子などを尋ねたのに対し、「何も話せません。特に発表するようなことはありません」と話しました。

このあと、容疑者が留置されている和歌山西警察署では、接見するのかという問いに対し、「接見するのが弁護士の仕事ですからね」などと話し、警察署の中に入っていきました。