少子化対策の財源は 財政制度等審議会で議論

政府がことし6月にまとめる「骨太の方針」に向けて、財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会が議論を始めました。

新型コロナ対策などで政府の支出が膨らむ中、財政健全化に向けた道筋のほか、焦点となっている少子化対策について意見が交わされました。

財政制度等審議会は毎年、政府が経済財政運営の基本方針「骨太の方針」を取りまとめるのを前に提言を公表しています。

14日から提言のとりまとめに向けた議論が始まり、新型コロナ対策で政府の支出が膨張する中、財政健全化をどう進めるのか意見が交わされました。

委員からは
▽感染状況が落ち着く中、例外的に膨らんだ歳出を遅れることなく平時の状態に戻すべきだとか、
▽新型コロナ対策の内容を検証することで、効果が薄いものは廃止することも必要だといった指摘が出たということです。

また政府は、ことしの「骨太の方針」までに将来的な子ども・子育て予算の倍増に向けた大枠を示す方針です。

このため、14日の会合でも日本の少子化は危機的な状況であり、効果が高い対策を進める必要がある一方で、安定的な財源の確保が不可欠だといった指摘が出されました。

財政制度等審議会は、来月にも再び会合を開き、少子化対策について改めて財源も含め議論を行うことにしています。

政府の少子化対策 ”数兆円規模の財源が必要”

政府が目指す少子化対策の実現には、数兆円規模の財源が必要になるとの見方があり、それをどう確保するのか検討が進められています。

経済界や専門家の中には、社会全体で幅広く負担すべきだとして増税の必要性を指摘する声もあります。

ただ政府内では、防衛力を強化するため増税の方針を示していることもあり、さらなる税負担を国民に求めるのは難しいなどとして、否定的な意見が大勢です。

また、与野党双方からは国債の発行を求める声も出ていますが、政府は、財政状況に加え、子どもの世代への負担の先送りだとして慎重な姿勢です。

政府・与党内では、医療や介護などの社会保険を活用する案も浮上していて、負担能力のある高齢者を含め、保険料の引き上げや給付の抑制などで財源を捻出することが想定されています。

政府関係者の1人は「少子化が進めば、社会保険制度や企業活動も維持が難しくなるわけで、理解が得られるのではないか」と話しています。

ただ、保険料を労使折半している場合、仮にそれぞれ月数百円程度引き上げても、捻出できるのは1兆円程度で、なお足りないという指摘があるほか、経済界や労働界からは、賃上げの機運に水を差すとして異論も出ています。

政府は、6月の「骨太の方針」の策定までに、将来的な子ども子育て予算倍増に向けた大枠を明らかにする方針で、財源をどこまで具体的に示せるのかが焦点です。

十倉会長 ”幅広い層が負担するよう議論すべき”

14日の財政制度等審議会では、経団連の十倉会長が新たに審議会の会長に就任しました。

十倉会長は、会合のあとの記者会見で、焦点となっている少子化対策の強化について「『全世代型社会保障』の問題や『働き方改革』に関わる議論であり、ぜひ骨太な議論をした上で、優先順位を決め、メリハリをつけて進めていくべきだ」と述べました。

少子化対策の財源をめぐっては、政府・与党から社会保険の活用で確保する案が出ています。

これについて十倉会長は「特定の世代や特定の分野の人々に負担がかたよるのではなく、社会全体で広く薄くお金を集めることが基本だ。社会保険だけに限るのではなく税も含めて広く安定財源を確保するための議論が必要だ」と述べ、財源を限定することなく幅広い層が負担するよう議論すべきだという考えを示しました。

社会保険の活用 経済界からは異論も

子ども・子育て予算の倍増に向けた議論が進む中、政府・与党内で財源として社会保険を活用するという意見が出ていることに対して、経済界からは異論も出ています。

経済同友会の櫻田代表幹事は、今月4日の記者会見で「財源を保険料に依存することによって、医療、年金、介護も含め、いわゆる労働者の家計の負担は限界に近づいていると思う」と述べました。

そのうえで「どうして消費税が出てこないのか、正直言って個人的には疑問だ。消費税は鬼門と思われているのかもしれないが、少なくとも社会保障財源として消費税を使うのは、国民全体は決しておかしいじゃないかということにはならない」と述べ、財源として消費税も含めて検討すべきだという考えを示しました。

立民 泉代表 ”少子化対策の予算配分 ほかに比べて弱い”

立憲民主党の泉代表は、記者会見で、少子化対策の財源を確保するため、金融所得課税の強化などを検討すべきだという考えを示しました。

この中で、泉代表は今年度の少子化対策の予算について「少子化が進んでいる中で、予算の配分のしかたがほかに比べて弱い。それが、少子化対策や子育て支援を軽視する岸田政権の姿だと言わざるをえない」と述べました。

また、少子化対策を強化するための財源について「政府のたたき台の中には、税なのか社会保険料なのかが示されていない。5年間で43兆円の防衛費を捻出できるのだからもっと子育て予算にも振り向けられるはずだ」と指摘しました。

そして「金融所得で大きな利益を上げるケースもあり、そういうところからの税収を増やしていく手段は必要ではないか」と述べ、金融所得課税の強化などを検討すべきだという考えを示しました。

公明 石井幹事長 ”社会保険の活用は少子化対策の財源の1つ”

少子化対策を強化するための財源について、公明党の石井幹事長は記者会見で、社会保険からの拠出が確保策の1つだという認識を示しました。

このなかで、公明党の石井幹事長は「社会保険の活用は、少子化対策の財源の1つだと思う。少子化対策は、将来の現役世代をしっかりと確保していくという意味で、社会保険制度の安定性に寄与するものであり、そこから拠出していくことは、政策としての一貫性がある」と述べました。

そのうえで、野党側が「現役世代の負担が高まる」と批判していることについて「ぜひ代替の財源をどう考えているのかも示してもらって、しっかりと議論したらいい。税制措置をやるにしても、現役世代に関わってくる」と指摘しました。