那須川天心 プロボクシングデビュー戦 3対0の判定勝ち

キックボクシングの神童と呼ばれた那須川天心選手がプロボクシング転向後、初めてとなる試合に臨み、3対0の判定で勝ちました。

那須川選手はキックボクシングなどの格闘技で47戦全勝の成績を残してプロボクシングに転向し、8日、東京の有明アリーナでデビュー戦を迎えました。

スーパーバンタム級の6ラウンド制で行われた試合で、那須川選手はバンタム級日本ランキング2位の与那覇勇気選手と対戦し、1ラウンド目から積極的に右のジャブや左ストレートなどで仕掛けました。

そして、2ラウンド目の序盤、相手が前に出てきたところに右のパンチをカウンター気味に打ち込んで初めてのダウンを奪いました。

3ラウンド目以降も、変則的なステップから相手の顔を打ち抜いたりボディーを狙ったりするなど、多彩なパンチで主導権を握り続け、キックボクシングでは経験がなかった6ラウンドを戦い抜きました。

この結果、那須川選手は3対0の判定で勝ち、プロボクシングのデビュー戦を白星で飾りました。

那須川天心「必ずボクシングでも世界を」

デビュー戦を勝利で飾った那須川天心選手は、リング上のインタビューで「本当に6ラウンド戦えるのか、自分の中でも分からずふわふわしていた。判定にはなったが、ダウンを取って勝つことはできた。これでみんなが『ボクサー那須川天心』として見てくれるんじゃないか」と振り返りました。

そして「勝ってほっとしているが、チャンピオンを目指すにはこういう戦いではダメだ。最高のチームとともに、ここからさらに進化して、必ずボクシングでも世界を取ろうと思う」と今後への意気込みを話していました。

“次に何が来るか分からない”多彩なパンチで主導権握る

転向後、最初の試合に向けて那須川選手はキックによる攻撃がなくなる代わりに鍛えてきた多彩なパンチで主導権を握りました。

キックボクシング時代に那須川選手が持ち味としてきたのは左上段蹴りやダイナミックな胴回し回転蹴りなど破壊力抜群のキックでした。

しかし、その得意技が使えないボクシングの世界で戦っていくためにパンチのバリエーションを増やしてきました。

ジャブやストレート、アッパーなど基本的なパンチを打ち分けることを意識するとともに、それぞれのパンチについても打つタイミングを変えるなど工夫を凝らしてきました。

さらに2つのパンチを重ねる「ワンツー」も複数のコンビネーションを試したりするなど、反復練習を行って磨いてきました。

那須川選手はこれを“千手観音スタイル”と呼び「いっぱいなきゃだめ。そしたら相手が『次に何が来るか分からない』となる」と狙いを説明。

そして8日の試合、那須川選手はその多彩な攻撃で主導権を握りました。

2ラウンド目にダウンを奪ったパンチは右のフック。

さらにワンツーを効果的に使ったほか、終盤には変則的なステップから飛び込むタイミングを変えて左ストレートを顔面に打ち込むなど相手に着実にダメージを与え、およそ1万人のファンを沸かせました。

さらには「顔が命なので」と試合後に冗談を話したほど持ち味のスピードを生かして顔にはほぼパンチをもらわず、攻守ともに余裕を持った試合運びで勝利につなげました。

試合のあと、相手の与那覇選手も「スピードはもちろん、パンチの打ち分けなど思ったよりもボクシングの技術がある」と話し、那須川選手自身も「ワンパターンじゃなくていろいろ引き出しは見せられたのではないか」と手応えを口にしました。

一方、この試合で圧倒しながらKO勝ちを逃したことについては那須川選手本人は「倒しきれるように強化したい」とパンチの威力向上を今後のテーマにあげました。

「必ずボクシングでも世界を取ろうと思う」とさらなる成長を誓った那須川選手にとって、手応えと伸びしろが見えた初戦となりました。